プロット

文字数 1,455文字

起:銀を産出することで栄える王国「銀の国」。都の政務をつかさどる司政官の豪華な館では盛大なパーティが開かれていた。だがその華やかさとは裏腹にパーティの雰囲気はどこかピリピリとした緊張感に包まれている。何食わぬ顔をして賓客を迎える若手司政官ラウールだが、彼の眉間には青筋が浮き出ていた。宴の最中、灯りが消えガラスの割れる音とともに飛び込んできたのは首までの金色の髪を揺らした青い目の小柄な人影。続いて長い銀の髪の青年が、食べ物を詰めた袋を担いでテーブルの下から這い出てきた。警備兵をものともせず、金色の髪の賊はラウールをおちょくるだけおちょくると逃げていく。だが運動神経は抜群だがおっちょこちょいの部下、銀の髪の青年トリーは担いだ荷物の重みで落下して番犬に追い回される。
 金色の髪の賊はティリキアン・メイドレード。実は騎士隊を見下すラウールと彼の館の警備体制を破ることができるかどうか賭けをしていたのであった。このティリキアンこそ、最年小で銀の国騎士隊長に選ばれてSilver Moonの称号を得た、すべてが前代未聞の少女であった。
 後日激怒して騎士隊をたずねるラウール。逃げ出したティリキアンは、路地で追われている少女を助けて、腕の立つ追っ手と一戦を交える。油断につけ込みティリキアンが傷を負わせた相手は邪剣の使い手、漆黒の瞳を持つガーライズであった。秘密を知ってしまった少女はガーライズの計画をティリキアンに伝える。

承:銀の国は遙か昔に栄えた王国の一部で、失われた文化の片鱗が残されている。中には今となっては解明が難しい叡智もあった。隣国の黒の国は、以前から裕福な銀の国を狙っており、王の暗殺を目的としてガーライズの一味を雇っていた。暗殺と侵攻計画を知りガーライズを追うティリキアン。しかし、追い詰めながらも、高度な剣技に歯が立たず逃げおおされてしまう。ティリキアンは初めて敗北を知り、自信が打ち砕かれる経験をする。

転:ティリキアンへの見せしめのため、ガーライズはティリキアンと同居する従姉妹シルキアンを狙う。彼女は楚々として女らしくラウールも彼女が好きだったが、ティリキアンに告白を阻止されたという苦い過去があった。ティリキアンの館の塔の上に失神したまま放置されたシルキアン、周囲には油を撒いて炎が付けられる。助けに行こうとするティリキアンを止めるラウール。くってかかるティリキアンに「お前以外に誰がこの国を守るんだ」と一喝したラウールは、自分の地位や名誉を捨てて、古代の知恵を使ってティリキアンの家の周りの火事を鎮火させる。そのせいで鳴り物入りで建設されていた大聖堂は壊れ、周りの畑が水浸しになり彼は司政官を解任されてしまう。
 後日、ラウールの言葉に自分たちを助けるためにこの地位につくまでの努力を水の泡にした悲しみを感じて、ティリキアンはガーライズからこの国を守ることを誓う。

結:国王の即位30年記念式典の警備をしていたティリキアンだが、罠に嵌められてトリーと共に式典の横に立てられた古代の牢獄に閉じ込められる。ティリキアンはラウールに聞いた伝承とトリーの抜群の嗅覚で塗り込められた古代の扉を見つけて脱出する。危機一髪で王に斬りかかるガーライズに追いつき、仲間の力を借りながらティリキアンは暗殺者を死闘の末に捕縛する。
 後日、街頭に立ってわびしく自分が壊してしまった大聖堂修復の募金をするラウールに、銀貨を入れるティリキアン。罵倒しあう二人だが、二人の間には余人が立ち入れない信頼関係が構築されていた。

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