第3話(11)

エピソード文字数 2,011文字

「へっ? アイツ、死んだの?」

 二つになったヤツの身体は、液体のようになって消えた。こいつは…………うん。死亡で間違いなさそうだ。

「しかし、一体いつの間に……。レミアかシズナがやったのか……?」
「不躾と重々承知ですが、発言させて頂きます。黒真様は待ち合わせ場所で、虹橋様を介抱されておりますよ」

 ああそっか。手刀で大人しくさせたんだったっけ。

「じゃあ……。これは……?」
「只今のそれは、わたくしめの攻撃でございます。この愛刀・『青姫(あおひめ)』で、悪を斬ったのですよ」
「え、サクがやったの? 少しも動いてないのに?」

 この人はずっと構えたままで、抜刀すらしていない。どういうこと?

「伝説の侍の抜刀術は、輪をかけて速いのです。皆様の動体視力は勿論優れていらっしゃいますが、英雄クラスでないと目視できないのですよ」
「す、するとあれか。アナタはアイツが一瞬だけ間合いに入った瞬間に、刀を抜いてヤツを斬り、再び鞘に入れたの?」

 こんな行動を、一刹那でやったの?

「やはり、色紙様は聡明であらせられます。わたくしめは仰る通り、そのように行動致しました」
「◇Д」

 これには、感覚が麻痺してる俺も愕然となった。
 アータそれ、速いとかいうレベルじゃねーです。死んでるのに動けるって、漫画の世界の出来事じゃないかよ。

「……ウチですら、本気で戦ったら瞬殺ですわね……。心の底から、英雄がいい人でよかったと思いますわ……」

 そうだね、ラミラミさん。ホントのホントのホントに、よかったよ。

「そ、そんなっ、わたくしめはお褒め頂ける人間ではございませんっ。まだまだ未熟でございますよ」

 光速切断侍は、いつものように謙遜。彼女は何度もペコペコし、それが終わると双剣に目を向けた。

「麗平様、無事見つけられたのですね。おめでとうございます」
「黄村クン、サンキューベリーマッチですわ。これでやっと平和になります」

 麗平さんは満面の笑みを浮かべて舌を動かし、にゅむ? 俺とサクを交互に見てきたにゅむ。

「ウチは独りで解決できず、みんなの心身に負担をかけちゃいましたわ。お詫びに何か奢りたいから、これから駅前のケーキ屋に参りませんか?」
「ちょっ、そんなのいいってっ。俺らも地球の住人で、当然のことをしたまでだよ」

 それに、大して役にだってない。そういうのは不要でございますわ。
 っといかん。うつっちゃったよ。

「ううん、ウチはそうしたいんですの。ワガママに付き合ってくださいな」
「ぅーむ…………じゃあ、こうしよう。ケーキは自腹で、コーヒーを奢ってくれるならお言葉に甘えますよ」

 ケーキ購入者は、ブラックとカフェオレが一杯五十円になる。これならオーケーだ。

「キミってやっぱり、他人想いですわね。……うん、じゃあそうしますわ」
「おっし決まりっ。ではレミアとシズナにも伝えて――そうそう、一番の功労者も呼んだ方がいいよね」
「空霧クン、ですわね。そうしてくれると嬉しいですわ」

 即座に、麗平さんも首を縦に振る。
 双剣発見は、ヤツのおかげ。祝う内容は伏せて招待し、好物である『高知県産ユズのシフォンケーキ』を御馳走しよう。

「アイツが死んで、『戦場空間』は解けてる。電話できるな」

 俺は、スマホをシュシュっと操作。背景が高知県の仁淀川(によどがわ)(とても綺麗な青・仁淀ブルーで有名な、一級河川です)になっている画面を軽やかにタップし、悪友にお電話してみる。
 プルルルル プルルルル プルルルル プルルルル ガチャ

『おっすユウ。探し物は見つかったか?』
「おうバッチリだよ。それでそのお礼をしたいから、ケーキを食べに行きませんか?」
『あーワリィ。これから高確率で用事が発生するんで、今回はパスするわ』

 あちゃー。タイミング、合わず。

『それにオレが好きな主人公あーんどヒロインちゃんは、見返りを求めず一切受け取らないかんね。感謝するなら、あえて言葉だけにしといてくれよ』
「お前がそう言うなら、そうするわ。じゃあね」

 無理強いするのは、よくないからねぇ。それがいいなら素直に従おう、ということでスマホを片付けた。

「色紙クン。その様子だと、空霧クンは不参加なのですわね?」
「アイツは、感謝の言葉だけでいいんだってさ。明日学校でお礼を言いましょう」
「そうですわね。あの人も変わった人だけど、そういうのは好きですわ」

 彼女はニッと笑い、にゅむむんにゅむん。俺とサクの手を掴んで引っ張る。

「善は急げっ。黒真クンたちと合流して、食べれるだけケーキを食べますわよっ」
「合点承知っス。少し早いけど、封印成功パーティーを開きましょう」

 俺は麗平さんに笑みを返し、新たな行動を開始。仲間の二人と共に、軽快に前へと右足を踏み出したのだった。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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