疾駆
文字数 1,285文字
私の足は、今や大して役に立たない。
それはもう、椅子の車輪を無様に転がしながら、そこらじゅうを駆けては回る陽気な少年少女を前に幸あれかしと願うこと、その不公平を嘆き一日に蓋をするためだけの肉道具である。
皆誰しも、またはほとんど、自らの足で地面を押し蹴ることの値打ちが、こちら側にとって果たしていかほどのものであるか、想像も正しくつかぬままにそれをするのであって、利己主義者に至っては、想像をつかせようともしないのだ。
口だって、まるで変わらず役に立たない。
今となっての私は断じて、同情に飢えているだとか、当たり前の中にある幸福を知れと押しつけたくいるだとかではなく、かといって僻んでいるわけでもないので、それは別に何でもない日常の中の戯れ言を呟くばかりである。
存在意義はと自問してみてもやはり判然としないのだ。
この厭わしさを、払いよく拭う役にもならない。
こうなると四方八面へ、私は社会に不要ですと目線で報ずる始末である。
健常者に留まらず精神障害者も含む、すなわち身体障害者でないものは決まって、たとえ是が非であろうともこいつのような障害者にだけはなりたくないものだ、なってたまるかと口にはせずとも思うのだ。
もはやこの身は、誰かの何かの役にも立たない。
誰もが我がことにかまけるばかりで、我関せずといった態度でひたすらにそっぽを向くのである。
そうして彼らは矢継ぎ早に、芽吹いたばかりの木々前を滑るように、何の気なしにひた走り、劣等感をただ植え付けては私の視界から消えてゆくのだ。
歩道から覗く公園は、今日も十分なほど賑わう。
過敏な耳にそれは余りにけたたましく割り入り、克服できない消極的な私的感情とともに、私のそれからをいつもすっかり変化させてしまう。
常々私は黙しを極め、絶え間ない呻きに骨まで朽ち果てる。
私は早くもかつてのように、星と十字と三角四角とを一つづりにして織り成したレース模様のスカートにはとても見合わない生き物へと成り下がる。
堕ちる以前の経験が少なからずあるだけに、そしてその印象が未だ焼き付いているためにあるのは、辺り一面の砂景色からまた、自らの足で埃を巻き上げることができたなら、命さえ喜んで捨てようともよぎるほどの心境である。
将来への希望はとうに失われ、曇りなく透き通っていた空色の目は潤うことを忘れたように乾ききり歪む。
紛れもなく残酷をかたどる現実が、このように一つ、また一つと、滞りなく私の随筆を増やしてゆく。
心が私を死者のように葬り去り、壊れた器と見なし止めない。
私は打ち落とされ、再び立ち上がることはない。
よそ者や神が私を憐れみ、起き上がらせることもない。
今さら自殺願望も湧き出ないし、依然として話もせず、可能性を取り戻すこともない。
夢物語から時を無駄花にすることは、決して継続で実を結ぶものではない。
けれども懲りることはない。
とこしえに揺らぐこともない。
せめてものと私は、虚しさを十分に身に染み込ませながらも、路を駆け抜ける空想に浸り今日とて車輪に手をかける。
これがこれからの、私の駆けである。
それはもう、椅子の車輪を無様に転がしながら、そこらじゅうを駆けては回る陽気な少年少女を前に幸あれかしと願うこと、その不公平を嘆き一日に蓋をするためだけの肉道具である。
皆誰しも、またはほとんど、自らの足で地面を押し蹴ることの値打ちが、こちら側にとって果たしていかほどのものであるか、想像も正しくつかぬままにそれをするのであって、利己主義者に至っては、想像をつかせようともしないのだ。
口だって、まるで変わらず役に立たない。
今となっての私は断じて、同情に飢えているだとか、当たり前の中にある幸福を知れと押しつけたくいるだとかではなく、かといって僻んでいるわけでもないので、それは別に何でもない日常の中の戯れ言を呟くばかりである。
存在意義はと自問してみてもやはり判然としないのだ。
この厭わしさを、払いよく拭う役にもならない。
こうなると四方八面へ、私は社会に不要ですと目線で報ずる始末である。
健常者に留まらず精神障害者も含む、すなわち身体障害者でないものは決まって、たとえ是が非であろうともこいつのような障害者にだけはなりたくないものだ、なってたまるかと口にはせずとも思うのだ。
もはやこの身は、誰かの何かの役にも立たない。
誰もが我がことにかまけるばかりで、我関せずといった態度でひたすらにそっぽを向くのである。
そうして彼らは矢継ぎ早に、芽吹いたばかりの木々前を滑るように、何の気なしにひた走り、劣等感をただ植え付けては私の視界から消えてゆくのだ。
歩道から覗く公園は、今日も十分なほど賑わう。
過敏な耳にそれは余りにけたたましく割り入り、克服できない消極的な私的感情とともに、私のそれからをいつもすっかり変化させてしまう。
常々私は黙しを極め、絶え間ない呻きに骨まで朽ち果てる。
私は早くもかつてのように、星と十字と三角四角とを一つづりにして織り成したレース模様のスカートにはとても見合わない生き物へと成り下がる。
堕ちる以前の経験が少なからずあるだけに、そしてその印象が未だ焼き付いているためにあるのは、辺り一面の砂景色からまた、自らの足で埃を巻き上げることができたなら、命さえ喜んで捨てようともよぎるほどの心境である。
将来への希望はとうに失われ、曇りなく透き通っていた空色の目は潤うことを忘れたように乾ききり歪む。
紛れもなく残酷をかたどる現実が、このように一つ、また一つと、滞りなく私の随筆を増やしてゆく。
心が私を死者のように葬り去り、壊れた器と見なし止めない。
私は打ち落とされ、再び立ち上がることはない。
よそ者や神が私を憐れみ、起き上がらせることもない。
今さら自殺願望も湧き出ないし、依然として話もせず、可能性を取り戻すこともない。
夢物語から時を無駄花にすることは、決して継続で実を結ぶものではない。
けれども懲りることはない。
とこしえに揺らぐこともない。
せめてものと私は、虚しさを十分に身に染み込ませながらも、路を駆け抜ける空想に浸り今日とて車輪に手をかける。
これがこれからの、私の駆けである。