第7話 捜査依頼②
文字数 1,398文字
——もし僕だったら、
正思 はニヤニヤしながら続けた。
「君が死んじゃったら、君のスマホは形見としてずっと持っていたいなあ。どんな写真撮ってたのかなあとか、どんなコと付き合ってたのかなあとか知りたいし」
父親の言葉に正語 は鼻で笑った。
「でも智和さんは、息子が亡くなってもスマホには無関心だったみたいだね。地元の中学生が智和さんにスマホを届けにきて、初めて失くなっていたことに気づいたんだって」
しかもそのスマホ——と、正思は瞳を輝かせた。
「ご丁寧にハンカチに載せられて、神社の賽銭箱の上に置かれてたんだよ!」
どう? 興味持ったでしょ?
そう父親の心の声が聞こえてきそうだ。
正語は椅子にふんぞり返り、腕を組んだ。

そもそも正語 は、鷲宮一輝 という男をよく知らない。
母親同士が姉妹の従兄弟だが、関わりは薄かった。
正語が子供の時に一輝は何度か母親と共にこの家にやってきた。
それだけの付き合いだし、印象も良くない。
一輝は痩せて背が高く、無口な男だった。
肌は紙のように白く、無機質な灰色の目が不気味だった。
『あいつ、ガイジンか?』
と正語は母親の光子 にきいたことがあった。
『一輝くんのご先祖様は、外国から来た宣教師をこっそり匿 っていたのよ。どうやらその頃に、その宣教師とこっそり子供をもうけた女の人がいたみたいなの』
子供だった正語には、光子の言葉がよく理解できなかったが、聞き返す間もなく光子は怖い話を始めた。
『あの家に生まれた灰色の目の人には不思議な力があってね、亡くなった人とお話が出来るのよ』
衝撃だった。
あいつはゾンビと話せるのかと怯 んだ。
それ以来、正語は一輝から努めて距離を置くようになった。
夏休みになると光子は子供たちを連れて、妹の家に泊まりに行こうとしたが、正語は頑として行かなかった。
兄たちから、
『お城みたいに広い家だった』
『庭にテニスコートがあった』
と聞かされても、全く行く気がしなかった。
小学生の時はサッカー、中学でバスケに夢中になった正語は、ゾンビとつながりのある一族の家に行くより、仲間といた方が楽しかった。
中学生になり反抗期に入った次兄は母親との親戚詣を止めたが、オカルト好きの長兄は成人しても鷲宮の家に行った。
『霊視をしてもらいに、政財界の大物や著名人が通っているようだ』
と長兄の正聞 は鷲宮家に関する情報を弟たちに報告した。
『あの家がとんでもない大金持ちなのは、その霊能力のおかげみたいだぞ』
正聞は興奮気味に語ったが、次兄の正見 は冷ややかだった。『そんなのインチキに決まってるだろ』と小馬鹿にした。
兄たちの話を聞きながら正語は、やはりあまり関わりたくない家だと思った。
霊魂の有無以前に、そんなことで大金を得る家に純粋に胡散臭さいものを感じた。
一輝にはもの凄く可愛い弟がいると、兄たちから聞いたことはあるが、右から左に聞き流した。
その鷲宮一輝が去年亡くなった。
温室の中で熱中症で亡くなったという話は、正語も聞いていた。
確かに30代の男の死因としては珍しい。
「もし、亡くなった時にスマホを持っていたら、助けを呼べたって、ことか?」
正語 が言うと、正思 は嬉しそうに膝を打った。
「ああ、やっぱ、そうくるよね! でもね、その心配はないんだよ。
スマホを持っていようがいまいが、一輝くんは助けを呼ぶ事は、出来なかったんだ!」
「君が死んじゃったら、君のスマホは形見としてずっと持っていたいなあ。どんな写真撮ってたのかなあとか、どんなコと付き合ってたのかなあとか知りたいし」
父親の言葉に
「でも智和さんは、息子が亡くなってもスマホには無関心だったみたいだね。地元の中学生が智和さんにスマホを届けにきて、初めて失くなっていたことに気づいたんだって」
しかもそのスマホ——と、正思は瞳を輝かせた。
「ご丁寧にハンカチに載せられて、神社の賽銭箱の上に置かれてたんだよ!」
どう? 興味持ったでしょ?
そう父親の心の声が聞こえてきそうだ。
正語は椅子にふんぞり返り、腕を組んだ。

そもそも
母親同士が姉妹の従兄弟だが、関わりは薄かった。
正語が子供の時に一輝は何度か母親と共にこの家にやってきた。
それだけの付き合いだし、印象も良くない。
一輝は痩せて背が高く、無口な男だった。
肌は紙のように白く、無機質な灰色の目が不気味だった。
『あいつ、ガイジンか?』
と正語は母親の
『一輝くんのご先祖様は、外国から来た宣教師をこっそり
子供だった正語には、光子の言葉がよく理解できなかったが、聞き返す間もなく光子は怖い話を始めた。
『あの家に生まれた灰色の目の人には不思議な力があってね、亡くなった人とお話が出来るのよ』
衝撃だった。
あいつはゾンビと話せるのかと
それ以来、正語は一輝から努めて距離を置くようになった。
夏休みになると光子は子供たちを連れて、妹の家に泊まりに行こうとしたが、正語は頑として行かなかった。
兄たちから、
『お城みたいに広い家だった』
『庭にテニスコートがあった』
と聞かされても、全く行く気がしなかった。
小学生の時はサッカー、中学でバスケに夢中になった正語は、ゾンビとつながりのある一族の家に行くより、仲間といた方が楽しかった。
中学生になり反抗期に入った次兄は母親との親戚詣を止めたが、オカルト好きの長兄は成人しても鷲宮の家に行った。
『霊視をしてもらいに、政財界の大物や著名人が通っているようだ』
と長兄の
『あの家がとんでもない大金持ちなのは、その霊能力のおかげみたいだぞ』
正聞は興奮気味に語ったが、次兄の
兄たちの話を聞きながら正語は、やはりあまり関わりたくない家だと思った。
霊魂の有無以前に、そんなことで大金を得る家に純粋に胡散臭さいものを感じた。
一輝にはもの凄く可愛い弟がいると、兄たちから聞いたことはあるが、右から左に聞き流した。
その鷲宮一輝が去年亡くなった。
温室の中で熱中症で亡くなったという話は、正語も聞いていた。
確かに30代の男の死因としては珍しい。
「もし、亡くなった時にスマホを持っていたら、助けを呼べたって、ことか?」
「ああ、やっぱ、そうくるよね! でもね、その心配はないんだよ。
スマホを持っていようがいまいが、一輝くんは助けを呼ぶ事は、出来なかったんだ!」