詩小説『リップクリーム』3分の失恋話。恋人と別れた人へ。

エピソード文字数 638文字

リップクリーム
 
朝日はどうやら変わった日付を冷やしているようだ。
 
鳩の群れが飛び立った。空にはなんにもないのにね。
 
お風呂に入りたい。だって昨日のボーダーだから。
 
部屋着にしてしまおうか。いや捨てるべきだよね。
 
あっけなく世界は変わった。たった別れ話ひとつで。
 
リップクリーム塗り直した。
これから家に帰るだけなのに。
 
リップクリーム塗り直した。
もうキスする予定もないのに。
 
リップクリーム塗り直した。
乾いた唇がかっこ悪い台詞吐きそうで。
 
もうあなたに会うことはない。
それがどういう意味か。
 
思い知らされて泪。
 
歩道橋の端っこで見下ろした。車が走らぬ二車線の道路。
 
まるで私の頭みたいに空っぽね。足元踏んづけてアクセル探す。
 
今日の私と昨日の私は明確に違う。風船が裂けて水が飛び散る。
 
私と目を合わせた黒猫は、慌てて路地裏に逃げていくの。
 
永遠は一瞬で終わった。別れ話は怖いものだ。
 
日焼け止めを頬に伸ばす。
風呂上り生温く湿ってるのに。
 
日焼け止めを腕に伸ばす。
行先も見当たらないのに。
 
日焼け止めを手の甲伸ばす。
私のハートが焦げて黒くならないように。
 
もうあなたに会うことはない。
あなたは他の誰かのものに。
 
想像できすぎて泪。
 
もう喧嘩することも、約束することも、裏切り破ることも。
髪を撫でることも、袖をつまむことも、癖のある声聞くことも。
 
別れ話すらできなくなるの。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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