第55話  俺だけのワンダーワールド 3

エピソード文字数 3,896文字


 ※


 白竹さんと共に駅前の喫茶店へと入る。

 二人用の小さいテーブルに座ると、どちらもホットのコーヒーを頼んだ。



でも黒澤君がこっちの人だとは思わなかったでし
高校では完全に気配消してますからね


 他愛も無い会話から、今度はアニメの話題になる。


 最初は誰でも知ってるアニメから。これはもう当たり前だ。初っ端から飛ばしてしまうと、知らないかも知れないし、引かれてしまう可能性もある。



 だが、どちらも譲らす、次第にマニアックなアニメの話題になってゆくが、逆に知ってる話題になると、テンションの上昇が桁外れになってくる。



 普段誰にも分からないような話も、普通に返してくる白竹さんに感動しながら、会話は途切れることなく続いた。



 

 会話は進む。アニメの話が終わると、今度は同人関係だ。


 事前にビギナーだと告知すると、白竹さんは「えへへ」と顔が蕩けていた。

 つまりは、かなりの自信がおありのようで。


 間違えて欲しくないのは、俺はマジでビギナーなのだ。

 それ以上はあまり求めていないのが本音である。


 どちらかと言うと人気アニメのスピンオフっぽい話が好きで、今日の新刊もそんな感じのライト部門である。


 もちろん購入した本に十八禁など入ってはいない。



 さて。白竹さんは今日購入した同人誌の表紙を見せてくれる。

 うん。分からんものも含まれるが、ある程度は把握していた。


これはちょっと……ね? 内緒ですよぉ。


 あぁ。男が男をどうたらこうたら。

 アリですよ白竹さん。何も恥ずかしがる事はありません。


 これは俗に言う乙女ゲーのキャラで、アルフレッドとニコラの二人である。


 ただ……癒し系ショタキャラであるニコラさんが攻めなんですね。

 表紙の絵でんなんとなく分かります。俺様アルフレッドが情けねー顔になってるし。


 ん? 俺がなんで乙女ゲーを知っているかと言うと……

 中学の頃、女子生徒の話題作りの為に俺もやってたんだよ。


 勿論黒歴史だけど、俺の小説にも台詞やら描写やら色々とパクっ……参考にさせて貰ってたりしてるので、俺自身、男同士のホニャララにはあまり抵抗がない方だと思う。

 

 

全然いいっすよ。好きなものはしょうがありませんし。


うふふふふっ。

じゃあ黒澤くんは? 何か卑猥なシーンの入った本は購入してないのですか?


何も恥ずかしがることはございませぬ

ああっ。残念ですが薄い本は購入してませんね。

俺なんてまだまだビギナーですから。

 大丈夫だ。別に怪しい同人誌は購入していないので全部彼女に見せる。

 

 恥ずかしがる事は無い。向こうの方がよっぽど恥ずかしいから。



 すると白竹さんの方が恥ずかしそうな表情に変化するのだ。

 何故? 普通の同人誌なのに?

くろしゃわくん。その人の……好きなのです?
はい……この人のシリーズ好きなんです。絵が凄くストライクで
しょおなんでしか?
しょおなんでちゅ
 何かそんな恥ずかしい顔されると、こっちまで恥ずかしくなります。
うぅ……うぬぬぅ……うにゅう
えっ? どうしたんですか?

 白竹さんは凄い顔だった。

 これまでに見た事のない変顔である。



 苦しいのか、恥ずかしいのか、怒ってるのか全然分からない。何かを我慢してるというか、口元がごにょごにょ動いてやがる。



 な、なんだ。なんなんだ?

 何か俺。まずい事言ったのか?

いやあの、この人の絵が本当に好きで……何か変でした?
ふにゅ! ふにゅるる!

 解読不能だ。そう思った瞬間、急にテーブルに両手をつけた白竹さんは、俺に顔を接近させると、じっと見つめられる。

あのね。黒澤君。絶対内緒でお願いします
は、はい! 内緒。全然内緒にします
めちゃくちゃ内緒なのですっ!
はいっめちゃくちゃ内緒にしますっ!
めっためた内緒の。トップシークレットですっ!

あひっ! 分かりました!

めっためた内緒にしますっ! トップシークレットの国家機密ですっ!

それ。それ書いてるの。私です。ミーです
え? は、はい? 
その絵書いてる人。私。だよ?
え? えぇ? えぇぇ~~~~!
マジですか?

はひ! マジです。本気と書いてマジなのでしっ!


みゅうみゅうは私だよ。

 

 ※


 作者名みゅうみゅう。その中の人が白竹さんだと?

 


ちょ。とんでもなく有名絵師さんじゃないですか!

あひっ! 色々書いてますっ!


 ちょっとマジで洒落にならん!

 みゅうみゅうさんはネットでも滅茶苦茶有名人だぞ。



 神絵師とも称される実力を持ち、主に人気アニメのスピンオフを描いてる、この業界でも超有名な人が……白竹さんだと?


ねぇねぇ。じゃあ……もう一つの私の名前はご存知ですか?
えっと。申し訳ありませんが、知ってます
はぐぅ! しょ。しょれわ……
言いません。言いませんって! 大丈夫です。
しかもしかもしかも。俺は知っている。 この人の本業は、エロ同人にある事を。

俺……マジで感動です。

まさかあの……みゅうみゅうさんだっただなんて。


あふ……じゃあ私の卑猥なシーンまでご存知で……

ぶしゃーも見られ……

 褒めたつもりが、さっきからテンション駄々下がりの白竹さん。


 「やっぱ言うんじゃなかった」的な言葉が漏れると、俺としては「絶対秘密にします」と、

 そう言うしか無かった。


 


あひぃ……やっぱり恥ずかしいでし……

全部見られてるかと思うと、穴があったら入りたいですっ

 あぁっ。とうとう下を向いてしまった。



 こればかりはどうやって助けていいか分からん。

 俺がいくら内緒にしますと言っても、彼女は恐らく、暴露した事自体に後悔していると思ったのだ。



 何か良い方法はないものか。

 そんな時、俺に一つの案が浮かんだ。

かりました白竹さん。俺も内緒話をはっちゃけましょうか

 マジで見てられないんですよ。

 だから、こちらも……俺だけのワンダーワンドをお教えします。

え。え? なんですか?

 ようやく上を向いてくれた白竹さん。


 まぁ彼女に比べると、色々と格が違うのでプラマイゼロになるとは思えないが、俺にとっては最大級のシークレット発動させていただきます。

俺。実はしがない小説書いたりしてます
ほんと?
あ、あの全然ダメでモグリなレベルですけど
わぁお。どんなの書くんですか?
よし! 食いついた!

えっと……ジャンル的には、超純愛SFというか。

タイムトラベル絡みの話でして

純愛? タイムトラベル?

ちょ、ちょっと読んでみたいです

 いい感じだ。テンションが戻ったぞ。

 それはいいんだが……ついに俺だけのワンダーワールドに、人を招くことになろうとは。

某サイトで投稿してます。あ、でもマジでつまらないと言うか、自己満足で書いてるレベルなので

おしえてください~~! みたい。見たいですぅっ!

隊長。美優はめっちゃ期待しております!


 白竹さんは早速スマホを取り出していた。

 え? 今見るつもりなんですか? 

 うぉっ! それすっげぇ恥ずかしいんですけど。




 俺は観念してタイトルを教える。そして某サイトを告げた瞬間だった。


それ。本当なの?
はい。それで検索すれば出ます
本当なにょ?
本当なにゅでしゅ。もしかして知ってたりします?

 俺は冗談交じりに言っただけだった。

 ぜってー知らねぇって自信をもって言えるレベルなのに、白竹さんの答えは、俺の予想を裏切った。

知ってる。あの……タイムトラベルの話だよね。

未来から来た女の子が主人公で、過去の男性と一緒に同居するお話ですよね?

なんですってっ!

一度目の世界だと二人は結ばれずに終わっちゃったけど、

今度は主人公とヒーローが、二人が出会う前に転生するお話なのですっ!


もう一度やり直して、今度はハッピーエンドを目指すんですよね?

そ、そのとおりっ!

んでんでんで……ちょっとエロいのですよっ! ううん。ちょっと所じゃありません!

身体は少年少女だけど、心は大人だから!


ご、ごふっ!


ちょ。ちょっとまって下さい! 

 まて。いい訳させてくれ! 


 エロいシーンがあるのは白竹さん述べた通り、心は大人だからというのもあるが……

 物語の構成上必要な描写だし……


 いあ。ごめん。

 ちょっとエロい方が見てくれる人が多いかなと、邪な想いから始まり……

 

 脳内がパニくってる間にも、白竹さんは更に追撃してくるのだった。

えっと。感想書いたの。わ、わたしですぅ!

エロシーンもっと増えないかなって……あれ。私なんですぅ!

でぇ~~~~~!
 そしてその感想を元に、俺はもっと卑猥なシーンを考えに考え抜き……

お気に入りは、主人公の親友なのですぅ!


Sっぽい親友にいじめられる主人公大好き!

 俺の小説を知ってて、感想書いてくれてて……

 いやいや。マジ? マジですか白竹さぁん!

あ、あの後どうなるのでし? 最近更新されてないんですよぉ。
待って。白竹さん。今書いてます。めちゃ書いてるんですけど、その前に俺……ぶっ倒れそうです

あの小説の書き手さんが黒澤君だったなんて……ちなみに、前に書いてたファンタジーも見てました。

んで、そっちでも主人公の親友さんがドSだったのですよ

ぐ、ぐほっ!

もはや。これまで……


 やばい、やばすぎる。テンションが変だ。

 何だこれは。新たな攻撃なのか? 新たな感情に芽生えたのか。


 嬉しいのか恥ずかしいのか、何が何だかわかんねぇ!


あはっ。だけど黒澤くん……心配しないで。

私も誰にも言わないですし、大丈夫ですっ!


美優は口チャック凄いからね。

は、はいっ。お願いします!

俺だって。白竹さんのことは誰にも漏らしませんので安心してくださいね。


 二人同時に笑顔になると作戦は成功したと思った。

 

 秘密は暴露してしまったが、そのおかげで白竹さんに笑顔が戻ったのは大きい。

 あんな小説でも、人の役に立てたのは素直に嬉しいと思う。


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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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