かぐや姫
文字数 1,943文字
「ハル、三太郎が片付いたところで、今回は女性が主人公の御伽話にしようと思うがどうだろう?」
「私は一つもOKを出してないんですけど、片付いたことになっていたんですね」
「ということで、今回はかぐや姫だ」
「無視ですか」
「さて、ハルのイメージを教えてくれ」
「そうですね、竹取の翁 が光り輝く竹を切ったら中から女の子が出てきて、成長後求婚者に無理難題を押し付けるだけ押し付けて月に去っていく感じですか」
「相変わらずの言葉のチョイスだが、素晴らしい集約だ」
「ありがとうございます」
「竹取物語とも呼ばれていて、日本最古の御伽話とされている」
「そうなんですね」
「だが、基本的な設定は大きく変わらない」
「ちょっとまとめてもらえますか」
「そうだな、一旦文章で書いたんだが長すぎて泣く泣く消した。今回も箇条書きだ」
「著者の心情を吐露 するのはやめてもらえますか」
•翁が光る竹からかぐや姫を発見
•竹林から金 を発見する日が続き裕福になる
•かぐや姫は三ヶ月で美しく成長
•五人の求婚者が現れて、かぐや姫は入手困難な物をそれぞれに指定して持ってくるよう言うが全員失敗
•帝に見初められる
•三年後かぐや姫が月に帰ると告白
•かぐや姫は月で罪を犯し、罰として貧しい翁の元へ送られていた
•帝の軍勢と翁は月からの使者と対峙
•月の使者に手も足も出ず、かぐや姫は月に帰る
「ざっとこんな感じだが、ハルはどう思う?」
「かぐや姫は懲役三年の罪人だったんですね。貧しい翁の家庭が牢獄だとするなら、そこに金塊が送られてくるとか、求婚者が殺到するとか、もはや牢名主 ですね」
「やっぱりそこが引っかかるよな。昔話にはよくあることだが、僕はそもそもの現代語訳が間違っているんじゃないかと思う」
「その道の権威に怒られますよ」
「よし! 閃いた」
〜 かぐや姫 〜
奥菜竹人 は正月飾りの門松を作ろうと裏山の竹藪にきたところ、光る竹を見つけた。不思議に思い、切って見ると中に可愛らしい女の子が入っていました。かぐやと名乗るその小人は家に連れ帰ってほしいと懇願しました。気の毒に思った竹人は黙って従います。
聞けば、これからあの竹藪に金塊が転送されるので回収して欲しい、そして自分も金塊も三ヶ月かけて元の大きさになるとのことでした。竹人は半信半疑でしたが、後日竹藪に行くと本当に金塊がありました。
金塊の一部をあげるので一緒に住まわせてくださいと言うかぐやを竹人は制します。
「突然こんな金塊を手に入れたらすぐに税務署に嗅ぎつけられてしまう。僕に任せて」
竹人は金塊が元のサイズに戻るのを待って警察に届けました。シリアルナンバーの入っていない金塊など持ち主が現れるはずはありません。下手に名乗り出て証明できなければ申告漏れの刑で鬼よりも恐ろしい税務署の餌食になってしまうからです。
そして三ヶ月後、金塊は丸ごと竹人たちのものになりました。めでたしめでたしと思ったのも束の間、二人に不審な影が忍び寄ります。
「税務署です」
竹人は知りませんでした、拾得物も課税対象であることを。特別控除五十万円を差し引いた額の半分に課税されるのです。三億円相当ある金塊にかけられる税率は四十五パーセント、ざっと六千七百万円もの額を納税しないといけません。
かぐやは体だけでなく態度も大きくなりました。竹人を信じた結果、税務署の餌食になってしまったのですから無理もありません。
「妾 のことは姫とお呼び」といって竹人をあしらいます。
結構な額を失ってしまいましたが大金であることに変わりはありません。かぐやに多くの求婚者が押し寄せましたが、ドSのかぐやの責めに耐えられたというか、むしろ喜んでしまった男は五人だけでした。
かぐやは納税額を取り戻そうと、五人にエルメスやらパテックフィリップやら高額な物を要求します。当然そんなものを用意できる者はいません。そして運悪く、その中にいた税務署職員からこう告げられます。
「その場合は贈与税の対象になりますので控除額百十万円を引いて五十五パーセントの税率が適用されます」
半分以上税金で持っていかれるという事実に、かぐやは愕然とします。
結局、取り戻すどころか住民税、消費税など納税すること三年の月日が流れました。
ある日、月から警察がやってきました。
かぐや姫こと、怪盗かぐやは金塊を盗み、マッドサイエンティストの父が開発した物質転送装置で自身と金塊を転送していたのです。
「怪盗かぐや! 観念しろ!」月警察が叫びます。
「嫌じゃ! 妾は戻らぬ」
膠着 状態が続くかと思われたその時です。
「かぐやさーん、税務署です」
「もう納税は懲り懲りじゃ」かぐや姫は月へと帰っていきました。
〜 おしまい 〜
「ハル、こんな感じでどうだろう?」
「もはや原形をとどめていないです」
「私は一つもOKを出してないんですけど、片付いたことになっていたんですね」
「ということで、今回はかぐや姫だ」
「無視ですか」
「さて、ハルのイメージを教えてくれ」
「そうですね、竹取の
「相変わらずの言葉のチョイスだが、素晴らしい集約だ」
「ありがとうございます」
「竹取物語とも呼ばれていて、日本最古の御伽話とされている」
「そうなんですね」
「だが、基本的な設定は大きく変わらない」
「ちょっとまとめてもらえますか」
「そうだな、一旦文章で書いたんだが長すぎて泣く泣く消した。今回も箇条書きだ」
「著者の心情を
•翁が光る竹からかぐや姫を発見
•竹林から
•かぐや姫は三ヶ月で美しく成長
•五人の求婚者が現れて、かぐや姫は入手困難な物をそれぞれに指定して持ってくるよう言うが全員失敗
•帝に見初められる
•三年後かぐや姫が月に帰ると告白
•かぐや姫は月で罪を犯し、罰として貧しい翁の元へ送られていた
•帝の軍勢と翁は月からの使者と対峙
•月の使者に手も足も出ず、かぐや姫は月に帰る
「ざっとこんな感じだが、ハルはどう思う?」
「かぐや姫は懲役三年の罪人だったんですね。貧しい翁の家庭が牢獄だとするなら、そこに金塊が送られてくるとか、求婚者が殺到するとか、もはや
「やっぱりそこが引っかかるよな。昔話にはよくあることだが、僕はそもそもの現代語訳が間違っているんじゃないかと思う」
「その道の権威に怒られますよ」
「よし! 閃いた」
〜 かぐや姫 〜
聞けば、これからあの竹藪に金塊が転送されるので回収して欲しい、そして自分も金塊も三ヶ月かけて元の大きさになるとのことでした。竹人は半信半疑でしたが、後日竹藪に行くと本当に金塊がありました。
金塊の一部をあげるので一緒に住まわせてくださいと言うかぐやを竹人は制します。
「突然こんな金塊を手に入れたらすぐに税務署に嗅ぎつけられてしまう。僕に任せて」
竹人は金塊が元のサイズに戻るのを待って警察に届けました。シリアルナンバーの入っていない金塊など持ち主が現れるはずはありません。下手に名乗り出て証明できなければ申告漏れの刑で鬼よりも恐ろしい税務署の餌食になってしまうからです。
そして三ヶ月後、金塊は丸ごと竹人たちのものになりました。めでたしめでたしと思ったのも束の間、二人に不審な影が忍び寄ります。
「税務署です」
竹人は知りませんでした、拾得物も課税対象であることを。特別控除五十万円を差し引いた額の半分に課税されるのです。三億円相当ある金塊にかけられる税率は四十五パーセント、ざっと六千七百万円もの額を納税しないといけません。
かぐやは体だけでなく態度も大きくなりました。竹人を信じた結果、税務署の餌食になってしまったのですから無理もありません。
「
結構な額を失ってしまいましたが大金であることに変わりはありません。かぐやに多くの求婚者が押し寄せましたが、ドSのかぐやの責めに耐えられたというか、むしろ喜んでしまった男は五人だけでした。
かぐやは納税額を取り戻そうと、五人にエルメスやらパテックフィリップやら高額な物を要求します。当然そんなものを用意できる者はいません。そして運悪く、その中にいた税務署職員からこう告げられます。
「その場合は贈与税の対象になりますので控除額百十万円を引いて五十五パーセントの税率が適用されます」
半分以上税金で持っていかれるという事実に、かぐやは愕然とします。
結局、取り戻すどころか住民税、消費税など納税すること三年の月日が流れました。
ある日、月から警察がやってきました。
かぐや姫こと、怪盗かぐやは金塊を盗み、マッドサイエンティストの父が開発した物質転送装置で自身と金塊を転送していたのです。
「怪盗かぐや! 観念しろ!」月警察が叫びます。
「嫌じゃ! 妾は戻らぬ」
「かぐやさーん、税務署です」
「もう納税は懲り懲りじゃ」かぐや姫は月へと帰っていきました。
〜 おしまい 〜
「ハル、こんな感じでどうだろう?」
「もはや原形をとどめていないです」