第2話 マサばあちゃん

文字数 1,352文字

マサばあちゃんは、よく、ゆゆにおかしをくれた。たまに、かわいいえんぴつとかふせんなんかも。
「ほれ。」
きびしいママにみつからないようにこっそりとてをにぎりしめながら。
「え、いいの?」
「いいんだよ。ひみつにしておいてな。」
くふふとマサばあちゃんはわらった。

最近、マサばあちゃんに会うのが、、ちょっと、億劫だ。
別に、マサばあちゃんが嫌いなわけでもないけど、、、。
昔はゆゆちゃん、ゆゆちゃんって話しかけられるのが嬉しかったのに、今は少し、面倒だ。
って、こんなこと言うのは失礼だよね。マサばあちゃんが悲しむよね。
頭ではわかっているはずなのに、
でも、なんか。

昨日も。

「ゆゆちゃん、ほら、ボウルペン。ピンク色が好きだったろう。」
「あ、うん。。ありがとう。」
ピンク色は、もう好きじゃない、んだよなあ。
ボールペンもなめらかな書き心地のがいいから、使いづらいなあ。
どうしよう。
「どうしたんだい?好きじゃないかい。嫌ならいいんだよ、使わなくても。」
「ううん、使うよ、可愛いね!」
笑顔で取り繕う。
マサばあちゃんはほっとした顔で微笑んだ。
その顔を、私は直視できなかった。

学校で。
「ゆゆー、近くにできたショップ、行ってみない?文房具買いたいのー!」
「うーん、どうしよう。お小遣いがなあ。」
「ね、ね、行こ行こ!一人じゃやだよー。ゆゆはなんも買わなくていいからさ!行こうよー。ね?」
「わ、かった。行く行く。」
「やったあああ。いえーい!」
放課後、新しくできたお店に寄ることになった。
「ひゃほー、すごい、いろいろあるねー。ほら、このコスメ、まじちょーかわいいんだけどー。あ、これうちの好きなやつじゃん。こっちも!やばやばやばやばやばたにえーん。」
ちょっと、静かにしてよ汗。
「あれ、ねぇーゆゆー。」
「んん?」
「なんであんなばーちゃんがこんな店来てんだろー?場違いすぎっしょ。」
「声が大きいよ。そんなこと言わないで!」
「えー、そーぉ?どーせ耳悪いし聞こえてないよー!あははっ!!」
まったく。
でも、その見知らぬおばあさんが気になってしまって、私は聞き耳を立てた。
「何か、お探しですか?」
「あのねえ、孫へのプレゼントなのよお。何がいいかなあって。」
「そうですか。文房具、お菓子、お化粧品などございますが、どんなのがよろしいでしょうか?」
「あいにく、若い子の好みはわからないんだよ。滅多に話さなくなってしまったからのう。小ちゃい頃はお花柄とか黄色とかが好きだったんだけど。どれなら喜んでもらえるのかねえ。喜んで使ってさえくれりゃあ、なんだっていいのさ。」
「そうなんですね。今流行りのブランドでしたらこちらの、、、、、」

聞いて、いられなかった。
私、マサばあちゃんのプレゼントにぐちつけてたけど、最後に好きな色を言ったのはいつ?好きなボールペンの種類についてなんて、話してないよね?
何一つ、わかってなかったんだ。マサばあちゃんのことなんて、何も考えてない。
あのおばあさんを馬鹿にした友達と変わらない。
何もせず、ただただ自分勝手に、、、
マサばあちゃんの精一杯の気持ちを無駄にして。


「ごめん。ちょっと用事できたから帰るね。お買い物、楽しんでね!」
「えっ、ちょっ、ゆゆ?」
「ごめんね。でも、急ぐんだ!」

ダッシュでマサばあちゃんの家に向かった。
ちゃんと、話そう。







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