第2話

文字数 711文字

ボロ長屋。
割れたガラスはダンボール。
電話も自家用車もない。
学校の用具も揃わず、給食費もなかなか払えず、忘れ物が多いふり。
誤魔化し。
この貧しさは、僕のせいじゃない。
けれども子供社会は容赦ないんだ。

「ミサオんち、貧乏だから、親父バキュームカーなんだぜ」

しれっと聞き流すエセ優等生、エセ人気者。
中学を卒業してから、まだ通学の為に買った自転車の代金を払ってない事を知った。
アルバイトして、学校のもの、欲しいものを買うのが楽しかった。
くだらない理由で高校を中退したのは、そんな窮屈さから逃げ出したかったんだと思う。
18歳になったら、ローンが自由に組めた。
もう働いてたから。
教習所から始まり、ギターも車もローンで買った。
それが借金の始まりだった。
正確に言うと、自分の借金の始まりだった。
借金は産まれた時からずっと側に付き纏い、離れる事はなかったから。
どこに居ようが、何をしてようが。
ともあれそんなローンの支払いを手始めに、結局僕が無借金状態で生きたのは、ほんの数年間だけだった。
その時には調子に乗って、母親の借金の整理にまで出しゃばった。
不運もあるかも。
でも、おかあさんがだらしないんだよ、とか。
良く言う。
タバコやめた途端タバコの害を説く輩と同じだった。
借金がないのは幸せだ。
引け目、不安。
それらと縁を切る為に、僕は独りになった筈だった。
しかし、自分で背負う借金は、とてもシラフで居られない重圧を、起きてる間ずっと与えてくれる。
それでも、なんとかせねば。
いっそ一思いに殺してはくれないか?
死んだら迷惑掛けちゃう人たちにすら、生きてる方がもっと掛ける迷惑を先延ばしにし、被害を大きくするだけなんじゃないか?
これが、僕が望んだ自由だった。
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