ロレッタ

文字数 1,268文字

私はどうしても買っておきたいとボールペンとノートをコンビニに買いに行こうとしていた。
時刻は23:30。
別にそんなに危ない目に遭うワケない。
そんな過信がとてつもない闇が待っていたとも思わずに。

コンビニ近くのマンションの物陰から覆面姿の男2人が私の前に立ち塞がった。
「お嬢ちゃん、めっちゃキレイな顔してるね」
「へへ、俺らの相手をしないって言うならさぁその顔に一生残らないキズ残しちまうぜぇ?」

そう言いながらとても力強い腕力で私をマンションの外階段まで連れていき私に猿ぐつわをかませて男たちは欲望のままに色々ムリヤリした。

頭が真っ白になって、一気に世界が邪悪に染まった。
こんなのウソ。
そう思い込みたいのに、男たちが去った後にシクシク痛む体の痛みでこれは悪夢なんかじゃないんだと確認させられる。

どうやって家に帰ったかもわからない。

3日寝れない日が続いて、ひたすら何週間か家族の心配の声も聞けずにひきこもり続けた。

でも、私はあることを思いついて高校に行くことを決めた。

成績優秀で特に問題を起こしたこともない私に職員室の先生が理科室のカギを渡してくれるのは当然だった。
私は理科室の扉を開けカバンから硫化水素を発生させる洗剤2つを用意すると混ぜていこうとした。

その時。
扉が強く開いた。
誰かと思ったら幼なじみの豹馬だった。
どうやら久々に登校した私の後をつけていたみたいだった。

「な、何やってんだ!  そ、それは危ない洗剤だろ!」
「ねえ、お願い死なせて? 幼なじみの豹馬だからさ特別に言うけどね私学校に来なくなった日に男たちにいきなり性的に襲われたんだ。
女の子なら口にしたくないようなひどい目に遭わされたんだ……
もう私に生きてる資格なんてないの」

豹馬は走って私に近づいてくるとガバッと抱きしめてきた。
「おい、やめてくれよ…。笑可に死なれたらオレどうしたらいいんだよ。
お前のことずっと好きだったんだよ。何があったって笑可のこと守りたいって思い続けてきたんだよ!」

私は思わぬ告白をされて、もっと早く言ってくれれば良かったのにと正直に思った。
「豹馬くんに抱かれるような体でもなくなっちゃったんだ。消えたいの。お願い洗剤を混ぜさせて」

「やらせる訳ねえよ! 笑可、今死んだらダメだ。オレは笑可!君がいないとさ、つまんねんだよ。だからさバカなことはやめるんだ」

私はもうどうしたらいいかわからなくなって、えんえんと泣いてしまった。
「笑可、君が必要なんだ。オレがぜったい生きてて後悔しないような景色見せる!」

結局、理科室のカギを大人しく返して洗剤は1つずつ豹馬が没収してその日は終わった。
私を家まで送る豹馬は何度も「死ぬなよ!?死ぬな」と繰り返していた。

普段は河村隆一の歌のモノマネとかコウメ太夫のモノマネとかゴー☆ジャスのモノマネとかをして友達を笑わせているひょうきんな豹馬らしくないシリアスな顔だった。

私の手を強く握って、ずっと離さなかった。
男の人は怖くなってしまったのに、彼だけは私とずっと子供の頃から同じ時間を過ごしてきたせいか繋いでたいって思わされた。
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