第4話(1)

エピソード文字数 2,865文字

「ひぃぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」

 皆様、驚かせてスミマセン。寝て起きてご飯を食べ終えたらシズナマジックにかかり、リビングで変人が悶えているんです。

「今日は人類の生死が決まる大事な日なのに、朝からこれだよ……。最悪の気分だ」
「従兄くん、世の中には悲痛な出来事が沢山あります。これが最悪ならそれらはどうなるの! マイナス思考はやめなさい!!
「うるせぇボケ! お前に説教する資格は――ああもうっ」

 やっちまった。連続でシズナマジックの餌食になってしまった。

「最近、ぁふっ、従兄くんは、ガードが、硬くなったからぁ……! 私も日々、んふっ、腕を磨いて、成長、してる、のよ……!」
「こんなにも嬉しくない成長は、他にないな。ぁ~ぁ、フュルじゃなくてコイツが帰ればよかったよ」

 俺は長嘆息をして時計で七時半と確認し、鞄を掴んで玄関で靴を履く。
 今日はこれから麗平さんの家に行き、護衛の数を増やして学校に向かう。その為いつもより出発が早いのだ。

「あそだそだっ、先にお渡ししとくねっ。これ、物事が成功(せーこー)しやくすなるお守りさんだよー」
「…………。あ、ありがとね、レミア」

 なんでだろう。この子謹製のお守りがあったら、成功するモノも成功しなくなる気がする。

「にゅむむ? にゅむー?」
「ううん、なんでもないよ。シズナも行くぞー」

 俺はお守りをポケットに突っ込み、ガチャリ。にゅむ星人と変人を連れて玄関ドアを開けたにゅむ。

                  ◇※◇

「おはようございます、色紙様、黒真様、虹橋様。良い朝でございますね」
「グッモーニンですわっ。ワザワザソーリーですわね」

 プチイベント・異世界人襲撃! を経て着くと門扉の前に二人がいて、一人は正座、もう一人は手をブンブン振って出迎えてくれた。
 伝説の踊り子侍、黄村サク。今日も腰が低いです。

「通学路からそんなに離れてないんで、苦じゃないよ。では登校しましょっか」
「うんですわ。今夜の十九時までは、普通の学生として過ごしましょう」
「……彼らは非一般人であると同時に、一般人でもある。だから優星と活美は、普段通りの生活をする選択をしたのだった」
「しーずーなー。ナレーションを入れた程度じゃ、もう怒らないからねー? こっちだって成長してるんだよー?」

 俺はあっはっはっはと笑い、皆で登校路を歩く。
 わたくし達の周りには、出勤中と思われる方々がどっさりいますからね。朝っぱらから興奮を目の当たりにし、不快な気分にさせるワケにはいかないのです。

「にひひ。こうやって大勢で歩くのは、やっぱ楽しいですわね。折角だからゲームでもしませんか?」
「お~いいねっ。なにする?」
「そーですわね。しりとり、なんてどうでしょう?」
「ごめんそれ却下。他のにして」

 コイツらすぐ、~ウスシリーズを出すんだよ。異世界人とやるシリトリは、ちっとも面白くないんです。

「だったら色紙クンがいるコトだし、高知県にある『箸拳(はしけん)』というのをやってみましょう。前によさこいを調べた時に、そういう遊びがあると載ってましたわ」
「うん、仰る通り高知にありますよ。でもそれは、酒の席での遊びだからボツですな」

 手短に説明しますと――箸拳とは、二人で行う拳遊び。お互いが出したお箸(勿論、隠して持っています)の合計を当て、ソレで負けた方がお酒を呑むというモノです。
 なので未成年の俺たちゃ、コレをやれんのですはい。

「だったら、そうですわね、動物発見ゲームをしましょう。一番先に動物を見つけた人に1ポイント入り、到着した時に最も点が多い人が優勝ですわ」
「それなら未成年でも、異世界人がいても問題ないね。そいつでいこう」

 てなわけで、動物発見ゲームスタート。俺達は通行人様や車に気を付けつつ、首を四方八方に巡らせる。

「にゅむむー、最初に点を取るのは誰かなーっ? ゆーせー君? それとも、シズナちゃん?」
「私よ! あそこに動物がいました!」

 シズナの視線を辿ると、そこには――? 小学生(男の子)が二人いるだけだ。
 ??? どこをどう見ても、アニマルはいないぞ?

「申し訳ありません、虹橋様。劣っているからなのか、わたくしめの瞳に動物様は映らないのですが……?」
「ウチの瞳にも、映ってませんわよ。虹橋クン、何がいましたの?」
「人。人間だって動物なのよ」
「麗平さんが言った『動物』はヒューマン以外だっ! くだらんことを――あーもーまただよ!」

 出勤中の方々、ゴメンナサイ。公衆の面前で興奮させてしまいました。

「ぁんっっ。昨日一昨日と、不作だった分を、挽回、できて、るわ……っ。いい、調子、ね……!」
「よーし。コイツは無視してゲームを再開しよー」

 俺は変人を突き飛ばし、勝負を再開させる。
 えっとえっとー。アニモーいるかな?

「動物(どーぶつ)さん発見だよーっ。むこうのお家から、黒猫ちゃんが出てきましたー」
「確かに、いますわね。黒真クン1ポイントですわ」

 ファーストポイントは、レミアがゲット。にゅむ星人がいいスタートを切った。

「にゅっむむっむにゅー。連続ポイント、とっれっるっかなー?」
「そうはさせん! 電線にカラスを発見だ!」

 これで、俺も1ポイント。ふっふっふっふっふ、独走はさせんぞ。

「色紙クンと黒真クンが、共に1。ウチらも負けてられませんわねっ」
「はい麗平様。わたくしめも、続きたいと――ぁ」
「サクさん? どうしたの?」
「な、なんでもございません。虹橋様、皆様もお気になさらないでください」

 彼女は空を飛んでるカラスを見つけたのだが、0点の人に申し訳なくて黙っている。この人を接待ゴルフに連れていけば、以後の契約は必ず上手くまとまるでしょうね。

「サク、これはポイントを獲り合うのが醍醐味なんだ。遠慮してたら面白さが半減しちゃうんで、ガンガン点を獲ってよ」
「か、畏まりました。あちらに、鴉様がいらっしゃいます」

 こうして、サクもポイントゲット。優星、レミア、サクが1点で並んだ。

「私と麗平活美さんが、出遅れているわね。これ以上は離されないように――黒猫を見つけたわっ」
「ウチもですわよっ。黒い猫がいましたわ!」

 確かに、いる。塀の上、電柱の陰に、にゃんこがいらっしゃった。

「これによって、全員1ポイントで並んだね。いい勝負だ」
「だねだねーっ。2点目で、一歩リードするのは誰かなー?」
「ウチですわっ。カラスを発見しましたっ」
「私は、また黒い猫を発見よ! 単独でリードさせないわ」
「あたしもはっけーん。黒ニャンコちゃんがいましたー」
「あ、わたくしめも発見です。鴉様がいらっしゃいます」

 立て続けに、ポイントゲット。
 いい感じに、場が温まってきたな。こいつは楽しい勝負になりそう、なんだけどさぁ。なんだけどさぁ……。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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