4.ひとりになること。

文字数 366文字

 -人は自分勝手である。-

 一歩、また一歩と歩みを進める。
 近づくほどに人の声が大きく聞こえてくる。
 乗り越えてしまえば楽なのだろう。
 だがこの一歩が進めがたく、そこにある段は思っているよりも高い。
 進む。
 少しふらついた。貧血だろうか。
 もう一歩進んだ瞬間、気分は晴れやかなものになっていた。

 -苦しかったのだ。かみ合わない話が、なじめない空気が。逃げるのは卑怯で、そんなことする人間になってたまるかと思っていた。でも、矛盾するのも人間らしくていいと思うのだ。-

 数秒間の出来事だった。
 コンクリートが迫る。
 跨ごうとした教室のドアは重く、屋上の扉は驚くほど軽かった。
 風を切る音は心地よく、鼓動が高鳴り、口角が少し上がる。
 気づけば周りに人が居て、知らない大人が焦っていて、知らないみんなが泣いている。

 -人は自分勝手である。-
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