(3)

文字数 561文字

 皇宮とは基本的にお役所だ。
 政務が行なわれている「表」のみならず後宮もそうだ。
 書類無くしては、皇国の統治は愚か、千人を超える人間が居る皇宮の秩序さえ保つ事は、おぼつかない。
 昼食後、すぐに出た筈なのに、宿下がりの許可の書類を5箇所で確認してもらうのが終る頃には、まだ十分に明いが、日は沈みかけている刻限になっていた。
 まずい。
 ただでさえ、今晩中に証拠を集めないといけないのに、時間が無い。
 皇宮前の広場では、人だかり。
 「華の民」の服を着ている者が多いが……5つの主要民族以外の少数民族の服も、ほんの少しとは言え居るには居る。
 更には、遠い異国の黒い肌や白い肌に明るい色の髪や目の者達さえも……。
 ドタ……っ。ドタっ……ドタっ……ドタっドタっ……。
 背後から妙な足音がする。
 人の足音では無い。
 音が大き過ぎる。
 周囲の人々は、その足音の主を見て、ざわめいているようだ。
 馬・牛・駱駝……いずれとも違う足音。
 一番近いのは……まさか……。
 南方の国から献上された象や犀……ほんの何度かしか聞いた事が無いが、それに……違う……。
 足音の拍子(リズム)が……体が大きい動物のものだが……妙だ。
 何かが……そうだ……。
 振り向いた時、ようやく違和感の理由に気付いた。
 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み