前世譚7 ❀  世界で一番、君を・・・。

文字数 792文字

修道院へ入り、リカルドの「魔法の力」は次第に衰えていった。

教会で父に問責された時のように、魔法の力が暴走することもない……)

あの日リカルドが憤った瞬間、窓ガラスが割れ、あらゆるものが浮いて壊れた。


父はリカルドを指差し、こう叫んだ。

ば、化け物だ!

これが俺の息子のはずがない!

(では僕は、だれの子どもなのだろうか……)

父のことを思い出すと憂鬱になる。


隠遁者のリカルドにとって、唯一のなぐさめは………。

アリエッタ……
(彼女は今、どうしているのだろう。知りたい……)

そんなリカルドの思いを汲んでくれた存在がいた。


ある昼下がり、リカルドが図書室で1人読書をしていると。

くるっぽう
その白鳩が、窓辺に舞い降りたのだ。

嘘だろう……。いや、まさか。

本当の本当に、君なのかい?

(リカルド、ひさしぶりだね)

君の声が聞こえるよ。

そうか、僕の「魔法の力」はまだ残っていたんだね

リカルドは、ほっと胸をなで下ろした。


故郷のアリエッタは、元気にしているかい?
(とおくへ、いってしまったよ)

遠く?

まさか……神の国ではないよね?

(ちがう。でもとおい。さがすよ)

ありがとう。

彼女に手紙を届けて欲しいんだ

リカルドはすぐに手紙をしたためた。

君に託すよ。

君が道中無事であるよう、祈っているよ

(任せて)

人目のない場所で、飛び立つ鳩を見送った。

速いなぁ。もうあんなに遠いところへ……
鳩が見えなくなるまで、しばらく空を眺めていた。
遠くへ行ってしまった、か。もしかしてアリエッタは、別の誰かと……)
縁あって幸せに暮らしているのだろうか。
(そうだとしても仕様がない。僕は彼女の幸せを祈ろう……)

けれども、とたんに目頭が熱くなった。


涙がこぼれそうになると、リカルドは頭巾をかぶった。

(他の男に愛されるアリエッタの幸せを、僕は本心から祈れないんだ……)

リカルドは頭巾を目深にかぶり、涙に濡れた顔を隠す。

世界で一番、君を愛しているのは……

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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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