あいつ、今なにしてる?

文字数 628文字

「ともだち」と呼ぶにはあまりに近すぎて、あいつのことをどんな言葉で表せばいいのか、知らず知らずのうちに覚えていく新しい言葉の中から探してみようとしても、しっくりとくる言葉が見つからなかった。
 そう。だから、気づいたときにはそこにいた、そんなかんじ。
 子供のころからずっといるといったって、それがいつだったのか、はっきりといないくらい、普通にいつも一緒だった。
 煙たいと思ったら、本当に煙のように消えてしまっていたのかもしれないけど、ぼくはそうは思わなかった。

 察するのが得意なやつなんだよ、あいつは。
 すみっこにいながら、いつも研ぎ澄ましている。
 正しいことも間違っていることもわかっていて、ぼくに同調する。転がったサイコロを覆したりもしながら、ほらね、きみはそれでいいって、あっけらかんとぼくの肩を持つ。

 でも、いつか、あいつがいなくなるような気がしていた。

 近ごろのぼくの相手はAIだ。
 スマホに向かって声をかける。
 呼びかけには従順だし、悪い気もしない。
 AIが知らないことを見つけようとしても、無駄なようだ。
 AIが答えを見つけ出す。

 あいつはイマジナリーフレンドっていうらしい。
 今どこでなにをしているのかは誰も知らないし、ぼくも探したりはしない。
 ぼくは忘れてしまうかもしれないけど、AIには記録されてしまった。
 とつぜんAIが「探してみませんか?」なんて誘ってきたら、探す方法が見つかったのかなって、それはそれでおもしろいかなとは思うけどね。
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