第5話天使の幻影

文字数 980文字

「ちょっとまてよ。言いたい放題いわれてこっちも黙っていられるわけないだろう。すこしはこっちの言い分も聞いてくれたらどうなんだ?ちゃんと聞いてくれたら誤解も解けるに違いないんだろうからさ。」

「誤解?あんたがスカートの中をのぞいたことの一体何が誤解なの?私はあなたを警察に突き出してもいいのよ。それなのにこうしてあなたに罵詈雑言を浴びせてるだけで見過ごしてやっていることに感謝してほしいくらいよ。まるで天使ね。」

「罵詈雑言って・・・天使はそんな言い草しないと思うんですけど・・・」

「あら、天使だって罵詈雑言の一つくらい出ることだってあるのよ。あなたもそろそろ天使なんていう幻影を捨てて、現実を生きなきゃだめよ。天使なんてこの世のどこを探しても居ないんだから。
でも、あなたヒョロヒョロのうじうじしたさえない男だと思っていたけど意外と思ったことをちゃんと人に言うことができるのね。細菌の男子って妙に女子にやさしいだけしか取り柄のない菩薩みたいな野郎ばっかりだからあなたみたいな人が増えてくれることを願うばかりよ」
「俺みたいなか・・・褒めてくれているのか。」
「ば、馬鹿じゃないの!褒めてるんじゃないんだからね」
ツンデレ要素も備えているのか。
スペック高し!
「いけない帰らなくちゃ」
彼女は時計を見て青ざめたような顔をして駆けていった。駆け抜けていった彼女の背中にはまるで羽が生えているかのような天使の幻影をみた。

月日は流れて夏になり彼女ともなぜか朝の時間にすれ違うこともなくなり僕は彼女のことを忘れつつあった。相変わらず僕は自堕落な生活を送っている。来年は受験だというのに全く現実味が湧いてこなく、まだ受験なんて当分先のことだろうと感じるのである。
つくづく、人間というものは月日逃れに対しての精神的成長具合が低すぎるんじゃないかと思う。友というものは人生において重要な役割を演じるものだと思うし、この僕も自分の友達の周に大事な存在として認識されていたら嬉しいんだろう。だから友達が全くいないというのは些か問題であるかもしれない。そうしたいざという時のストッパーや相談役がいなくなる訳であるから。でもその代わりに一人でしか決して積むことのできない経験というものを得ることができるんだろうと思う。彼らは深く内省するのだろうと思う。内省内省。


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