五、

文字数 489文字

 苦しみを吸い取ってあげた人達が決まって起こす行動が一つあった。それは、感謝の気持ちとして私にお金を払うというものだった。私は毎回全力で断ったが、皆揃って口にする。

「これしかないから貰って欲しい」

と。私はありがとうと言って貰えるだけで十分だったのに、生きる希望を再び貰った人達は、ありがとうという言葉だけでは感謝が足りないと感じるらしい。お金で済ませるのかよ。と始めの方は思っていたが、それは私の思い違いだった。彼らは、私の憶測でしかないけれど、感謝の気持ちを形で表したかったのではないだろうか。まあ、そんなわけで、貯金を切り崩して生活していくと考えていたが、お金に困ることはないに等しい生活を送っていた。どんなに断っても断り切れないのが分かってからは、手に握らされたお金をありがたく頂戴することにした。
 金額は様々で、小銭から札束をくれる人までいた。お金が目当てでやっているわけではないのにと後ろめたい思いもあったが、もし私が逆の立場だったらどうだろう。と考えた時があった。私もきっとありがとうと口にした後に、お金を払うだろうなと思った。みんな考えることは一緒だ。
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