大規模テロ

死体安置所から死体が消えた

同時期にゾンビ映画さながらに
街には動く死体が現れ
人を襲い、宝石店を襲い、銀行が襲われた

その張本人は人形師、園田邦江(そのだくにえ)が仕掛けた
長期的な大規模テロであった

園田は熊の人形を操るのと同じように
死体を操り、人類に牙を剥いた

最初こそ、その行動理念は金目の物を奪うという
目的だと思われていた

園田自身も初めはそのつもりであった
しかし、段々と金品を奪うという私利私欲のための
能力使用から、人々が傷つく様、怯える様を
もっとみたいという嗜虐心へと変わっていった

能力は使えば使うほど研ぎ澄まされていく
最初は数人の死体を操るのが精一杯だったが
その数は数十、数百と勢いを増していった

突如現れた死体の大群は
まさに青天の霹靂(へきれき)
人類を阿鼻叫喚の堝へと陥れた

警察も軍隊も死体と抗戦するも
銃も剣も戦車も戦闘機も
その歩みを完全に止めることは出来なかった

それと同時に人々の心にも心境の変化が生まれた
人類があまりにも凄惨な光景に
心を閉ざしだしたのだ
それは園田の思う壺であり
心を亡くし人形と化した人間を
園田は悠々と操り、駒とした

人形と化した人類は死体同様
破壊の限りを尽くし
最後まで希望を捨てなかった人類を徹底的に攻め続け
さらに人形を増やすという負の連鎖を繰り返した
地球上は死体と傀儡で埋め尽くされ
まさに生き地獄と化したのだった