第1話(2)

エピソード文字数 1,938文字

「この手の暴動は時間が経つほど大きくなって、収拾が困難になる。フュル、宿題は何が残ってるの?」
「小学4年生の、『夏休みの記録』――天気と一日の中で最も印象に残った出来事を書く先生と、工作先生が1つやね。ワシのせいで大変なコトになっちゅうき、死に物狂いでやりよったがよ」

 フュルは、恥ずかしそうにして左頬を掻く。
 残りは、非勉強系が2つか。これなら一日で終わりそうだな。

「筆跡鑑定アプリなどが存在する為、代役を立てられず…………勇者様はふらつきながらも懸命にこなされ、四日間で二十九回も気を失われました。他の解決方法を見つけられなかった自分が、情けないです……!」
「ツララ先生、悪いのはワシぜよ。先生は悪うないきね」

 その通り。何もかにも、このバカが悪いのです。

「これはフュルの責任で、それくらいの苦労はしないと罰が当たる。とはいえ相当負担がかかってるし、ココは日本とほぼ同じ時刻だから――そろそろ日が変わるんで、今日はもう寝るとしましょうや」

 俺は柏手を打ち、室内にいるメンバーを見回す。
 真っ白になってたフュルは念のために休息を挟むべきだし、俺達はガレの件があって疲労困憊ING。ちょっくらネムネムしよう。

「うん、そうやね。また迷惑をかけたら困るき、久し振りにゆっくり休むぜよ」
「そだねそだねっ。じゃーあたし達は、学校(がっこー)に備えてゆーせー君家に戻ろー」
「本来は、そうするべきなんだが――。なんか急遽先生方の会議が入ったみたいで、金曜の夏休み特別授業はなくなったからね。折角来たんだから、解決するまでこっちにいるよ」

 この子はこの件に必死で、のちの部分でもオーバーワークをする可能性がある。そのためズル休みは気が引けるが、片が付くまで傍でサポートするのだ。

「麗平さんには、『遠言』を使えば報告可能だ。というわけで寒上さん、部屋を貸してもらえますかね?」
「勿論でございます。ただちに、国賓用のお部屋をご用意致します」
「いやいや、普通の寝室にしてください。そっちがいいです」

 リッチなお部屋は、落ち着いて寝られない。それが庶民クオリティ。

「分かりました。では、担当のメイドを呼びますので――」
「メイドさんも結構です。ホテルの一般宿泊客と同等の扱いにしてください」

 俺はそんな身分じゃないの。担当なんて要りません。

「畏まりました。ご希望通りのお部屋に御案内致します」
「はい、案内をヨロシクで――って何をやってるんだ俺は! 俺だけ別の部屋じゃいけないだろっ」

 疲れ過ぎててうっかりしていた。
 俺は、いつ襲撃されるか不明。単独睡眠は自殺行為だ。

「えーっと、今日の当番はレミアだったね。悪いが頼みます」
「ゆーせー君は、あたしのせーでこうなったんだもん。全然いーよーっ」

 にゅむっ娘レミアちゃんは、破顔で快諾してくれる。
 うーん、疲れてるのに申し訳ない。お詫びにあとで、何かしないとな――

「色紙様黒真様、口を挟んですみません。よろしければ、今晩はわたくしめが担当致しましょうか?」

 にゅむちゃんへのお詫びを考えていたら、サクが挙手をした。

「わたくしめの役目は終わりましたので、明日になれば持ち場に戻ります。ですので明日以降も護衛を務められる皆様は、少しでもお休みになってください」
「あそっか、サクとはお別れなのか。それなら…………悪いけど、お願いしようかな」

 彼女の言う通り、不定期睡眠を行わない人に頼むのが賢明だ。ホント、マジご迷惑をおかけします。

「にゅむむん。サクちゃん、しんどくない?」
「はい、問題は何一つありません。それにわたくしめは左程お役に立てなかったので、是非担いたいのですよ」
「それを言うならワシもそうで担当したいがやけど、今日は休まんといかんきね。先生にお任せするぜよ」

 フュルとレミアは、ペコリとお辞儀をする。なおもう一人いる魔法使い魔王はまだ思案中で、この会話に気付いていません。
 ゆーせーくーん、サクじゃなくてコイツが持ち場に戻って欲しいよぅ。

「色紙様、今宵はわたくしめが警護を致します。至らぬ点があると思いますが、何卒よろしくお願いします」
「いえいえ。こちらこそ、お世話をかけますです」

 俺もペコリとお辞儀をして、これにて今夜の方針は決定。その後は明日の予定をザックリと決めたり、「名案だわ! 今度はこれでいきましょう!」というシズナを声を聞いたりして、午前0時過ぎに各自寝床へと向かったのであった。


 それにしても――初めてきた世界での宿泊なのに、微塵も心音に変化がない。僕はもう、色んな部分が麻痺しちゃってるなぁ……。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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