愛の彼方

文字数 368文字

 それから間もなくお姫様は病気で亡くなりました。
 悲しみに暮れる王子様を慰める娘ですが、以前のような激しい愛は感じられず、胸に不安を募らせる。
 もう、王子様はわたしのことを愛してはくださらない。
 涙に揺れる月夜を見上げる娘は、まるで昨日のことのように海で過ごした日々を思いだし、水晶のような涙が銀の指輪を濡らします。
 すると、どこからか懐かしい声が聞こえて海を見ると、あの頃と変わらない姿の人魚をみつけました。

 「人間になってしまった、かわいそうな妹。
 このナイフで王子様の胸を刺しなさい。そうすれば人魚に戻れるわ」

 姉たちは白銀や瑠璃に輝く長い髪と引き替えに、魔女からもらったナイフを妹に渡して、必ず朝までに王子様を殺すよう優しく言い聞かせ、また海の中へ消えていきました。

 人魚は、暁に燃え死んでしまうからです。
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