酒場の夜 (横浜)

文字数 823文字

 あるときは、横浜に1泊した。中華料理は基本的に大勢で食べるものらしく中華街への一人旅にはかなり工夫を要する。

 謝甜記の朝粥で一日を始めた。スタミナ粥は滋味深くてパクチーが香ばしい。 昼には青海星で飲茶の一人用セットを、味は良いけど少しずつで大勢で食べるのとは勝手が違うようだ。夕方から双明楼で小皿料理(牛バラ煮、同苗炒め、蒸し鶏)を肴にハイボール、歩き疲れたので炭酸が喉に染みた。暗くなってきてジャズバーのウインドジャマーへ。カウンターでキューバリブレを頂くが旨い。誰がコーラとラムを最初に割ったのか、絶妙なセンスだろう。店ではジャズコンボが渋い演奏中、でも米国のように客が食事をしながら騒いでいる、面白い店だ。

 元町で裏通りのスコティッシュパブのレザーラッシュという店に入った。かなり広く片方には大きなカウンター、その中には店主らしき壮年の人と外国人のきれいな女性は奥さんのようだ。さすがに横浜のパブらしく、次々と現れた常連客も国際的、地元インターの同窓生とのこと。イタリア系、中国系、日系の男女が幼馴染として楽しそうに話していてなんとも素敵な雰囲気。昔に読んだ「21の気球」という話を思い出した;ダイヤモンド鉱山のある南の火山島に移住した20か国の家族が日替り輪番で自国料理のレストランを開き、他の家族をもてなすという夢のような物語、最後に火山が噴火し、皆ダイヤモンド持参で其々備えてた気球で逃げ出すのだけど、楽しくて少しほろ苦い良い話だった。

 空腹を覚え、店主に小振りなステーキとマティーニを頼んだ。昔からステーキには不思議と強い酒精のマティーニが合うと感じている。その時も強いオンザロックのマティーニが飲みたかった。旨いステーキとともに飲むと元気が湧いてくる気がするのだ。そのあとも個性の強い国際的な客に囲まれて真夜中まで酔いしれてしまった。美味しい肴と酒と人との出会いがマッチするととても幸せな時間が訪れるのは横浜でも変わらなかった。



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