最高のお土産

文字数 1,342文字

 ――――ピコン!

 スマホが鳴り、(かなで)は画面を開いた。

『今、飛行機を降りたよ!やっと日本に帰ってきた~。そっちに着くのは夜遅くになりそう。また、連絡するね!』

 海外に仕事に行っていた恋人の広斗(ひろと)からのメールだった。

『お疲れ様、気を付けて家に帰ってね!』

 奏はそうメールを送ると、スマホを閉じる。


***

 ――――ピコン!


 夜も更けた頃、奏のスマホが鳴った。

 開けると広斗からのメールが届いている。

『奏の家の近くの公園に来てるんだ。夜遅いけど、少し出てこれる?』

『分かった。すぐに行くね♪』

 奏は急いで出掛ける準備に取り掛かる。

 そして、急ぎ足で公園に向かった。

 広斗はフリーランスで仕事をしている。今回も、いくつかあるうちの仕事の関係で、急遽海外に行くことになった。

 勿論、海外に行くと一ヶ月近く会えないこともある。最初は不安だったが、広斗に心配をかけさせたくなくて笑顔で見送っていた。

 広斗が海外に行っている間、寂しくないと言えばウソになる。でも、海外に行っても時間ができた時はメールをくれる。そのお陰で寂しさは少し紛れていた。

 
 公園に行くと、広斗の姿があった。
 家に帰る前に寄ってくれたのだろう……。背広姿のまま、ネクタイは少し緩めている。

「広斗さん!」

 奏が広斗に駆け寄る。

「お帰りなさい!広斗さん!長旅、お疲れさまでした!」

「ただいま、奏」

 そう言って、広斗が奏を抱き締める。

「はぁ~……。やっと日本に帰ってきたって実感できるよ……。やっぱり奏は癒しだね。ホッとするよ……」

 そして、公園のベンチに座ると広斗が奏の方を抱き寄せた。

 穏やかな時間が流れる……。

「あっ、そうだ!これ……」

 広斗がそう言って鞄の中から一枚のポストカードを出してきた。

 仕事で訪れた街並みの風景のポストカードで夕暮れ時を映している。

「お土産がポストカードって、変かもしれないけど……その……」

 そう言って広斗の表情が曇る。

「何かありましたか?」

 奏が心配そうに覗き込む。

「そのさ……、友達に言われたんだ。海外行って彼女のお土産ならもっといいもの買えよって……。でも、俺はフリーで仕事しているから今回も仕事関係とはいえ実費だからさ……。だから……ごめんって思って……」

 広斗はそう言いながら、申し訳なさそうな顔をする。

「最高のお土産をくれたじゃないですか……」

「……え?」

 奏はそう言うとベンチから立ち上がり手を広げた。


「だって、無事に帰ってきてくれたじゃないですか!大切な人が仕事で海外に行って、

ということこそ最高のお土産ですよ!それに、それだけじゃありません!家に帰る前に私に会いに来てくれました!私は広斗さんが無事に帰ってきてくれて、真っ先に会いに来てくれたことが、最高のお土産です!ありがとうございます!すごく嬉しいです!」


 月明かりに照らされながら、満面の笑顔で奏が言葉を綴る。

 その顔には、とても幸せな気持ちが沢山詰め込まれていた。

 広斗が奏に歩み寄り、抱き締める。

「ありがとう、奏。大好きだよ……」

「私も大好きです……」

 唇と唇が重なる……。


 月が優しく二人を照らし出す……。

「ただいま……」

「お帰りなさい……」



 奏と広斗の再会を祝福するように空には無数の星が瞬いていた……。

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