第３話

ふむ、府津宇様の家がここにあったのか。

とある女の子がメモしながら、「府津宇」家の前に立っている。

この女の子は伊木負おとこが好きな人――愛土流である。

成績優秀・人気者・容姿端麗な彼女は一つ言えない秘密がある。それは好きな人の記録である。

「ふふ！今日も色んな府津宇様の情報を聞きました！良かったわ！ああ、府津宇様！好き好き大―好き！でも……」まさか府津宇様は好きな人がいたなんて！

これが失恋ということでしょう、うっ……！

とにかく、あの人は一体誰なのか調べよう！そして、府津宇様にわたしの祝福を……ぐっ！想像するだけで心が！

「あれ、愛土流ちゃん。何でここに？」

「あ！君はいびつちゃん！」須古氏(すこし)いびつ、学園報道部の部員で、わたしの友達。

そういえば、いびつちゃんはこの近くに住んでいる。うっかりすぎだわ！府津宇様のことに夢中しすぎて、全然気付かなかった！

「ええ、私なんだけど……そんなに驚く？」

どうしよう、早く言い訳を……

「あ！ほら、わたし告白されたではないか。だから、ちょっといびつちゃんに相談を……」

「でも愛土流ちゃんはちゃんと返事したよね？」

し、しまった！府津宇様のことしか考えていないから、忘れちゃった！

「いや、あの、その！」

「はあ……いいよ、私は早くお家に帰りたいから。」

あれ、いびつちゃんはちょっと元気がない。

「……いびつちゃん、どうした？」

いびつちゃんはわたしを見て、少し躊躇いを感じた。

「笑わないでくれる？」いびつちゃんはこう言いながら、わたしの方に上目遣いの感じで向いてくる。ちょっと可愛い。

「そりゃあもちろん！友達だから！」わたしは自分の胸を叩きながら、自信をもって返事した。

「じゃあーー」

どうやら、いびつちゃんは恋に落ちたようだ。それに、好きな人はなんと伊木負おとこ。

約束通りわたしは笑わなかった。でも……

「なんで伊木負さんを？君たち接点がないだろう？」

「そうだが、でもさっき学園祭のことを見たら、誰も好きになるじゃん！」

「え？！そうなの？全然わからなかったわ。ごめんなさい。」

「謝る必要はないよ。でもどうしよう、愛土流ちゃん。あの人に告白してもいいかな？」

うん……いびつちゃんは本気でしょう。なら、ここは友達として！

「いいと思う！いびつちゃんが可愛いし、優しいから！絶対君に惚れるよ！」

「本当？」

「本当！」

「ありがとう、愛土流ちゃん！」

「お！頑張ろう！」

しかし、まさか伊木負さんはこんなことまで考えていたとは。

学園祭でわたしに告白するのはきっと話題性のためだと思っていたのだが、実際女性を引き込むための演技だと思わなかった。恐ろしい策略家だ！

ここはいびつちゃんの安全のために、少し伊木負さんのことを注意しよう。

「あの、いびつちゃんーー」

「ちょっと出かけ……あ。」やあぁ！府津宇様が家から出ました！