第3話 目的を疎名する夜

文字数 1,192文字

 マクイ、又は魔喰い。それがこの世界の混乱の元凶であり、現状こうなったルーツでもある。

 この世界には3つ災害がある。自然災害、人為災害。そしてもう一つが昔は存在しなかったらしい災害、空想災害である。

 思考あるところに災害あり。

 そんな嘘のような現実が始まったのが、ある人物が生まれた日と重なって、尚且つ名前まで天命のように被っていた。

 関連付けと忌み子の二つ名は瞬く間に広まり、その子供は翌朝には檻で暮らしていた。いわゆる隔離だ。遠ざけて蓋をしておけば、災いも鳴りを潜めるだろうと、そんな安易な考えはこれも瞬く間に泡と消えた。

 次にトライされたのが、地下牢だった。堅牢な石壁と石床で蓋をしてしまえば、今度こそ大丈夫だろうと、実施され、これも水泡に帰した。

 そもそも、何故、この殺伐たる生き馬の目を抜く戦場のような地でたかが子一人、処理しなかったのかといえば、そもそも、この地はこの空想災害が始まるまで各国、善良な民と善良な王で支えられた戦争嫌いな国ばかりの大層心の豊かな土地であった。無論、まるでなかったわけではないが、しかし、全ては空想災害が変えた。

 マクイの子をすぐに処理しなかったもう一つの理由は、かの者が王族の血筋だったからという、これは完全なる噂だが、火のない所に煙は立たぬともいう。

 かくかくしかじかをもって、マクイと名付けられた忌み子は最後には殺された。正確には殺された手筈だった。

 しかし——逃げた。しかし、逃げた先で野垂れ死んだそうだ。

 そうして、魔喰いの猛威は完全に去ったはずだった。

 10年が経った。

 平和な10年はしかし、生きていた、というレングランド最大の凶報が広がってすぐ、毛色を変えた。

 発覚したのは、今現在より半年前の事。

 それを見た、という人物が一人現れると、次々に目撃証言は集まった。

 その忌み子の出現によってまさにタイミングを同じく、再び魔喰いによる災いがこの地を襲い、人々はいがみ合い、争い、死人も出て、誤解が誤解を呼び戦争の雰囲気を醸していた。

 そんな最中ずっと逃げ続けていたそのマクイなる人物がようよう捕まった。

 マクイは女だった。まだ16,7の子供に毛が生えたような年齢だった。

 一緒に逃げ隠れしていた男も捕まっていた。同じ程度の若さの青年だった。

 男の名はラスト。僕だ。

 当然、初めに彼女を逃がしたのも——僕である。

 そして当然、この物語の主人公も——僕である。

 僕はまたこれから彼女を取り戻しに行かなければいけない。

 この物語の主人公として。

 いや、男として。

 いや、ただ一人の仲間として。

 この離れ島ルシル。天然の牢獄を抜け出して、もう一度。

 そう願いながら、月を見ながら微睡み、気付くと朝。

 ルシル島二日目の朝が来た。
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登場人物紹介

後々記載するにゃ

実は前に出した分を削除してしまったので再投稿にゃ

因みに吾輩は作中で喋る猫として登場するにゃ

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