第1話

文字数 894文字

ひとり春の底で

お天道さまも世間の皆さまも 
せっせっと働いておられる春の日に
ひねもす どてりとばかりに
一日中 痴呆の人のように部屋に寝転んでいる

内部の浄化槽では
春の浄化機能が稼働したようで
この一年間に蓄積されたもろもろの疲れや
屈辱や憎悪 ツミケガレなどの汚れたものが
ごうごう音を立てて浄化槽で濾過されている
この浄化槽は大分古くて性能もよくないので
とても全てを綺麗に浄化することなど
不可能なのだが また これからの一年間を
何とか生き延びるために
少しでも綺麗になればいいと思う

メンテナンス中のため
全身 麻酔でも打たれたように動けない
春の陽射しに照らされながら
万国旗のような中干の洗濯物に賑わう
雑然とした書斎で洗剤の匂いにも襲われ
傷だらけのボロボロの眠りを貪っている
ただ ひとり 春の底に打ち捨てられた
半死半生の手負いの獣のように
外で満開になった桜にも気づかずに


追伸 ファンレターさまの紹介と私のコメント

大変共感出来ました。よく言い古されている、心の洗濯だけでは到底流し切れない、身心の奥底に長く沈殿した疲れやあらゆる感情は、うちなる浄化槽をフル稼働させて早く浄化したいですね。浄化槽に例えた大胆な発想が気に入りました。TamTam2021さんらしさがよく表れていると思います。春の底に泥の如く沈み、メンテナンス中の身体は痺れ、一日中微睡みながら過ごすことも大切だと思います。4月からまた、少し古くなった身体で精一杯働くためにもどうぞご自愛下さい。そしてこれからも切れのある詩を発信させ続けて下さいね。


まだ自分のことをもうトシだからと言いたくありません。しかし、一年一年をやり過ごすことがしんどく感じられてきました。相変わらず多くのしがらみやさまざまな煩わしいこと、生活のために抜けられない仕事があり疲労が蓄積します。また、関東地方に住んでいても暑さや寒さは相当なものでこの国の風土は体の弱いものには過酷に感じられます。さらに、冬から早春にかけてはひどい花粉症に苦しめられます。この一年も何とかようやくここまで生きてきましたという感じです。多分、心の栄養やエネルギーが足りていないのだと思います。



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