2.思慮深きこと。

文字数 419文字

 -語彙がない者の人生は実に幼稚なものである。-

 ろくに荷物の入っていないキャンバスバックをもって家を出る。
 学校までは電車で25分ほどで、サラリーマンもほとんど使わない路線なので空いている。
 心地よい揺れが学校への拒絶感を和らげてくれる。

 -クラスメイトに性格が悪いと言われている文学国語教師のことが好きだ。世の高校生が使う”性格悪い”といった安直な表現には”あけすけ”や、”毒舌”などのニュアンスが含まれているのだろう。それを表すような語彙や教養のない人間のほうがよっぽどたちが悪い。逆にストレートに物怖じせず考えを言える文学国語教師を尊敬している。-

 電車を降り、学校まで5分ほど歩く。
 その時クラスでもとびきり明るく気さくな子がおはようと挨拶をしてくれた。
 が、なにも返せない。
 言葉というものは使わなければ意味がなく、あの子からすれば私は実に語彙力の乏しい人に映っているのだろう。

 -語彙がない者の人生は実に幼稚なものである。-
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