プロローグ

文字数 1,097文字

私には好きな人がいる。

彼は優しくて笑顔が素敵で、勉強しかできない私にも話しかけてくれる。



オレには好きな奴がいる。

あいつはオレと違って、運動がそこまでできるわけじゃないが、男勝りなオレを女として見てくれる。



ボクには好きな人がいる。

彼はボクの趣味に付き合ってくれるとてもいい人だ。



某学校、昼休み。

「おーい、A男! 昼飯行こうぜー!」

A男と呼ばれた少年は振り向くと、「ごめん」と手を合わせた。

「今日、先約があって」

「そうなのか? まあいいけどよ」

A男を呼んだZ男は、「後でな」と食堂に走っていった。

そしてA男はというと、カフェルームへと向かう。

「お待たせ」

カフェルームについたA男が声を掛けたその先には……。

「ど、どうも……」

「お、おう……」

「や、やあ……」

女子3人が戸惑ったように座っていた。

(A男くんは優しいけど……)

(これがなあ……)

(「女子は友達と一緒にいることが多いよね」ってねえ……)、

「あれ、どうかした?」

場の空気を読まず、A男は笑顔で問いかける。

「い、いえ!」

「なんでもねえよ!」

「楽しみにしてただけだよ!」

3人は息ぴったりで答え返した。

「そう? よかった!」

A男は笑顔で3人のいる席の椅子に腰かけた。



「A男くん、これをどうぞ」

勉強が得意なB子が、A男に卵焼きを勧める。

「わあ、ありがとう!」

A男は笑顔で卵焼きを受け取り食べる。B子が好きなA男の笑顔。

「な、なあ。A男。オレのも食うか?」

運動が得意で男勝りなC子が、ウインナーを差し出す。ちょっと不器用に切られたタコ型ウインナー。

「ありがとう! タコ型可愛いね!」

「お、おう」

「じゃあ、ボクのも!」

ボクっ子でA男と趣味が合うD子も、自分の弁当からミートボールを差し出した。

「D子もありがとう!」

A男は3人のおかずを貰い笑顔でそれらを食べている。

3人の間にあるライバル心など気づかずに。



「はあ!? 女子3人と弁当を食べてたぁ!?」

放課後、A男はZ男に呆れられていた。

「お前なあ……。普通気づくだろ……」

「何を?」

A男は本当に何も知らない様子でZ男に訊き返した。

「……いや、もういい俺が悪かった。だがなA男!」

Z男はA男にビシッと指をさすと言った。

「最終的に選ぶのは一人ってことを忘れるなよ!」

そう言うとZ男は鞄を取り、先に教室を出ていく。

「選ぶのは、一人……」

A男はその言葉を呟くのだった。



家に帰ったA男はZ男の言葉を考えていた。

「ねえ、母さん」

悩んだ結果、A男は母親に相談してみることにする。

「そうねA男。それはとても大事なことよ。今もだけど将来にとってもね。あなたが今、大事に思ってることが答えになるんじゃないかしら?」

「僕は……」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み