綴と恒明

エピソード文字数 5,959文字

 封鎖がいつ終わるのかもわからなかったが、紅月はそのあいだいつもと変わらない生活を続けるつもりであり、日課を遵守すること、生活を正確な時間によって区分すること、すなわち生活を形式化することを精神の安定には最良の方法だと考えており、この形式への信望は非常事態においてますます強固になっていた。集会の翌日、紅月は五時に起きて日課のジョギングのためにジャージに着替えて、形式による精神的安定の恩恵を銀太にも与えてやろうと思い、隣室を訪ねたが、想像することもできなかった事態に身体よりも心が疲れていると言われ、仕方なく一人でまだ真っ暗な寒空の下に出ていった。
 紅月がジョギングから帰ってきて風呂で汗を流したときには七時を過ぎており、銀太は起きていたが綴がまだベッドに潜り込んでいて、朝食の準備をするために起こそうとして毛布を剥いだがまだ眠り足りない綴は渋がり、二人は毛布の取り合いになった。ようやく綴は布団から抜け出したが、紅月の形式的な日常はさっそく崩されることになり、というのも秋姫がいつまでも自室から出て来ず、朝食を待たなければならなかったからだ。綴が言うには、秋姫は自分以上の寝坊助で授業に遅刻してくることも日常茶飯事とのことだった。
 紅月は秋姫の部屋の前まで行き、声をかけたが澄んだ湖に浮かぶ気泡のような寝ぼけた声が返ってくるだけで、本人はいつまでも部屋から出てくる気配はなかった。紅月は『緑の家』で鍵を開けさせようとも考えたが、銀太に昨日の今日で疲れているだろうから寝かせてあげてほしいと頼まれたので、秋姫が自発的に起きてくるまで待たされる羽目になり、そのあいだは空腹も相まって苛立っていた。結局、秋姫が紅月の部屋に上ってきて遅い朝食をとったのは十時を過ぎてからだった。

 朝食をとっても秋姫はまだあくびをしていて二度寝をすると言って自室に戻った。銀太と綴は学園の様子を伺うため散歩に出ることを提案したが、紅月は日課の勉強をすると言って断り、さらに二人に邪魔されないように三時間は帰ってくるなと言った。
こんな状況なのに勉強するの?
 まったく腑に落ちないといった顔つきで綴が聞いた。
勉強っていうものはどんな状況下でもするべきで、それが裏目に出ることはねえ。運動や勉強、それに休息、生活の刺激になるものはこんなときだからこそきっちり行うんだ。それが閉鎖した空間でのストレスや抑鬱の解消になる。
 結局、散歩に出かけるのは大室姉弟だけになり、二人は着替えると寮を出た。綴は腰まで伸ばした長い髪を先端の方でシャコガイのような形をしたシュシュで留めていた。外套をきつく締め、高く立てた襟に顔をすっぽりと埋めていたが、シュシュで留めた髪の大きな房だけが湧き清水のように顎のあたりから零れていた。十二月に入り灰白色の雲に覆われて太陽の光も差さない湿った日が多かったが、今日は青く引き伸ばされた澄明な空が広がり、中空には砕氷が散ったような輝きがあった。空気は乾いていたが、その分寒さに鋭さが増し、風に打たれると痛みが混じっているのがわかった。
 大室姉弟は寒風を避けるように身体を揺らしながら並んで歩き、目的があったわけでもないがショッピングモールの方へと向かっていた。道中、生徒の姿を見ることはほとんどなく、たまに見かけたとしても、彼らは通行しているというよりは徘徊しているようであり、またどこかへ向かうのが目的ではなく、歩くことそのものが目的であるようであり、学園の光景は一つの巨大な危機が訪れたというよりも一つの巨大な危機が去ったかのように静かだった。
 ショッピングモールの駐車場は広大だったが、自動車は数えるほどしか留まっておらず、銀太と綴は駐車場の出入り口に立ち尽くして建物を眺めていると、そちらの方から人が来るのが見えた。空気は張り詰めて澄んでおり視界が開けていたために、すぐにその人物が誰だかわかった。守門恒明だった。恒明もこちらに気がつくと、足を速めた。
これはこれは! 綴さんと銀太くんではないですか。
 まるでこの偶然に喜びを抑えきれないといった具合に両手を軽く広げながら恒明は言った。そして速足のために着崩れたブレザーを丁寧に直した。この状況下で学生服を着ているのは生徒会長が生徒会メンバーにそうするように指示を出したからだった。
こんにちは。守門くんもお散歩かな? なんだか大変なことになっちゃったね。
 綴は立ち上げた襟を曲げて顔を出し、笑顔を浮かべて答えた。まるで恒明が生徒会の一人であることを忘れているような口ぶりだったが、皮肉を言っているのではなく、誰にでも悪意がない口の利き方をするのが綴の癖だった。銀太はいつもと変わらない調子の態度を取る綴にいささか気を悪くして挨拶もしなかった。
まったくそのとおりです。昨日の集会で顔をお見掛けしましたから、学園が置かれている状況は理解していると思います。ですからこのようにふらふらと外を歩いては危険ですよ。僕としても生徒たちを、ことに綴さんをこのような目に合わせるのは本意ではないのです。
そうは言いますけれど、守門先輩も理事会側についているのでしょう?
 銀太は一歩前に出て姉を守るようにして、敵愾心をむき出しにしながら相手を見上げた。綴も恒明が絡むと手に負えなくなる弟に困った顔つきを見せはしたが大人しく銀太の背後に回って、守られるがままになった。
それは確かです。しかし僕たちも苦しい立場にいるのですよ。生徒たちから恨みを買うことは覚悟しております。けれどもあなたたちにだけは僕たちの置かれた正確な立場を理解してもらうために、弁解することをお許しください。
生徒会も理事会からの命令によってやむを得ず、協力しているのです。封鎖期間において、生徒側と理事会側のあいだに立ち、互いの意思疎通と調停の役割を担う組織が必要であるとの意見によってね。その意見も理事会の独断で出したものではありません。さらにその上の機関、率直に言えば日本政府からの意見です。そのような雲の上にいる人たちからの指示となれば、おいそれと反抗もできません。下手をすれば反逆罪として監禁、最悪の場合、死刑です。
 許しを乞うように下手に出、甘い微笑を浮かべながら恒明は言った。
それでもあなた方が権力に屈したのは事実です。それに食料など生活必需品の確保は約束されているのでしょう? 加えて身の上の安全も。どのような言い訳を言おうとも、生徒会は保身に走ったんですよ。生徒側と理事会側の意思疎通を図るとも仰いましたが、僕たちの意見なんて聞く気もないはずだ。
いつにも増して手厳しいことを言いますね。しかし何を言われても忍ばなければならないのも心得ています。
銀太くんは少し言い過ぎだよ。守門くんも守門くんの立場があるんだから。
 不穏な空気が流れ始めた二人を窘めるように綴が気弱な声で言った。
お姉ちゃんはもっとしっかりしてよ。昨日の集会で生徒会はすでに二人殺している。もしかしたら、僕たちの知らないところでもっと殺しているかもしれない。僕たちと生徒会が敵対するのはどうしても避けられない。
実際に手を下したのは吾妻さんです。彼女は少々野蛮な性格をしていますからね。僕は殺人に手を染めた覚えはありません。けれどもそちら側から見れば、これは生徒会全体の罪なのでしょうね。いや、正確に言えば、僕たち五人の。瀧川さんと常盤先輩は僕たちに非協力的ですから。
紅月と、おそらく常盤先輩には話が伝わっていなかったようですね。紅月は学園封鎖の件を何も知りませんでした。
それを僕たちの責任であるかのように言うのは心外ですね。普段から教室にも顔を出さないのはあの二人の方ですよ。おそらく学園封鎖に関して、空白組の一員として協力しろと言っても二人は拒否するでしょう。だからと言って、話し合いもせずに仲間外れにするのも褒められたものではありません。生徒会の職務を遂行する義務は依然としてお二方にもありますからね。
僕はですね、ちょうど常盤先輩のところに吾妻さんを送り届けた帰りなのですよ。常盤先輩は学園が封鎖されたと知るや否や、ショッピングモールを占拠しました。と言っても、先輩の言い分では食料を独占しようというのではなく、そのような輩が現れる前に食料を確保して、状況に応じて生徒に分配するとのことです。吾妻さんは現在、常盤先輩へ生徒会に協力するよう交渉しています。しかし要求に応じないようでしたら、相応の処罰を受けてもらいます。瀧川さんの方にも交渉人が行っているはずです。三年生の清美先輩がその役目を引き受けました。
吾妻先輩と清美先輩は僕の記憶が確かならば、生徒会での役職は遊撃です。それはつまり、そもそも交渉をする気がなく、はなから二人を抹消するつもり、ということですよね。
隠しても仕方がないことですね。包み隠さず言いましょう。二人が素直に理事会の傘下に下る性格をしていないことは理解しております。だからと言って、易々と生徒会の義務を免除するわけにもいかないのですよ。これは手順です。交渉の場を設けて、その上で決裂したならば、処罰を受けてもらう。僕は交渉の場を設ける役割を仰せつかりました。常盤先輩は話し合いに入る前に、こちらの顔を見るや否や攻撃を仕掛けてくる可能性がありましたからね。
守門くん、それは本当なの? だったら紅月ちゃんは今頃、清美先輩ともめごと(ここで綴は殺し合いという言葉を避けた)になってるかもしれないの?
頼んでも無理だろうと思うけれど、今は紅月の心配をしている場合ではないよ。僕たちが助けに行ったところで、空白組同士の対決に入り込めるわけがない。そんなことをしたら返り討ちだよ。今はこいつからできるだけ情報を聞き出すんだ。
申し訳ありませんが、銀太くんが満足するほどのことを僕は教えられないと思いますよ。僕が情報を出し惜しむという意味ではありません。そもそも生徒会にも大したことを伝えられていないのですよ。上からは封鎖の目的をペストの隔離だと言われています。生徒会長は生徒たちにそのまま伝えました。しかし僕たちを含めて、それが事実だとは信じておりません。
けれどもですね、封鎖の本当の目的は何なのかという話になると、僕たちにもまったく答えられないんですよ。教えられていないんです。僕たちは上からの指示には従順にうんうんと頷くだけで、こちらから質問する権利は与えられていないんです。
それよりも綴さん、僕からお願いしたいことがあります。お手を出してください。
 恒明は銀太との話を勝手に切り上げると、銀太を回り込んで背後にいる綴の足元に屈みこんだ。恒明が右手を差し出すと、綴は困惑した表情を浮かべながらもその手の上に自分の手を乗せた。
僕とあなたは生徒側と理事会側という敵対する二つの立場に引き離されてしまいました。それでも僕はあなたをお守りするとここに誓います。僕の力では綴さんを生徒会に特例として引き入れるなんてことはできません。けれどもあなたが危機に陥ったとき、この身が火に焼かれていようと、身を引き裂かれる運命になるとわかっていても、必ずはせ参じます。誓いの証にこの御手に口づけをさせてください。
 しかし恒明が綴の手に口づけをする前に、銀太は姉の手を引き離した。そしてそのまま姉の手を掴んだまま踵を返した。平然として立ち上がり膝についた土埃を払っている背後の恒明に向かって、銀太は言った。
お姉ちゃんは守門先輩が守らなくとも、僕が守るから安心してください。
 姉弟は来た道をそのまま引き返して寮まで戻った。銀太は紅月と綴の部屋で戦闘になっている可能性も考え、しばらく遠巻きに眺めて寮が静かであることを確認してから中に入った。念のために秋姫の無事を確認するために、部屋を訪ねたが、いくらノックしても返事がなかった。しかし確かに部屋の中で何かが身じろぎする音が聞こえたので、銀太は『緑の家』を発動して、鋏でドアを刳り貫き、中の鍵を開けてから穴を塞いだ。秋姫は朝食に出てきたときには私服に着替えていたが、今は馴染んで萎れた桃色のパジャマに同じ色のナイトキャップを着直し、二度寝をしていた。部屋の中から聞こえた音は秋姫がベッドで寝返りを打つ音だった。姉弟がベッドの脇に立ち、幼気を残した寝顔を見つめていると、気配を察したのか秋姫は薄く目を開けたが、寝ぼけているのか驚いた様子はなかった。銀太は余計な不安を与えないために紅月の行方を尋ねることはせず、勝手に入ったことを詫びて、昼食の時間までには起きるようにつけ加えてから部屋を出た。
 勉強をしている紅月がいるはずの部屋には誰もいなかった。銀太は部屋にいても考えが堂々巡りをして焦燥の火に枯木をくべるだけだろうと思ったので、姉にもう少し散歩をしたいと提案した。綴はしばらく逡巡してたが、弟にほとんど引っ張られる形で部屋を出た。
紅月ちゃんを探さなくていいの? 生徒会の人と会っているんでしょう?
 寮を出て再び学園の敷地内を歩き回っていると、綴は何度も同じ質問を繰り返した。銀太は姉を安心させるためにずっと手を繋いでいた。不用意に紅月の助けに行くこともできない焦りから黙り込んでいたが、綴が何度も同じことを聞くため、いい加減に煩わしくなってきたせいで口を開いた。
紅月が生徒会から協力してくれって言われて、素直にうんと頷くやつだとは僕も思わない。例え、食料や安全を保障されるとしても。十中八九、どこかで清美先輩と戦っていると考えていい。けれどもさっきも言ったとおり、僕たちがその場に居合わせても返り討ちにされるだけだ。
それに紅月の能力はタイマンじゃないと真価を発揮できないからな。今はこちらから探しに行くより、無事危機を脱した紅月が僕たちを見つけてくれるのを待つべきだ。紅月が清美先輩をどうにか対処するのを祈ろう。
 綴は弟の言葉に何か言おうとしたが、反駁もできないことに思い至り、高く立てた襟の中に顔を隠してしまった。
この際だから言っておくけど、お姉ちゃんは誰にでもいい顔をし過ぎだ。いわゆる八方美人だな。これまであまり口出しはしなかったが、今は僕たちと守門先輩は敵同士なんだ。さっきみたいに安易に手を重ねる真似をしないでほしい。
 銀太は自分でもこの状況で恒明のことを引き合いに出すのは八つ当たりに他ならないとわかっていた。しかし幼馴染としての信頼があっても、まだまだ短い人生ながら長年付き添った相方の性格を十分に理解している自負があっても(あるいは紅月には気まぐれなところがあると熟知しているからこそ)、紅月がこちらを裏切って生徒会に協力するかもしれないという懸念を振り払うことがどうしてもできなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

第二部「偉大なる二十世紀」

忍谷夕吉(しのびたにゆうきち)
第二部の主人公。
賭博師を生業としている。コンプレックスを保持していない無能力者。26歳。
千ヶ谷千陰と組んで、封鎖された東京で成り上がることを計画している。
性格は皮肉屋だが、実業的。
職業柄、変わった特技を多く隠し持っている。

千ヶ谷千陰(ちがやちかげ)

第二部のメインヒロイン。
日本でも有数の名家、千ヶ谷家の長女。23歳。
生粋のお嬢様なのだが、普段着がジャージ(光文学園時代のもの)、主食がラーメン二郎など、俗っぽい。
近寄りがたい兄と可愛くて仕方のない妹がいる。
意外にも本職はハッカー。

シンボル:???

コンプレックス:『カラマーゾフの兄弟』

 ???

千ヶ谷絹人(ちがやきぬひと)

千ヶ谷家の現当主。
千一郎、千陰、千五百の父。
現在の政治情勢は千ヶ谷派と宇津木派に分かれている。
忍谷を千陰の恋人ではないかと疑っている。

シンボル:腕時計
コンプレックス:『ガルガンチュアとパンタグリュエル』
 対象を30分以内のある時点にリセットする。
 本人は物理的な状態だけで、記憶や感情など精神的な状態はリセットできないと言っているが……?

千ヶ谷千一郎(ちがやせんいちろう)

千ヶ谷家の長兄。千陰と千五百の兄。26歳。
次期千ヶ谷家当主。
神経質で気難しい。そのために千陰からは苦手意識を持たれている。

シンボル:???
コンプレックス:「???」

千ヶ谷千五百(ちがやちいほ)

千ヶ谷家の次女。
第二部の時点では行方不明になっている。
千陰は妹を探し出すために忍谷と手を組んでいる。

黒塗ほのか(くろぬりほのか)

日本政府に保護されていた謎の少女。17歳。
「未来を見通す」コンプレックスを保持している。
この能力により、2000年問題を予見していた。
忍谷と千陰のことはなぜか出会う前から知っていた。
はたしてその正体は……?

シンボル:???
コンプレックス:「???」

赤藤詩音(あかふじしおん)

暗殺を生業としている。千陰の大親友。23歳。
光文学園特別科クラスに在籍していたころは、千陰とコンビを組んでいた。
しかし金さえ積めば仕事を引き受ける性格で、政治的には千ヶ谷派、宇津木派のどちらにも属していない。
名前からわかるとおり、第一部に登場した赤藤梨音の実姉。

シンボル:窓
コンプレックス:『月は無慈悲な夜の女王』
 手で触れた場所に窓を作る。
 その窓は通常の窓と同じ性質を持つ。つまり開閉ができ、向こう側が見通せ、ガラスは壊れやすい。

源次郎助(みなもとじろすけ)

上野にある国内最大の国営カジノのオーナー(所有者)。28歳。
本職は権力者向けの金貸し。
商売人として、天才的な能力を持っている。
政治的には宇津木派に寄っている。
権力者のあいだで、「ゲームマスター」と呼ばれるほどあらゆるゲームに精通している。

シンボル:鎖

コンプレックス:『バック・イン・ブラック』

 対象との契約を遵守させる。具体的には対象が契約を違反した場合、損害を与える。その損害の内容は対象の「同意」によって決定する。

五十鈴凪子(いすずなぎこ)


源の右腕。24歳。

堅物で、軍人のような口調をしている。

二色ほどではないが、戦闘能力に長けており、荒事を頼まれることもある。

拳銃を得物とする。


シンボル:風船

コンプレックス:『クロイツェル・ソナタ』

 シンボルの風船は複数出現する。風船に触れた物体は別の風船に転移する。

二色廻(にしきめぐる)

源の側近。源は「秘書のようなもの」と言っている。
無口で無表情。しかし非常に礼儀正しい。意外に気さくらしい。
忍谷はその体つきから、一目で「戦闘タイプ」の人間と見抜いた。

本文ではスキンヘッドになっているのですが、きゃらふとさんの仕様上、再現できなかったので、頃合を見て、キャラデザを作り直します。

シンボル:???
コンプレックス:「???」

散歩桐雄(さんぽきりお)

上野にある国内最大の国営カジノの経営者。源から業務を委託されている形となる。
現在は経営者として働いているが、ディーラーとしての腕前はまだ落ちていない。
コンプレックスを保持しているかは不明。

森重義生(もりしげよしお)


日本政府に所属する男。立場は源よりも上となる。

日本政府と光文学園の仲介役となるために、源のもとに派遣されてきた。

異常なほどに厚着をしている。

第一部にて秋姫と接触していた男その人。


シンボル:ポーン(黒)

コンプレックス:『ミリオンダラー・ベイビー』

 対象の物体の価値を誤認をさせる。ただし、価値の変動や能力の範囲はミクロなものである。

宇津木将臣(うつぎまさおみ)

大日本帝国第八十六代内閣総理大臣。
千ヶ谷家の最大の政敵。
東京の封鎖政策の主導者。

シンボル:???
コンプレックス:「???」

猫松喜久二(ねこまつきくじ)

権力者の一人。千陰は性格が悪いと言っている。
元大手薬品会社の重役であり、現在は大手銀行に天下りしている。
コンプレックスを持っていない無能力者。

切田善嗣(せったよしつぐ)

宇津木派の人間に雇われた刺客。
絹人の暗殺を目論見るが、千一郎の機転により防がれた。
その後、忍谷と戦闘になる。

シンボル:スプーン
コンプレックス:『バナナフィッシュにうってつけの日』
 砂糖を自由自在に操る。しかし操れるのは乾いた砂糖だけであり、ジュースに溶解しているものなどは操ることができない。

間宮蘖(まみやひこばえ)

宇津木派に雇われた暗殺者。
宇津木側の人間の依頼ばかり引き受けるため、「宇津木の犬」の汚名を着せられている。
しかし暗殺者としての実力は詩音と拮抗する。
オークションのさいには司会を務めていた。

シンボル:???
コンプレックス:『モダン・タイムス』
 自分の身体を軟化する。これにより関節を無視する形で身体を動かせるようになる。
 柔らかくなった身体の痛覚は通常のときと変わらない。

園城ゆゑ(そのしろゆゑ)


光文学園二年十二組の担任教師。28歳。

学園に封鎖線が敷かれるなか、コンプレックスを用いて自力で脱出した。

実は葛籠未造が誘拐した子供たち〈チルドレン〉の一人だった。


シンボル:人体の一部

コンプレックス:『アナベル・リー』

 能力の範囲内の任意の場所に目や口など自分の身体の部品を複製する。

葛籠未造(つづらみぞう)


戦後日本最悪の犯罪者と呼ばれる男。

表向きは死刑の確定から執行まで史上最短で絞首刑に処されたことになっている。

しかし実際は日本政府の庇護下のもと、東京のどこかで生き延びている。

葛籠の犯した犯罪の一つに稀有なコンプレックスを持つ子供を誘拐し、養育していた、というものがある。なぜこのようなことを行っていたのかは不明。

ほのかの予言によると、葛籠が次の「世界の王」である。

第一部「ペストの時代の愛」

大室銀太(おおむろぎんた)

第一部の主人公。
国立光文学園高等部一年八組所属。15歳。
中性的な顔立ちで少女と間違えられることもあるが、性格は偏執的かつ執念深い。
これまで一般市民として生きてきたために戦闘の経験が一切ない。それゆえ学園の封鎖を乗り切るための戦闘では変則的な戦法に頼らざるを得ない。

シンボル:鋏
第一のコンプレックス:『緑の家』
 シンボルの鋏はその強度に関係なく物体を切断する。そのとき物体の連続性は保たれたままになる。切断面を合わせれば、分断したものは再び接合する。
第二のコンプレックス:『石蹴り遊び』
 『緑の家』によって切断した異なる物質を接合する。接合された物体は元の二つの物質の性質が混ざり合う。時間の経過とともに、物質は元の物質のどちらかの性質へと帰着する。
第三のコンプレックス:『百年の孤独』
 シンボルである鋏に「意思」を与える。鋏はその意思を遂行するように自動駆動するようになる。あくまで鋏は意思を与えられただけであり、生物化していたり、能力者が操作したりしているわけではない。
 鋏の移動のさいは床や壁など、物体を切り裂きながらでなければならない。

瀧川紅月(たきがわべにづき)

第一部のメインヒロイン。
大室姉弟の幼馴染。
七人しか在籍していない特別科クラスに唯一の一年生として所属している。生徒会庶務兼任。16歳。
男勝りで、非常に野蛮な言動が目立つ。その反面、緊急事態でも冷静に対処するだけの胆力と機知を持ち合わせている。

シンボル:ハンドベル
第一のコンプレックス:『太陽の塔』
 能力の範囲内にある最も速度の速い物体を爆破する。このとき、能力の対象には能力者自身も含まれる。
第二のコンプレックス:『明日の神話』
 能力の範囲内にある一定の速度の超えたすべての物体を爆破する。この一定の速度はスペクトルによって設定される。

大室綴(おおむろつづり)

銀太の姉。紅月にとっても姉貴分である。
国立光文学園高等部二年十二組(芸術科クラス)所属。17歳。
自分にも他人にも甘く、銀太と紅月の二人を溺愛している。
一人称が「お姉ちゃん」。
文学に精通しており、編纂者を志している。

シンボル:豆本
コンプレックス:『バベルの図書館』
 シンボルの豆本は無限の頁を持ち、際限なく情報を書き込める。文章の記入・消去は念写により行う。このコンプレックスはあくまで「無限に情報を記録する」能力であり、「頁を入れ替えて情報を整理する」能力はない。

埜切秋姫(のぎりあきひめ)

綴のクラスメートであり、親友。銀太とは初めて会ったときから友達以上、恋人未満の関係。
国立光文学園高等部二年十二組(芸術科クラス)所属。16歳。
気弱な性格であり、自分の意見をなかなか出せない。この性格は自分のコンプレックスが他人のものよりも実用性に欠けることと無関係ではない。
癖毛を気にしており、外出するときは必ず帽子を被る。そのために帽子集めも趣味になっている。

シンボル:???
コンプレックス:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
 手で触れた小さな傷を塞ぐ。

須磨楓子(すまかえでこ)

紅月のもう一人の親友。
国立光文学園高等部一年六組所属。16歳。
紅月の「唯一」の親友を名乗っているため、銀太とは犬猿の仲。
高飛車で傲慢だが、これは自分の実力への自信の表れである。実際に普通科クラスの中ではトップクラスの成績を誇る。
学園封鎖後はショッピングモールにて幹部の一人になっている。

シンボル:皮手袋
コンプレックス:『茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)』
 シンボルをつけた拳で殴られた人間はその部位を認識できなくなる。攻撃された部位は透明に見え、同時にその機能も失う。

守門恒明(しゅもんつねあき)

七人いる特別科クラスの一人。生徒会書記兼任。学年は二学年に当たる。17歳。
綴に一目惚れして以来、告白を繰り返している。そのために銀太からは目の仇にされている。
お坊ちゃんであり、物腰が柔らかい反面、ナルシストな言動が目立つ。しかし特別科クラスに所属している以上、頭脳や戦闘の実力は折り紙つき。

シンボル:金平糖
コンプレックス:『重力の虹』
 空中に浮いている物体を垂直に落下させる。このときの落下の速度は少なからず銃弾の速度を超える。

常盤七星(ときわななほし)

特別科クラスの一人。生徒会会計兼任。学年は三学年に当たる。18歳。
紅月と同様、生徒会の義務を放棄しているため、クラスメートからは問題児として見られている。
学園封鎖とともにショッピングモールを制圧し、ここに篭城する。その後ショッピングモールの管理人として、学園内の物資と人材を独占している。

シンボル:注射器
コンプレックス:『美しき水車小屋の娘』
 自分の血液を混ぜた液体を操る。このとき、必要な血液の量は操る液体の体積に比例する。そのため、自分が貧血になるほどの量の液体は操ることができない。

犬童影千代(いぬどうかげちよ)

ショッピングモールの幹部の一人。医療品や生活用品の管理を担っている。
国立光文学園高等部三年二組所属。18歳。
物腰の柔らかい好青年。しかし七星がショッピングモール内で唯一コンプレックスを把握していない人間でもある。そのため七星からは「油断のならない男」として見られている。

シンボル:水銀温度計
コンプレックス:『パルプ・フィクション』
 自分よりも高いところにいる生物の体温を上げ、自分よりも低いところにいる生物の体温を下げる。
 このときの変化率は能力者との上下の距離が離れているほど大きくなる。

赤藤梨音(あかふじりおん)

ショッピングモールの住人の一人。地下倉庫(監房として用いている)の管理を担っている。
国立光文学園高等部二年五組所属。17歳。
幹部ではないが、貴重なコンプレックスを持っているために同等の発言権を持つ。本人曰く、人を閉じ込めるのに適したコンプレックス。
間延びした口調のため、ややとろそうに見える。しかし七星や犬童への意見は鋭く、意外にも人をよく見ている。

シンボル:鍵
コンプレックス:『夏への扉』
 能力の範囲内にある、場所から場所を区切るもの(扉や窓など)に、可能な限り通行の妨害をさせる。
 具体的には、それらが固定されたように開きにくくなり、無理やりこじ開けても即座に閉まるようになる。

桑折良蔵(こおりりょうぞう)

特別科クラスの一人。生徒会会長兼任。学年は三学年に当たる。18歳。
精悍な顔つきをした巨漢。生徒会長という立場も相まって一般クラスの生徒たちから恐れられているが、クラスメート曰く、その性格は寛容。
互いに反目しがちな特別科クラスの人間には珍しく、クラスメートを家族だと考えている(特別科クラスから離反した紅月と七星も例外ではない)。生徒会長である自分はその家長だという自負がある。

シンボル:磁石
コンプレックス:『ペイント・イット・ブラック』
 シンボルを中心にして、同じ物質を集める。このときに物質が集まる速度は、その途中にあったものを破壊するほど速い。
 シンボルの磁石は同時に二個以上具現化することもできる。

立畑照葉(たてはたてりは)

特別科クラスの一人。生徒会副会長兼任。学年は三学年にあたる。17歳。
端正な顔立ちだが、男口調であり、傍若無人な態度が目立つ。
紅月と七星の死刑宣告の撤回を報告するために、銀太たちを訪ねてくる。
見た目に合わず、作中でも珍しい、武術を極めた武闘派。

技術:「炸空術」(さっくうじゅつ)
 手を打ち鳴らすことによって、空気を破裂させ、真空により対象を切断する。これはコンプレックスではなく、純粋な技術。銀太は剣術の系統に入る武術と見た。
シンボル:モノクル
コンプレックス:『鎖に繋がれた犬のダイナミズム』
 モノクルを嵌めた左目では、すべてのものが静止して見える。つまり能力者は左目で一瞬一瞬が止まった世界を見て、右目で流れている世界を見ていることになる。

清美一暁(きよみかずあき)

特別科クラスの一人。生徒会遊撃兼任。学年は三学年に当たる。18歳。
細身だが、非常な長身。髪型は常にオールバックにしている。
性格は慇懃で、馬鹿に思えるほど丁寧な口調で話す。
生徒会の職務を全うしようとしない紅月の交渉役を引き受ける。

シンボル:鎖帷子
コンプレックス:『私の名は赤』
 能力者に与えられるダメージ、もしくは能力者が与えるダメージの位置を別の場所に転移させる。

吾妻奈純(あずまなずみ)

特別科クラスの一人。生徒会遊撃兼任。学年は二学年に当たる。16歳。
緊急集会のさい、反抗的な態度を取った男子生徒二名を射殺する。
恒明からは「野蛮な性格」と評される。
生徒会の職務を全うしようとしない七星の交渉役を引き受ける。

シンボル:二丁の散弾銃
コンプレックス:『ライト・マイ・ファイア』

天目小桜(てんめこざくら)

ショッピングモールの住人の一人。光文学園一年普通科。15歳。
犬童をリーダーとした、七星に対する反勢力の一人でもある。
そのコンプレックスを使い、ショッピングモールの住人を暗殺する。
正体を暴かれたさい、仲間の情報を流して命乞いするが、七星に拒否され殺害される。

シンボル:拳銃
コンプレックス:『若きウェルテルの悩み』
 シンボルは驚いた人間に憑依する。その人間がもう一度驚いたとき、身体を乗っ取り、拳銃自殺させる。
 このとき、周りにいる人間の中で最も早く驚いた人間に改めて憑依する。

也則允彦(なりのりまさひこ)

ショッピングモールの住人の一人。光文学園三年六組所属。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
プロレス同好会会長。
銀太はその戦闘能力を高く買ったが、紅月は「馬鹿」と一蹴した。

シンボル:プロレスマスク
コンプレックス:『ボーン・トゥ・ラン』
 身体に触れたものを吸着する。
 格闘技の固め技はほとんどの場合、抜け出す技術も見つけられている。しかしこの能力と組み合わせれば、相性の悪いコンプレックスを持っていない限り、抜け出すことは不可能になる。

毒島慈(ぶすじまめぐむ)

ショッピングモールの住人の一人。光文学園一年八組所属。銀太とはクラスメートである。16歳。
ショッピングモールの反勢力チームの一人。
醜男であり、女性に恨みを持っている。しかし銀太は見た目以上に卑屈な性格に問題があると言っている。

シンボル:???
コンプレックス:『目=気球』
 自分に対して嫌悪した人間の大腸にサナダムシのように寄生する。
 能力者は寄生主から少しずつ栄養を奪い、三日ほどで死に至らしめる。そのあいだ、人質を取っている状態にもなる。

一重柳子(ひとえりゅうこ)

ショッピングモールの住人の一人。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
殲滅戦が始まってからも、自分のコンプレックスを使って周りの人間を欺き、フードコートでくつろいでいた。
身なりを異様に気にし、学園封鎖の中でも衣服の手入れをかかさない。

シンボル:メモ帳
コンプレックス:『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』
 メモ帳を読んだ人間は、そこに書かれた言葉を言うことができなくなる。その言葉を言おうとした場合、言い間違えるようになる。このとき、その人間は自分が別の言葉を言っていることに気がつかない。

八木沼篤(やぎぬまあつし)

ショッピングモールの住人の一人。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
殲滅戦が始まると同時にショッピングモールから脱出を試みるが、赤藤の『夏への扉』の能力を知らなかったために自動ドアに挟まれ、身動きが取れなくなる。
その後、楓子により自動ドアから引きずり出される。楓子に奇襲をかけるも、『茹でた隠元豆のある柔らかい構造(内乱の予感)』によって返り討ちにされる。
コンプレックスを保持しているが、詳細は不明。

時谷圭吾(ときやけいご)

ショッピングモールの住人の一人。
ショッピングモールの反勢力チームの一人でもある。
赤藤の『夏への扉』により、眼鏡屋に閉じ込められる。そのため、そもそも殲滅戦が始まったことを知らなかった。
銀太の能力で眼鏡屋から救出されるが、同時にその場にいた七星から死刑宣告を受ける。命乞いをするが、七星に拒絶され首を刎ねられる。
コンプレックスを保持しているが、詳細は不明。

殺人犯

第一部のラスボス。
生徒会暗殺。
大室綴、守門恒明、常盤七星、犬童影千代を殺害した。

シンボル:バタフライナイフ
第一のコンプレックス:『フルメタル・ジャケット』
 シンボルでつけた傷を自由に開閉する。この能力は生物にも無生物にも有効。
第二のコンプレックス:『地獄の黙示録』
 シンボルでつけた傷を自由に移動させる。このときの移動速度は人間が全速力で走るよりも速い。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色