第1話

文字数 1,119文字

俺たちは魔王の城で魔王を倒した。
思ってたより

楽だったな。

魔法使いのハルトが軽く言う。
すぐそうやって調子に乗るんだから。

後ろで地味な魔法しか使ってなかったくせに。

ルカは戦士。めちゃめちゃ強い。

ケンカすると負けるのはいつも俺。

地味とか言うなよ。

動きは小さいけどほどほど強力な魔法をかけてたんだぞ。

ほどほど……
ハルトは天才肌の魔法使いで、敵を見てどの魔法をどの出力で使えばどれくらいで倒せるというのがだいたいわかっている。
(俺とルカの攻撃も計算に入れてたんだろうな)
それで魔王を倒すのに、ほどほどの魔法でいいと判断したようだ。
(あっさり倒せちゃったし)

ハルトは軽い。けど、めちゃめちゃ頼りになる。

俺とルカとハルトは小さい頃からいつも一緒で、魔王を倒す冒険に出るのも当たり前のように一緒に出た。
(三人でいるの、居心地いいんだよな)
だから冒険に出ようと誘ったのは俺だった。

三人なら、どんなことでもできるような気がしたから。

シイナ
ん?
ハルトが俺の名前を呼んだ。
後ろの子、誰?
ハルトが俺の背後に隠れるようにいた女の子のことを言う。
魔王に囚われていたお姫様だって。

魔王の玉座の裏にあった小部屋に居たんだ。

大切な宝物のような感じで部屋にいた。
ベニティア王国

第一王女のアリーナです。

そう言って、スッとお辞儀する。
(生まれながらのお姫様って感じだ)
洗練された仕草に思わず見とれてしまった。

そうなんだ。

俺はハルト。よろしくお姫様。

爽やかにハルトは言って、ちょっとホッとした。

ハルトは女の子の扱いが上手だった。


だからモテる。

それなのに俺とルカといつも一緒だから、以前「どうしてだ?」と聞いたことがあった。

シイナたちと一緒にいる方が

気楽でいいからな。

と答えた。
そか

と俺も返事をした。

ハルトはさっぱりとしていいヤツだった。
そんな大国のお姫様が魔王に誘拐されたら

話題になるでしょう?

さっきから不機嫌なルカが言う。

お姫様に対して、どうしてそんな態度を取っているんだ?

そうならないように

手紙を書きましたから。

手紙?
俺の後ろにいる姫はうなずく。
『しばらく家出をしますが、心配しないでください』と
それは、手紙を書いたとしても心配するのでは?
なんで?
意味がわからなかった。
ここの城の魔王は

魔王になったばかりの弱いモンスターでした。

……
……
……

俺らもそれは薄々感じていた。

魔王と言っても、必ずしも強いとは限らない。

大国の姫をさらうことができれば、

他の魔王からバカにされなくて済むから一緒に来てくれと。

魔王は魔王城の数だけ居る。

大小いれたら数えきれない。

それで

行っちゃったの?

はい。
あっさりとお姫様はうなずいた。
なにか

かわいそうだったので……

……
……
……
それを倒しちゃった俺らって……
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登場人物紹介

主人公:シイナ

魔王を倒した勇者見習い。

剣も使えて魔法も使える。

極めているわけではない器用貧乏

ルカ

シイナの幼馴染で魔王を倒した仲間。

シイナのことが好きだけど言わない。

一緒に冒険がしたかったから戦士になった。

めちゃめちゃ強い。

ハルト

シイナとルカの幼馴染で魔王を倒した仲間。

軽いけれど天才肌の魔法使い。

女子からモテる。

アリーナ姫

魔王にさらわれていた大国の姫

生まれながらのお姫様

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