人魚の秘密 

文字数 660文字

 深い深い海の底
 珊瑚と銀の水晶のお城に海の王様と美しい人魚たちが棲んでいました。
 王様には6人の娘がいましたが、青い背びれが美しい姉たちとは違う一番下の妹は闇のような黒い髪と白いうろこの短い尻尾を持って生まれ、魚たちや仲間の人魚からも嫌われて、いつもひとりぼっちでした。
 ある日、16歳になる前に人魚はお城から逃げて、王様との約束を破り海の上に出ました。そこには大きな船が浮かび遊ぶ中、夜空に火の花が飛び散る不夜城。
 幼い妹は灰色にくすんだ瞳を輝かせ、眺めていました。
 初めて見る人間は絹糸で折られたドレスとたくさんの宝石で着飾り人魚と変わらない美しさでした。
 ただ違うのは、ふたつの足で歩いたり踊ったりすること。
 「わたしも、あんな風になれたら…」
 小さな胸が美しい憧れにしめつけられる。お城へ戻ると王様の怒りを受け、難破船に幽閉され毎日、泣き暮らす日々。醜い妹をかわいそうに、と思った姉たちはおばあ様から教わった人魚の秘密を教えてあげました。


 「恋をすると、私たちのように綺麗になるのよ」


 地上の王子様に寵愛を受け、血肉を食べることで千年の命と美貌を手に入れるのだと教えられた妹は恐ろしさのあまり、夢中になって逃げました。
 でも、姉たちのように美しくなれば、友達ができるかもしれない。
 貝殻で髪を飾り歌をうえたば、魚や竜宮の使いも振り向いてくれるだろう。
 姉たちのもとへ引き返す妹はどうすれば恋ができるのか聞くと大急ぎで毒が吹き出す岩を潜り抜け、魔女の住む深淵の杜へと進みました。
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