文字数 866文字

その時、ふと興味の引く検索が引っかかる。
「ハノイの塔」だって……
そう茉莉花が呟く。

 調べると、古くからの言い伝えがあるらしい。

【インドガンジス川の畔のヴィラナシに、世界の中心を表すという巨大な寺院がある。
 そこには青銅の板の上に、長さ1キュビット、太さが蜂の体ほどの3本のダイヤモンドの針が立てられている。
 そのうちの1本には、天地創造のときに神が64枚の純金の円盤を大きい円盤から順に重ねて置いた。
 司祭たちはそこで、昼夜を通して円盤を別の柱に移し替えている。
 全ての円盤の移し替えが終わったときに、世界は崩壊し終焉を迎える】

 何かの暗号かも知れない。
 または、なにかの引力による導きであるかもしれない。
 いや、7822の法則かもしれない。

 しかし、本能がコレだと訴えている。
 きっと建設会社だから、割り算の得意な人はたくさんいるはずだ。
 これを解くんだ。
 きっと7822を含む数があるはずだ。
 
 二人の勘がともに確信に変わってゆく。
 

「解けるか? 」
 怜司が心配そうにたずねる。

「解き方はネットに溢れているからね」
 そう言って落ち着いて笑うと、茉莉花はバックからノートとペンを持ち出し解き始める。

【 解き方:
 板n枚の時の最少回数を2n-1で求め、その回数を31536000(=1年間の秒数)で割る。
 1枚の最小移動回数にかかる時間を計算してゆく。

 答え:
 2枚 3回  3秒
 3枚 7回  7秒
 4枚 15回 15秒】

「これ、素数が現れたね」
 そう言いながら、茉莉花は解き進めていく。

 途中までくると、茉莉花の手がぴたっと止まる。
43枚 8796093022207回 約278922年

 「あった! 」

 茉莉花のみたビジョンである7822の間の数字の隙間が9によりぴたりと埋まる。
 完璧なる9。

 そう言うと、二人で目を見張る。

 会計時に、あの席の男のこのノートの端切れ届ける様に怜司が頼むと帰路に着く。

 きっと今夜、あの法則により2人の命が終焉より救われた事だろう。
 43までの解により良い伝えの通り、破滅を逃れられたのだろう。
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