第17話

文字数 1,033文字

 漫画の中で私が愛したバトルおねえさんは二人いる。一人目は「スケバン刑事」の麻宮サキで二人目は「無限の住人」の乙橘槇絵(おとのたちばなまきえ)。共通点はこの世のどこにも居場所がない人物であること。スケバン刑事はドラマが有名だが私は正直興味がない。
 麻宮サキは母親に何故か憎まれているが作者和田慎二にも理由がわからないらしい。自分を憎む母親が死刑囚でその刑の執行と引き換えに麻宮サキは少年鑑別所に入ってる身でありながら学生刑事として警察(マッポ)の手先になり事件を解決していく。私は多分麻宮サキのけっして返ることもないしでも捧げるしかない「愛」の業深さを愛していたんだと思う。今ではもうあまり使われなくなった言葉「はみ出し者」としか生きられない生き物。その苛烈な胸の内。戦う以外の選択肢のなさ。作中で普通に生きられたらとか第三者に言われてもそこへの道はなく最後には滅ぶしかない運命のおねえさん。普通に泣けてきちゃうわ。
 対して槇絵さんは(何故かさんづけしてしまう)作中の剣の戦いの最強人物で男よりもラスボスよりも強い。誰よりも強い。故に恥とされ母親と共に離縁され自棄になってる(つうか自分の運命に疲れてる感じ?)遊女やってる母親に「誰かを傷つけるよりマシだから遊女をやんなよ……」というようなことを言われ体を売っている。そこへ子供の頃圧倒的な槇絵の強さを見て彼女に憧れを抱いているどころかクソデカ感情を持っている作中の敵役ボス天津影久が身請けをして逸刀流に入って闘うことになるのだが……。こちらも強すぎるが故に普通にはなれず闘うか女を売るかの選択しかなく苦しみながら生きていく。
 ……これで何が伝わるのかわからないし昔まだ漫画版麻宮サキの魅力の言語化が出来ない頃ブログで話題に出したら速攻でドラマの話になって「そうじゃないんだけど……」とモヤったことを思い出す。
 一方「バトルお嬢さん」ともいうべき作品もある。田村由美さんの作品群がそれである。色々背負っているけど男が出来るから救われるのか?何だか微妙な感じになる。実際「巴がゆく!」を雑誌で読んだ時に「和田慎二?」って思ったからなあ……。「BASARA」も読んだし「7SEEDS」も途中まで読んではみたものの、何だか底が浅い感じがしてしまったのでバトルお嬢さんは止めた方がいいんじゃないのかな。実際そういうのはもう描きそうになさそうだけども。
 そんな私の「バトルおねえさんは業深だ」って話なんですが、好きよねホント。
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