第4問 入部試験③
文字数 1,101文字
さてさて、オレたち一年生は、イケメン優男の奇術部部長の泰 から入部試験として、ある質問を投げ掛けられた。
泰は指でアルミのフォルムの万年筆風のペン一本を指で摘み持ち、「ペンは今僕の手に、実は二本ある。さて、信じる?信じない?」と尋ねた。泰は穏やかな笑顔を浮かべながら、鴨居、オレの順に目配せして、数十秒後また言葉を繋いだ。
「では、ファーストインプレッションを問おう。せーの、で発表してくれるかい?はい、せーの…」
「「信じる」」
オレと鴨居は共に「信じる」と答えた。オレは少し驚いた。てっきりこの女子の"素直なお嬢様"な見た目から、見えないモノを邪推するタイプでは無く、見えているペンが一本だから一本が答えだと考えるタイプと見做して、「信じない」と答えると思っていた。そのため、回答を聞いた後で鴨居を見遣った。オレの人物評はそれほど外れた事がないのがウリだったが、オレの予想以上に疑り深い性格なのか?二人を見て、泰は満足そうに頷く。
「では、矢継ぎ早だけれど、理由はもう用意してあるかな?うん、もうありそうな顔だね。じゃあ、理由を聞こう。まずは…、山縣君。どうして、二本あると思った?」
「ないなら問題にしないでしょ」
「ふふっ。世の中を斜に見た、良い回答だね」
冷静に答えるオレと、それを喜ばし気に見る泰を他所に、鴨居は感動した様に「なるほど」と小声で言った後でうんうんと興奮気味に頷いた。なるほど?
「では、山縣君。何処に二本あるのだろうか、分かっているかい?」
「さあ?でも、いくつか案はある。『僕の手』という表現から、実は左手も『僕の手』の定義に含んでいて、反対の手に一本隠し持っている、とか。特注の凄い小さいペンがあるとか。実はオレたちからの角度では見えないようにそのペンの後ろにペンを隠している、とか。だけど、一番可能性があるのは…」
「可能性があるのは?」
見つめ合うオレと泰の横で、鴨居は「おおー」と感嘆の声を上げて俺の案に感心していた。無言の数秒の後、オレは答えた。
「そのペンは、セパレイト出来る。丁度その上下に分ける線の所で。そして、二つのペンになる。アナタからペンを借りた時、見た目以上に"重い"と感じた。アルミのはずなのに、想像より重くて、その時はペンだけじゃない何らかの機能が備わっているかと思ったけど、こうして聞かれれば、ペンが二つ分入っていたから見た目より重かったんだと納得出来る。だから、セパレイトできるんじゃないか」
泰は最初驚きながらも、フツフツと徐々に高揚した顔となっていった。鴨居も小さく拍手しながら紅潮していた。オレは正答したという事を確信して、誇らし気にニヤけて見せた。
泰は指でアルミのフォルムの万年筆風のペン一本を指で摘み持ち、「ペンは今僕の手に、実は二本ある。さて、信じる?信じない?」と尋ねた。泰は穏やかな笑顔を浮かべながら、鴨居、オレの順に目配せして、数十秒後また言葉を繋いだ。
「では、ファーストインプレッションを問おう。せーの、で発表してくれるかい?はい、せーの…」
「「信じる」」
オレと鴨居は共に「信じる」と答えた。オレは少し驚いた。てっきりこの女子の"素直なお嬢様"な見た目から、見えないモノを邪推するタイプでは無く、見えているペンが一本だから一本が答えだと考えるタイプと見做して、「信じない」と答えると思っていた。そのため、回答を聞いた後で鴨居を見遣った。オレの人物評はそれほど外れた事がないのがウリだったが、オレの予想以上に疑り深い性格なのか?二人を見て、泰は満足そうに頷く。
「では、矢継ぎ早だけれど、理由はもう用意してあるかな?うん、もうありそうな顔だね。じゃあ、理由を聞こう。まずは…、山縣君。どうして、二本あると思った?」
「ないなら問題にしないでしょ」
「ふふっ。世の中を斜に見た、良い回答だね」
冷静に答えるオレと、それを喜ばし気に見る泰を他所に、鴨居は感動した様に「なるほど」と小声で言った後でうんうんと興奮気味に頷いた。なるほど?
「では、山縣君。何処に二本あるのだろうか、分かっているかい?」
「さあ?でも、いくつか案はある。『僕の手』という表現から、実は左手も『僕の手』の定義に含んでいて、反対の手に一本隠し持っている、とか。特注の凄い小さいペンがあるとか。実はオレたちからの角度では見えないようにそのペンの後ろにペンを隠している、とか。だけど、一番可能性があるのは…」
「可能性があるのは?」
見つめ合うオレと泰の横で、鴨居は「おおー」と感嘆の声を上げて俺の案に感心していた。無言の数秒の後、オレは答えた。
「そのペンは、セパレイト出来る。丁度その上下に分ける線の所で。そして、二つのペンになる。アナタからペンを借りた時、見た目以上に"重い"と感じた。アルミのはずなのに、想像より重くて、その時はペンだけじゃない何らかの機能が備わっているかと思ったけど、こうして聞かれれば、ペンが二つ分入っていたから見た目より重かったんだと納得出来る。だから、セパレイトできるんじゃないか」
泰は最初驚きながらも、フツフツと徐々に高揚した顔となっていった。鴨居も小さく拍手しながら紅潮していた。オレは正答したという事を確信して、誇らし気にニヤけて見せた。