第1話 赤羽39

文字数 789文字

彼女に逢いに行く3時間のドライブ。

ずっとリピートしてた30周年武道館DVDから赤羽39に換えた。

間違えた。

あれ?泣いちゃうや。

もう大丈夫だと思ったんだ。

どんなに悪態ついて醜態晒しても離れてくれない。

地獄の入口でバイバイだけど、そんなら腹括れ、それまでは。

そんな風で会うんだからさ。

「体にやさしいパンク」をゴキゲンに歌い出す。

前泣いてた「体も家族も 付き合い悪いぞ あ、付いちゃ来ねえ 付いちゃ来ねえ」は大丈夫。

情けなさは反芻し切った、つもりだった。

それが、「環境にやさしいパンク 有り得ねえぞ もうやめっか?」でダメだった。

有り得ねえぞ、もうやめっか?

彼女に、自分に突きつけてた言葉。

彼女はNoと言った。

それを確かめに行くのは、すごく怖かった。


あとは、もうダメだった。

ノロマが走って行く

「外道にもなれた 卑怯にでも でどうにか生きた ショイ混んで続くんだ」

続くんだ…

リサイクリン

「どうにかして どうにかして生きよう」

彼女だけじゃない。

色んな責任は、やすやすと逃がしてはくれない。

東の窓

「風も吹かず ツキも見当たらねんだろ」

そして、生きてれば

今までの「ここは何処だっけ便所か もうずっと泣いてたか」ではなく、その次の

「なんだかんだ生きれてんだ もっと笑うぜ 笑えるんだぜ」

「笑えるんだぜ」は嗚咽で言葉にならなかった。

いちばん意外だったのは、焼めし

「自給率上げい 種蒔かせい てめん田んぼくれどーにかせい」

何故だろう。

覚悟を決めて、そいつを固めに彼女と会うんだ。

それでも、やっぱり僕は臆病虫。

泣き腫らして会えないから、歌うのをやめる。

それでも時々涙が溢れる。

なんとか、彼女と会った。

彼女が余韻に居る間、一曲歌う気になった。

安ラブホのカラオケは、壊れてた。

良かった。

泣いちゃっただろうから。

泣かずに済んだ。

別れ際、頭くしゃっとされて、まだ夢の中。

明け方の帰り道、僕はもう泣かなかった。

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