第5話(10)

エピソード文字数 1,937文字

(…………スポーツの祭典も、全次元規模でやってんのかぁ……)「あーそーそーいくつきー。この人は…………ナンバーワンを集めた本を作ってる方で、今のところユーが新進気鋭のピーマン生産者部門でトップなんだってさー」

 ややこしくなるから次元の部分は伏せ、ダラダラ壱市さんを紹介する。にゅむー、ゆーせーくーん。世界は僕にきびしーよー。

「わ、わたしが、一番……ですか? まだ、そんな身分じゃないと、思い……ます」

 にゅむっていると育月は、両手を小さく左右に振って否定した。
 コイツはピーマンに関しては、嘘を吐かないからな。これはホントにそう感じているんだろう。

「いいえっ。いいえっっ。貴女のピーマンは素晴らしかったですっっっ!」

 コンマ1秒以下の、まさしく即答。壱市さんは、光の速さでその否定を否定する。

「ワタシ達担当者は鍛えて、美味しさや凄さなどを数値化する能力を持っているのですがねっ。あのピーマンのベジタブルパワーは、過去最高でしたよっ!」
「イチ先生の力は、ホンモノなが! 誇っていいがぜよっ」
「にゅむっ。育月ちゃんのピーマンさんは、ほんとーにおいしーんだよーっ」

 フュルとレミアも、賛辞を贈る。のはいいのだけど、どうしてなのだろうか。誰も、鍛えて能力を得たトコを気にしていないのは。

「色紙育月さんのピーマンは、158796BP(べじたぶるぱわー)だったのです。これは新進気鋭部門ではダントツの数字で、一般部門でも相当良い順位になりますよ!」
「と壱市さんは熱く語ってますが、それの凄さがわかんないっス。他のピーマンはどのくらいなんですか?」
「野緑陽光(のりょくようこう)さん――前1位の方のピーマンは、110450BPでしたよ。なお現在3位のピマーン・マーピンさんは、108353BP。4位のピマ山ピマ彦さんは100051BPで、5位の月詠京栄(つくよみきょうえい)さんは100004BPとなっております」
「三位と四位の名前すげぇっ! その二人、ピーマンを育てるために生まれてきてるでしょ!」
「100000BP越えをするだけでも驚異的なのに、更に約50000もある……! 順位が確定するのは明日の0時ですが、貴女のトップは揺るぎませんよっ」

 壱市さんは俺を完全に無視して、ガバァッっと育月の両手を握る。
 この人、興奮しすぎ。まー、隣にいる変人の興奮には負けますがね。

「あ、ありがとぅ、ござい……ます。称号に興味はありません、けど、美味しいと思って貰えるのは、うれ……しい」
「なっ、なんという控えめなコメント! 貴女は生産者の鏡ですよっ!」

 壱市いちぇ――ぁぅぅ、噛んじゃったよぉ。優星、はずか……しぃ。

『お前、それキモいぞ。ちゃんと喋れ』

 壱市イチさんは手を叩き、従妹を称える。
 育月のこの台詞は、言うまでもなく本心。こういう気持ちが、旨いピーマンを作り出すんだろうなぁ。

「順位が正式に決まりましたら、再度報告に伺わせて頂きます。いつもは袋に記載されていた、大豊町の葛原(かずらわら)という地域にいらっしゃるのですよね?」
「そう……です。そこに、いま……す」
「はい、確認完了しました。色紙育月さんは、在住で間違いなし……っと」

 壱市さんは手帳に書き記し、ぺこり。お手本のようなお辞儀をした。

「これから他の方への取材がありますので、この辺りで失礼致します。帰還用のまほ――お花を摘んで帰りましょうか」

 恐らくは、人目につかない個室で魔法陣を出すのでしょうね。彼女は言い直し、女子用のトイレに入りました。

(それなら、誰にも目撃されはしない。さすがは社会人だな――)
「転移ゲート、オープン! ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※!!

 おや? トイレから、謎の言語が30秒くらい響いてきたよ。そのせいで、便所の周りにいる人々はギョッとしてるよ♪

(英雄以外がワープするには、『転移補助アイテムとそれなりの魔力』、魔力が少ない場合は転移補助アイテムに加えて長い呪文が要るの。九割九分の生物が後者で、ほぼ全員がああしないといけないのよ)

 口をあんぐり開けていたら、シズナが解説してくれた。
 壱市さん……。だったら、もっと離れた場所でワープしてよ……。

「てん、い……ですか? なんなの……でしょう?」
「きっ、きっとアニメのキャラの真似をしてるんだよ! さ、さーてぇっ、ぼちぼちお祝いを兼ねた昼ご飯にしますか!」

 俺はパンと柏手を打ち、育月の手を掴んで食べ物を買いに行く。
 いや~、参った参った。まさか、トイレでキャラになりきる人がいるなんてなぁ。あはははははははは。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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