第8話ーいつも二人で

文字数 408文字


 ここに来てからの私は、彼の胸の中で図々しくも泣き、自分勝手な物言いで彼を困らせた。
 彼が私を置いて行かないことは、分かっていたのに。
 ただ自分が確信することで、安心しようとしていた。
 そんな私に、私が絶望していた。
 何もかもが自分勝手な私に。
 だから……これ以上自分に絶望したくないから、彼と離れようとした。
 ここから離れて、彼が行った後に本当に死のうとした。
 しかし、そうはならなかった。
 最初は彼の言葉より、気持ちより、自分への絶望が勝っていた。
 だからなのかも知れない。
 彼が行動を起こしたのは。
 私はこの日、彼と初めてのキスをした。
 その瞬間、私の心と身体は彼に染められていた。
 それだけで私の三年間の憂いの全てが、どうでも良く思えてきた。
 そして……この三年間で初めて私は、本当の意味での幸せを感じたのであった。

 これからはどんなことがあっても。
『いつも二人で乗り越えて行こう。』

「いつも二人で」fin.
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登場人物紹介

男の子。とある島の小さな村で、女の子と同じ日に生まれ運命共同体として育てられた。男の子は生まれつき身体が弱かったが、日々女の子に連れ回され鍛えられていく。そんな男の子は女の子に恋心を抱いており……

女の子。とある島の小さな村で、男の子と同じ日に生まれ運命共同体として育てられた。女の子は元気で明るい性格の様に思われるが、とある出来事をキッカケに男の子に対して激重感情を持つようになる。

商人。元貴族だが没落し、とある商会に拾われた。その商会に暖かく迎えられた商人は、優しさを重んじる様になる。そんな商人が王都の市場調査をしていると……。

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