第4話(1)

エピソード文字数 2,612文字

「なー皆。これは、どーゆーことなのかなぁ?」

 シズナが加わった翌日、具体的に言うと8月4日。俺はダイニングテーブルに頬杖をつき、PM4時を示しているデジタル時計を指した。

「従兄くん、どうしちゃったの? PMは午後だって忘れちゃったの?」
「ちげーよ! いつまで経っても話が始まらないから――くそっ」

 やっちまった。またまたやっちまったよ。

「ひぁぅんっ。身体が、熱くなっちゃうぅ……!」

 ダイニングテーブルは4人掛けで前と斜め前が埋まっているため、わたくしの隣にいる変態が悶えてる。
 この女……。どんな時でも狙ってくるな。

「はぁ、シズナ鎮まれ。例の話はいつ始まるかを、俺は知りたいんだよ」
「はぁ、はぁ…………そうだったのね。多分もうすぐだから、あと少し待って頂戴」
「ほんとーに、もーすぐと思うのー。お時間ちょーだいねっ」
「師匠、あとちょっとの辛抱ぜよ。勝先生、耐え忍ぶのが忍者ぜよ!」

 坂本龍馬は、忍びについて語らない。このごちゃ混ぜ勝先生シリーズ、回を追うごとに酷くなってるな。

「……まー、俺からはアクションを起こせないからねぇ。テレビでも見て待っとりますよ」

 僕チンはリビングのソファーに腰を沈め、リモコンをプッシュ。テレビ番組さんの視聴を始めたのでした。

                  ◇※◇

 ~PM5時~
「ゆーせー君っ、クッキー焼いてみましたー。食べて食べてっ」
「はむはむ…………美味しいね。ハーブがいい味を出してるよ」
「にゅむっ! 褒められたよー」

                  ◇※◇

 ~PM6時~
「師匠っ! 『戦場空間』が展開されたぜよ!!
「壁起動ぜよっ! 守りを固めたんで、適当に潰しといてー」
「了解やき! 喰らいや、『赤(あか)の咆哮(ほうこう)』!」
「おぉ~。目玉が4つある異形が15匹、炎の竜巻に呑み込まれてる~」

                  ◇※◇

 ~PM7時30分~
「ゆーせーくーんっ、晩御飯のお時間だよー。お席についてくださーいっ」
「あいよ。レミア、今晩のメニューは?」
「炊き込みご飯さん、さつま揚げさん、冷奴さん、おすましさんだよー。炊き込みさんは、キノコさんをどっさり入れてみましたーっ」
「お~、今日も旨そうだね。いただきます、をして……………………うむ。レミア料理長、とっても美味しゅうございますよ」
「にゅむむー! 喜んでもらえたよーっ」
「ふぬぉっ! 勝先生、さつま揚げを食べたら薩長同盟をしたくなったぜよ!」

                  ◇※◇

 ~PM9時~
「従兄くん、お風呂湧いたわよ。一緒に入りましょうか」
「ちょっとでも離れるのはマズイが、これはいいんじゃないの? 昨日みたいに、扉の前で待っててもらってたら充分でしょ」
「んもぅ、女の子とのお風呂を嫌がるなんて。し・つ・れ・い・よ?」
「意味が分からん。俺は独りで入るからね」
「そう……。…………あとで勝手に入って、お背中流しちゃおっと」
「シズナ、いい加減にしろボケナス! 嫌って言ったら嫌なんだよ! お前と入ったらトラブルがありそうで怖いんだよ! 察せよ鈍感! 迷惑なんだよバカ! 過ぎたるは尚及ばざるが如しを知らねーのか! このドアホっっっっ!!
「ひぁぁぁっ、ひゃぅぅっ、ぁぁあぁあん!! 怒られラッシュ、さい、こう…………」
「よし、思った通り興奮しすぎて気絶したな。悪いけどフュルは変態を介抱して、レミアは風呂についてきてー」

                  ◇※◇

 ~PM10時~
「はーい、じゅーじになりましたっ。第1回、色紙杯しりとり大会を始めるよー」
「おうぜよ!」「ついに来たわね、この時が」「やりたくないなぁ」
「まずは、フュルちゃんからー。しりとりの、『と』っ」
「トベジビリウスぜよー!」
「なんだよそれ!? 何語なの!?
「これは日本語で、学名やね。こっちの日本にいる魔物先生の名前ぜよ」
「……そか。シズナ、続きをどうぞ」
「『ぜよ』はノーカウントだから『す』、ね。スベノチョロリウス」
「……スチーム。蒸気のスチーム」
「次は、あたしだねーっ。『む』だから、ムリゼツヒトオスネムリウスαっ」
「あ、あ…………! アメフレメスコマウスΩぜよ!」
「私は、『が』でいいのね。が、といえば………………ガヌバゴジウベリジガゴバウスβ」
「お前ら魔物縛りはヤメロ! ウスがつかない単語を言え!」

                  ◇※◇

 ~PM11時~
「フュルちゃん、注目注目(ちゅーもくちゅーもく)っ。テレビで高知(こーち)県の特集(とくしゅー)やってるよー」
「なんと! 坂本先生の故郷っ、見逃したらいかんぜよ!」
「内容は、ユズや土佐和紙(とさわし)――有名な食べ物と伝統品、地元で有名な生産者さん達を紹介するみたいよ。高知県って、紙分野でも名が通っているのね」
「実はそうで、品があって手触りも最高なんだよ。その域に達するには相当な経験が必要で、俺は全然ダメでしたわ」
「にゅむむっ? ゆーせー君、作ったことあるのー?」
「友人の親がその道の先生で、体験教室に誘われたんだよ。『いの町』というトコに博物館があって、紙について学べたり紙漉きの体験ができたりするんだ」
「あっ、そこは後で紹介されるみたいね。従兄くんが行った場所、他にも取り上げられるかしら?」
「お、従妹の家が映ってる。伯父さんファミリーは父さんの実家で農家をやってて、俺は近々――」
「なんですって!? 私というものがありながら、他にも従妹を作ってたの!?
「なに言ってんだお前。アンタが後で、しかも偽者だろ」
「この世に、従兄くんの従妹は一人でいい……! フュルさんっ、『青(あお)の爆弾(ばくだん)』の発射準備をお願い!」
「それは、出来ん相談ながよね。坂本先生の故郷を汚したらいかんぜよ!」
「……フュル。俺の実の従妹を守ってくれよ……」

                  ◇※◇

「あら、日付が変わったわね。従兄くん、そろそろ寝たら?」
「もうそんな時間か。おやすみ――とは言わないぞ?」

 にゅむん。視線に攻撃力があったら射殺せるくらい、鋭く睨め付けたにゅむ。
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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