3 犠牲なき解決のために

文字数 1,484文字

 新しい技術は、生まれつつあります。

Ⅰ 資源枯渇や環境破壊を防げる、新素材・新エネルギーの技術。

Ⅱ 人的資源の経年・経代劣化を人道的な手段で防ぎ、補える、先進的な保健・医療・教育やロボット・HMI《ヒューマン・マシーン・インターフェイス》の技術。

Ⅲ 経済・社会活動が巨大化・複雑化・急速化しても、個人や組織の活動を支援し、争い少なく上手に利害を調整して、再分配と再投資を両立させ続けられる、IoT《インターネット・オブ・シングス》とビッグデータ処理、知能ロボット、生物工学(バイオテクノロジー)生体工学(バイオニクス)の技術。



 それは、人間の頭脳のような自己発達型の、技術開発や意思決定も支援できる人工知能(アーティフィシャル・インテリジェンス)を中心とした技術群です。

 効果としては、人工物と自然物、機械と生物の間の障壁を取り払って両者の長所を分け合い、いわば〝()いとこ取り〟をして、双方の持続可能性を高める技術です。

 従来の技術との関係でいえば、農業・工業・情報技術といった、ある意味において人間や自然や社会の〝外部〟にあった、物質・エネルギー・情報の利用技術を、いわば内部化・親近化することで、持続可能性を高める技術です。

 そして一言でいえば、体内環境を含む自然環境や、社会環境に優しい、『 親和技術 (familiar technology) 』と呼び得る技術です。

 しかし、そうした技術だけなら、まさに作品世界にも数多く登場したのでは? そう、新しい政策も必要です。

Ⅰ 最もよく文明課題を解決し、生産性を高めうるように新技術を開発・普及するための、技術的政策。

Ⅱ 新技術を悪用・誤用せず、活用できる人材を育成・確保するための、人的資源政策。

Ⅲ 新技術により健全な経済投資や利益の社会還元を促すための、経済・社会政策。
 (広い意味では、ここには行政活動を健全に保つ、行政管理政策も含まれます。)


 
 こうした政策への参画こそ、全ての人々が関わることが可能となり、かつ必要となっていく、人間だけが主体となれる〝仕事〟だと思います。

 より少ない犠牲あるいは損失(ロス)費用(コスト)危険(リスク)でより多くの福祉や利益を達成することは、知性からくる欲求の無制限性、言い換えれば限りない夢や希望、欲望や向上心を備えた人類の、いわば美徳であり、原罪であり、業であり、本性です。

 そのような〝人間性〟がもつ、無制限的な可能性と危険性の双方を増幅するのが、富を増やす技術であり、前者を最大化し後者を最小化するのが、富を分ける政策だと思います。文明の二本柱をなす、技術と政策の向上という潮流から外れてしまう社会は、今後の発展から取り残されてしまう恐れがあると考えます。

 一方、以上のような技術や政策によって、経済・社会活動をより豊かにし、健全に保つことができれば、次にはそれを、宇宙施設・植民地などより小規模な閉鎖系(クローズド・システム)における文明活動の維持に応用することで、地球外への進出による、さらなる発展も期待することができるでしょう。

 戦争はもとより、この物語のような犠牲も出ない方法による、人類文明のさらなる発展に期待したいです。

 この映画はあらためてそんなことを考えさせてくれる、素晴らしい作品でした。
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