第1話 プロット

文字数 1,543文字

(前提) 
 ライゼン王国の王都は、世にも奇妙な都として知られている。
 地下に広がる広大なダンジョンの一部を、まるで我が家のようにして住んでいるのだ。
 地上一階~地下三階が住民の居住区で、地下百階層にいると言われたボスは無理でも、六階層までのボスは三世紀前に退治されたらしい。
 地上から数えて、地下三階層までの危険なモンスターもトラップも狩りつくされて、平和な日々が続いて三世紀。
 そこから上には強力な結界が張られて、魔獣は上がってこないようになっていた。
 ボスを退治した勇者が建国王となり――その子孫たちは王位に就く試練として幾度でも復活する三階層から下のボスモンスターを討伐しなければならない。

(起) 次期王位継承者のファドネル殿下はまだ十六歳。のほほんとした性格でどう頑張ってもモンスター退治なんてできそうもなかった。
 仕方がないので家臣団から選りすぐりの猛者を選び出し、王子を筆頭に地下に挑むことにしたのだが、王子の興味はそこにはない。
 彼は、大地母神の神殿から派遣された女司祭エルメスに首ったけになり、現婚約者であるブルックス公女・白魔導師エレンに、地下に降りて数度目の婚約破棄を突き付ける。これをエレンは拒むが、そこには理由があった。彼女には人の運命の路が見えるのだ。それも階段形式に落ちる様も上がる様も見えてしまう。そして、いまのエレン自身の路は、細いハイヒール一足分程度の幅しかない、ガラスの細道だった。婚約破棄を認めるとこの路は崩落する。そう理解するエレンにはうやむやにしながら、逃げるしか生き残る方法はなかった。

(承)そんなある日、モンスターの襲撃を受けたエレンたち。死んだ兵士の前には黒い靄が出現することをエレンは知る。襲撃者を地上からの援軍で撃退した一行は行くか戻るかの選択を迫られる。しかし、愚鈍なはずの王太子は続行を選択した。
 彼は部下に犠牲になれと命じるが、その呪いに似た言葉を吐いた時、あの黒い靄が同時に出たのをエレンは目撃する。
 パーティメンバーの一人、退魔師がその黒い靄に覆われ、生還するのを見て不思議な感覚に包まれるエレン。
 実は王太子は『悪逆の毒霧』という、呪いを口にすればそれが叶うという呪いに犯されていた。言葉を発する度に、寿命が削られるが、彼はそれを行使しないと一定期間で死ぬことになる。
 退魔師は依代の魔法を使い、王太子が口にした呪いを受けることで延命措置のようなことをしていた。この呪いは建国王の時代からあり、一定のサイクルで王家の者を殺すのだという。その真実を退魔師から知ったエレンは自分の能力を彼に打ち明ける。
 エレンの能力はダンジョンの三階から下に降りた日、王太子から最初に婚約破棄を告げられた時に発動したのだった。

(転)エレンの予見、退魔師の依代、王太子の毒霧。
 この三者をうまく活用することで、王太子を救えないかと考えるエレンと退魔師。そんな中、大地母神の女司祭エルメスが非業の死を遂げる。それは王太子の毒霧が原因だった。
 無差別に人を殺し始める能力の暴走を止めるには最下層にいるというラスボスを退治しなければならない。その為にはダンジョンの案内人が必要だということが分かるが、上の階層への路はすでに塞がっていた。エレンの予見に従い一行はダンジョンのどこかに引きこもった案内人を捜し出すことに成功する。




(結)案内人は空間魔法を使い、ダンジョンのすべてを網羅する凄腕の男だった。彼と退魔師は協力して、世界の裏側から最下層へと到達する最短ルートを発見し、ラスボスと一行は対決する。最期はエレンの予見と、ラスボスに向けて発せられた王太子の毒霧により、勝利を治める。そして、王太子は国王となるが、エレンは彼よりも別の相手を選ぶのだった。
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