プロット

文字数 2,236文字

起:
 羽太陽一(はたよういち)は夏のドローン甲子園・小学生部門に出場する為に毎日、特訓をしていた。地区予選の団体戦で陽一の所属するチームは団体戦で準優勝して、次のエリア大会への出場権を得た。個人戦でも予選決勝まで進んだ陽一だったが、団体戦優勝チームのリーダー・宋連美嗣(そうれんみつぐ)の操縦するドローンと接触事故を起こし、陽一のドローンは墜落してしまい、途中棄権となる。
 陽一はエリア大会でのリベンジを誓うが、チームメイトの反応は薄い。


承:
 ある日、かつて戦闘機乗りだったという曽祖父・昇が入院して、陽一は見舞いに行く。ドローンのことを熱心に語る陽一に、昇は「応援している」と告げる。
「自分もドローンに乗ってみたいなあ」
「ひいおじいちゃん、ドローンは乗るものじゃないよ」

 ある日、自主練習をしていると、ドローンが突然、変な動きを始める。やっとコントロールが効いて手元に戻って来たが、陽一の目にはドローンに乗る(小人サイズの)曽祖父の姿が見えた。昇によると、「乗りたいなあ、と思っていたら魂だけ飛んで来てしまった」とのこと。陽一は驚くが、操縦の邪魔をしないことを条件に、昇が乗ることを許可する。

 彼の所属するチームは練習がうまくいっていなかった。
(団体戦は障害物コースを飛ぶリレーのようなものでチームワークが大事)
 メンバーそれぞれに事情があった。とくに6年生のリーダー木更津湊(きさらづみなと)は親から塾の夏期講習へ行けと言われていて、中学受験の邪魔になるから初戦で負けて来いとまで言われているのだった。陽一はチームメイトのやる気のなさに腹を立て、一人で上手くなって優勝してみせると決意する。

 家への帰り道、陽一は熱心に練習をするチームを見かける。地区予選で彼らを破って優勝したチームだった。仲間にはっぱをかける為にこっそり観察する陽一だったが、敵チームの様子がおかしい。よく見ると、敵チームのリーダー宋連美嗣はチームメイトを使って、どうやったら自分のドローンがダメージを受けずにわざと衝突して相手を墜落させられるか練習し、どうすれば審判の目をごまかすことが出来るかの研究をしていたのだ。宋連は個人戦での優勝しか考えていないのだ。

 陽一は怒り、絶対に宋連にだけは負けないと意気込む。彼の次に上手な桶川原紅(おけがわらもみ)にそのことを伝えるが、逆に「陽一こそ個人戦の仕返しにチームを利用しているだけでは?」と問い返されてしまう。その場では否定するが、紅の意見が間違っていないことに気づく。曽祖父のアドバイスもあり、陽一は個人の才能や努力で勝利しようとする考えをあらためる。
(曽祖父の思い出語り。少年飛行隊に志願したら年齢を偽った為に叱られたこと、戦闘機に乗っていた人々は決して自分が英雄になる為に乗っていたわけではないことなど)
 陽一のチームは練習を重ね、ついにエリア予選大会の日を迎える。


転:
 エリア大会の予選、一試合目。ぶっちぎりの1位でアンカーの陽一にバトンが渡された。ところがゴールまであと一周のところでコントローラーが故障する(故障するとドローンはその場で静止して、自動着陸してしまう)。絶体絶命のピンチ……と思った瞬間、ドローンがゴールに向かって飛び、見事に1着となる。見かねた曽祖父が、ドローンを飛ばしたのだ。陽一は曽祖父に礼を言ったものの、複雑な気持ちになる。

 次の試合までに修理を試みたが、コントローラーは故障したままだった。事情を知らず、一試合目の操縦を褒め称えるチームメイトに、陽一は真相を告げる。彼は予備のコントローラーを持っていないから、二試合目は危険しなければならない、と。ところが4年生の横田誠一郎が予備のコントローラーをいくつも持っていた。陽一達は競技を続けられることになった。

 決勝で、陽一のチームはライバルの宋連チームと対戦する。相手はワンマンチームだから、と勝ったつもりでいるメンバーだったが、リーダーの木更津は、「油断するな」と忠告する。
 試合が始まる。相手チームも見事なチームワークや個人のテクニックを発揮して、お互いに抜きつ抜かれつの大接戦となる。


結:
 ついにアンカー同士の対決となり、宋連がフェアプレイでも実力を発揮する。ただ機体の性能の差か、それまでの衝突によるダメージのせいか、宋連のドローンは徐々に速度が落ちてくる。陽一のドローンが追いつき、追い抜こうとした瞬間、宋連がなりふり構わず体当たりを仕掛けてきた。
 陽一の勘か、それとも曽祖父が手を貸したのか、見事な操縦で衝突を回避したドローンは1着でゴールへ飛び込んだ。宋連のドローンは障害物に激突し、偶然にもゴールを通過したが、墜落して大破してしまう。宋連はドローンを回収した後、チームメイトに謝罪する。

 陽一達のチームは全国大会へ。準優勝の宋連チームも大会へ進む。
「次は負けない」
 再会を約束して、宋連は去って行った。

 チームメイトと別れて帰宅する途中、陽一は異変に気づく。曽祖父がいない! 彼は病院へと走る。まだ決勝戦での文句もお礼も言っていないのだ。
 病室に駆け込んだ陽一(病院ではお静かに)。彼が目にしたのは、すっかり元気になって看護婦さん達と談笑する曽祖父・昇の姿だった。昇の肉体が回復したので、魂が戻っただけだったのだ。
「また、乗せてくれ」
「今度は魂じゃなくて、自分でドローンを飛ばしなよ」
 陽一は飛行機の話を聞きに、また見舞いに来ると曽祖父に誓った。

(了)
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