第8話「水咲姫、タカシに遭遇」
文字数 1,238文字
午後8時過ぎ。水咲姫麗水は渋谷にあるスイミングクラブにて複数の小学生に背泳ぎの指導をしていた。実は彼女は中3の春休みからここでコーチのアルバイトをしていたのだ。ちなみに時給は1200円。シフトは月曜日から木曜日の週4。時間は夕方5時~9時の4時間である。
「はい!じゃあ次はバタフライいくよ~!まずは50m!よ~い……はい!」
水咲姫は今度はバタフライの指導を始めた。そしてそれから数十分が経過。
「───はい、今日はここまでよ、みんなお疲れ様でした」
レッスンが終わり、プールサイドにて生徒達に締めの挨拶をした水咲姫。
「「「お疲れ様でした!ありがとうこざいました!」」」
生徒達は水咲姫に向かってペコリと一礼した後に更衣室に向かって去って行った。そしてその後水咲姫は再びプールの中に入り、泳ぎ始めた。実はここ、従業員は勤務終了後に無料(ただ)で泳ぎ放題出来るのだ。
バッシャ!!バッシャ!!バッシャ!!
ザッパーン!!ザッパーン!!ザッパーン!!
ジャバジャバジャバジャバ!!
ズバーン!!!バーン!!!バシャーン!!!
水咲姫は派手に3000m泳いだ。そしてその後プールから上がり、プール全体に塩素を撒いた。それが終わるとシャワー室で頭と体を洗い、更衣室に戻って着替えた後に事務室に行ってタイムカードを切り、先輩方に挨拶をしてスイミングクラブを後にした。
「フフフンフフフンフッフンフー」
鼻唄を歌いながら自宅を目指して暗い並木道を歩いていた水咲姫。
「フンフンフフフ……ん?」
歩いてる最中に100m程先の前方からムーンウォークでこちらに向かって歩いてくる鶏帽子にタンクトップ、短パン姿の不審な男が視界に入った。
(な、何あれ……?酔っぱらい?)
水咲姫は若干警戒しつつ歩いた。そしてある程度進み、すれ違う直前に突然男はピタッと立ち止まり彼女の方へと顔を向けた。
「お前に決めた」
「は?」
男の突然の意味不明な発言に水咲姫は顔をしかめた。するとその直後。
「チェストオオオオオオ!!!!」
男は当然右腕をブレードの様な物に変化させて水咲姫に斬りかかった。
「うわっ!?」
水咲姫は咄嗟にバク転して回避。
「おっ!?」
男は驚いた。そして水咲姫は男に向かって怒鳴る。
「ちょ、ちょっと!!いきなり何すんの!?」
彼女の問いに男はニヤリと笑って答える。
「何って……殺そうとしたんだよ」
「はぁ!?」
何を言ってるんだこの男は!?イカれてる!!と水咲姫は思った。そしてブレードになっている男の右腕にチラッと視線を向けた。
「アンタ……その腕……」
「ん?ああ、イカすだろ?滅茶苦茶切れ味良いんだぜ?厚さ5mの鉄板もスッパスパですよ神」
「…………アンタ……ミュータント?」
「はい」
「何者?何のために私を殺そうと?私怨?」
「俺の名はタカシ……お前に対して私怨はない……だって今日初めて会ったし」
「じゃ、じゃあ一体どうして殺そうと……?」
「ゲーム」
「はぁ!?」