第4話

文字数 4,064文字

そして、鍋パーティーの日になった。しかし、その当日、キモイ男が私の好きな人の代わりに来ていた。だから、私はがっかりして、もう帰りたいけど、仕方ないかと思って割り切った。まさか好きな人がこないとは思いもよらなかった。
しかし、直ぐに気を取り直した。私の割り切り方がこの八人の中で抜群な気がしたけど、やはり私はどうしてもあの好きな人の事を考えていた。
今日は同じ学科の同期の女の学生の貸しマンションで集まっていた。部屋はワンルームでまた新しい貸しマンションだ。床は明るい茶色のフローリングで壁は白色で統一されている。エアコンは備え付けのものらしく今は使っていないようだ。
ベッドは用意せず布団で寝ていると言っていた。キモイ男は少しだけ瞬きを軽く繰り返していた。私と新しい友人はついその顔を見てしまい、少しテンションが下がってしまった。
キモイ男は少しだけ部屋をじっと見ていて、しかし、直ぐに普段通りの姿になっていた。
部屋の空気は換気をしていたようで部屋にこもった空気ではない。その内、水炊きをすれば野菜や肉などの美味しい匂いに代わるんだろうと推測した。
でも、八人が集まれば少しだけ窮屈な感じもするけど、でも、今、それは全員、余り関心がない。それに私も新しい友人も鍋の事を気にしていてキモイ男の事も気にならなくなった。
100円ショップで買ったのだろう白くて簡易なまな板を小さい台所に置いて、えのきを短冊に切ったり、白ネギを食べ易いサイズに切ったり、その後、野菜を切った後で鶏肉も切って、その後、鍋に水を入れてその後、全ての食材を入れてじっくり煮込んだ。
水炊きが煮えるまで私達は色々、大学生らしい大学の講義や教授などの噂話や恋愛の当たり障りのない話題やバイト先での話題の会話をこなして楽しんでいた。
すると、私と新しい友人はふいにキモイ男が何やら新しい友人を意識しているのが分かってしまっていた。
それでも、私達は全員、鍋の仕込みの時みたいにまとまった感じになるのはきっと食事の時で、食事の時間になれば集中して全員、人を意識するのが一時なくなるだろうと思った。
よく話をしていると、また今度は夏休みの時にキモイ男がこなくて今度こそ私の今の好きな人も含めて八人で花火をする予定らしい。
その時、私は新しい好きな人に声を掛けようと少しだけぼんやりして思案していた。
私の新しい友人はキモイ男に好かれていた。嫌気を隠す私の新しい友人は私よりもきつそうだ。明らかに引いているようにみえるが、そのキモイ男はその繊細さが分からない。
「俺さ……一人暮らしなんだ。今度、遊びに来てよ。美味しい食事でも作るから食べにおいでよ。下心なんて無いから安心して。だから、今度は俺の部屋で何か食事をしようよ」
「そうなんだ。……そう言ってくれてありがとう。また今度、予定があえば皆でこうして一緒に美味しいのを食べたいな。水炊きを早く食べたくて何か腹減ってきちゃった」
私はその言葉を聞いて鳥肌が立った。本当にキモイと引いてしまった。
それでも、それにその男は気が付いていないようだ。しかし、その後、水炊きが出来て皆は水炊きの具材をよそって、少しずつポン酢をつけて食べていた。鶏肉の味わいと豆腐との柔らかさとえのきの噛み応えのある食感と白ネギの風味を堪能していた。
その後も、皆は会話を殆どせずに、ただ水炊きを美味しく食べていた。食事が思った以上に美味しくて、私の新しい友人はある程度、その男を軽く受け入れて楽しもうとしていた。私も友人を流石、良い女だと思い、皆でその場を楽しくする事に専念した。
すると、キモイ男はまたダメかという感じになっている事を私達は気が付いていた。
よく観察をすると、恐らく意外とその男は一応、モテない事を自覚していて積極性が空回りしている事が多いようだ。ダメである事を受け入れてしつこく誘う事はしないようだ。
いわゆる良識はあるらしく、私達は凄く意外な感じはしていた。
そして、私はポン酢をまた少し取り皿にかけて、新しい友人はもみじおろしを足してただ鶏肉を中心に食べていた。
そして、私は食事が終わり、何気なくキモイ男をよく見てみると以外と外見はそんなには悪くないし、話も一応、日常会話だけなら軽く話せそうだった。その男は勘違いしていた馬鹿だけどキモイけどナルシストだけど根は悪くはなさそうに気もしてきた。
私は生理的に無理だけど、キモイ男も出来れば幸せになれたら良いなとは軽く思った。
そして、鍋を食べ終わり、片付けを開始していた。取り皿や箸、レンゲや鍋を小さな台所に洗ってから少しまた色々、話をしていた。そして、キモイ男が私の新しい好きな人の話もしていた。次第にキモイ男に私の新しい好きな人の事を聞く事で私も楽しかったし、その男も自慢げにその私の好きな人の事を教えてくれた。何で自慢げに教えてくれたのは分からなかったけど、私の新しい友人はキモイ男が私に話し掛けていたから本当に好きになりそうな男と話をしていた。初めて見た友人の気に入った異性との話を聞いた時の喜んでいる姿を見て、私はこの場に友人と二人共、行って良かったと思い、来た甲斐があったと思った。
皆で鍋パーティーを楽しんでいたから仲間意識は今夜の今回の参加者の全員に湧いてきた。
「そうだ……アイツ、君の事を気に入っているみたいだよ。今回はバイトさえなければ鍋パーティーに行きたかったと言っていたし、だから、次回は出来れば河川敷での花火をしたいと言っていた。まあ、忙しい男だから……もし、来なくても俺が代わりに来れば十分か」
ナイス、キモイ奴。ありがとう。来てよかったよ。勘違いで嫌な奴だけど、時に役立つな。私はそう思ってテンションが上がっていった。
皆は色々、気になる人や興味のある人と話していて、恋愛や仲間の出会いになった気がした。今日、一緒に鍋パーティーをして私も新しい友人も含めて色々、収穫があって楽しかった。
真夏の暑さを感じて五感で楽しむ花火をするのが楽しみで普段は講義が終わっても大学の中では二人きりでは私の好きな人と余り話せないだろうけど、大学の講義を適当に受けながら、もし私と好きな人が付き合うようになれば講義が終わった時に友人の車ではなく、その私の好きな人と車で帰り道にホテルに行ければいいなとは思う。
でも、私は好きな人とそういう関係にまでなったらいいなと思っているけど、行為はホテルでもなくても車でも私の新しく好きになった人の部屋でもいいかなとは思っている。
そして、此処の住人は玄関先で全員を見送って後の皆は電車の駅まで一緒に歩いてテンションが高いまま皆で色々話して、キモイ男も切なげに新しい友人を見ていた。
それでも、新しい友人は気に入った異性と話をしている。少しだけ私はキモイ男に同情して、そして、電車の駅で解散した。
その後、私と新しい友人はキモイ男の事を最初に話して「私、絶対嫌」だと友人が言っていた時に私は爆笑した。私も新しい友人の思いがよく分かる。でも、何故か私は出来ればだけど、私は嫌だけど、誰かとキモイ男が幸せになって欲しいと軽く考えている。
それは新しい友人には言わない事だ。でも、それが私の現状の思いである事は間違いない。
しかし、新しい友人が気に入った異性と付き合って欲しいとは強く思っている。新しい友人が気に入った相手は外見が良くて新しい友人みたいに美人な女とは釣り合っていてお似合いだ。
多分だけど、その二人は付き合うなと予感している。私の予感はあてにはならないかもしれないけど、そう予感している。新しい友人は高校時代の友人と同じぐらい良い女だから。
私の好きな人はきっと外見よりも性格や考え方が合う相手を優先させると言っていた。私も同じだ。好きな人は外見も私の好みで物凄くモテるというタイプではないけど、堅実な恋愛を重ねていくタイプだろう。多分、それも私と似ている。
そして、その後、今回も私は新しい友人に駅まで送って貰った。
「もうじきレポートを仕上げなきゃいけない時期だから大変だよね。単位が足りればそれで越したことないから講義もこなそう。良い状態で夏休みになると良いね。じゃあまた明日」
「送ってくれてありがとう。助かったよ。そうだね。大変だけど、レポートも通って単位が取れて良い状態で夏休みを迎えたい。じゃあまた明日。お互い恋愛も上手く行くと良いね」
そして、私は駅の構内で電車を待っている時、ふと新しい友人との友情が今の私にとってありがたいと思った。
電車はもう直ぐ来る。そう思うとため息が何故か出た。
私は電車を降りて、また駅の構内でため息をついて、明日も新聞配達があるなと思いながら歩いていく。駅を出て家まで歩いていく時にふと寂しさを感じた。
最近、大学生活が早く過ぎ去っていく虚しさもたまに感じるようになっていた。
特に一人で眠る前に考えていた。不思議だけど幸せな日に限ってより強く寂寥感を感じる。若い時ってそんなものかなとは思うけど、理屈だけでは寂しさは消えない。
新しい友人とは大学を卒業すれば互いに就職が決まっているだろうから中々会えない時期が増えそうで、楽しさが余り感じずに仕事で辛い思いをしても、それでも、たまに会えたら私は幸せだと感じているだろう。そして、更に高校時代の友人ともたまに会えたら幸せだ。特に高校時代の友人はもう既に社会人だし、この先も話を聞き、それとメールで不満とかやりがいとか伝えるメールで分かる社会人の仕事の事情が参考になりそうだ。卒業すれば同じ立場になるし、社会人の先輩としてのアドバイスをしてくれそうな気がする。
そして、私は帰宅して夜の支度を終えて横になっていた。寝る前に取り敢えず明日の事を考えながら明日はどんな一日になるのか空想して瞼を瞑った。
今夜の最後に次は高校時代の友人と会える日を楽しみだと思っていた。そんな事を思いながら何を食べようかとか何処で遊ぼうかと色々、考えを巡らしていた。
そして、最後に暗闇になった。眼を閉じて何も見えない暗闇になった。
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