大学

文字数 1,243文字

 大学生になった。制服を着なくていいし、高校生の頃よりもうんと自由はあるが、喫煙所は学校や家の近くになく、ならば校内の喫煙所で吸えば良いのだが、未成年喫煙が大学にばれて退学になったら馬鹿らしいと考え、結局しなかった。

 一番大きな理由は誰かに煙草を吸っていることがばれたら何だか恥ずかしいからだと思う。そんな理由があるからしないんだと思い込みながら私は早くしてみたくて確かに少しイライラしていた。

 そして遂に20回目の誕生日を迎えたのだった。その日は1講時目から講義があったため、行きがけに煙草を買う時間はないと思い、帰り道で買うことにした。

 授業は夕方に終わった。授業が終わった後にできる人ごみのなかの友人に出会わないように少し遅く歩いて、ひとけがなくなるまで待った。そしてコンビニに入った。

 20歳になったのに私はなぜか年齢確認をされるのことを恐れて大人っぽいような黒い服装で、そしてマスクをしていた。買う煙草は決めていた。もう何年も前から自分に合いそうな煙草を調べていた。インターネットで調べた所によると、このコンビニの270番の煙草が一番初心者にはお勧めらしい。

 その日は購入した煙草を吸うタイミングがなく次の日になった。授業は昼からだったので母にいってらっしゃいを言った後、ベランダではじめて煙草を吸った。母にばれるときっと怒りはしないけど、つらつらと身体に悪いということを言うはずで、そのとき居心地が悪くなるから絶対にばれたくない。そんなことを言っている母もがばがばとお酒を飲んでいるのだから説得力はあんまりないような気がする。

 煙草に就いての知識はたくさん持っていたけど経験したことは初めてだった。ただの臭い煙だ。だけど何だか悪い事をしている気分になっていてそれがいつもの家と大学を往復する退屈な日常から抜け出せたような感覚で良い気分になった。ヤニクラはなかったから、もしかしたら相性がいいのかもしれない。

 お酒は良いけど、煙草は駄目みたいな風習はどこから来たのだろうか。どちらもきっと身体に悪いのは確実なのにみんなが煙を嫌うから煙草は駄目ってことなのだろうか。特段おいしいとは思わないが、私は2本目を咥えた。

 これまで小中高と学校に行ってきた。みんなやりたいことをやりなさいとか言うけど、いままで散々言いたいことを言わせてもらえなかったし、取りかかろうとしたら何だか危ないから止めなさいみたいなこと言われるし、きっとやりたいことっていうのは管理できる範囲でっていう但し書きが付いているんだ。特段おいしいとは思わないが、私は3本目を咥えた。

 次第に煙草にもおいしく感じるのだろうか。そんなことを思いながら鞄に参考書や筆箱を入れ始めた。太陽が昇りきる少し前くらいに家を出て、最寄り駅に向かった。

 駅までは20分くらい歩く。歩くことには飽きていて昨日までは嫌なことだったが、今日は服に付いた煙草の匂いのせいかそんな気持ちにはならなかった。電車に乗ってもそのことは変わらなかった。
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