第1話 僕のアルバイト

文字数 7,625文字


 四月の下旬に入ったある日の午後、僕は都内にある葦田大学のキャンパスで1回生のための一般教養の講義を聞いていた。
 天気が良いので汗ばむくらいに暖かく、百人以上収容できる大講義室は陽気に誘われて眠気をもよおしそうだ。
 講義が終わると僕はそそくさと荷物をまとめた。
「今日はサークルの見学に行くのだろう」
 鞄にノートを入れていた手を止めて顔を上げると、同じクラスの雅俊が鞄を肩にかけてこちらを見ている。
「今日は四時から同じ学科の修士課程の人と待ち合わせしているんだ」
「何それ、徹おまえ何かしでかしたのか」
 雅俊にとっては上級生から呼ばれることはイコール叱られる話に直結するらしい。さも
 無ければ僕の素行が悪いというイメージでもあるのだろうか。
 僕は少しムッとした表情で雅俊に答える。
「ちがうよ。高校生じゃあるまいし悪戯して呼びつけられたわけではないよ」
 雅俊とは大学入学後に知り合ったのだが、新入生歓迎会の日に終電に乗り遅れて泊めてもらって以来、互いに気安く話ができる友人的な立ち位置だ。
「文化人類学研究室のフィールドワークを手伝ってくれって話みたいだ」
 考えていることが表情に出てしまう僕は少なからず自慢げに話していたのだろう。聞き上手でもある雅俊はうまく話を合わせる。
「へえ、いいじゃん。その手の活動をしていたら就活の時にも履歴書に書けるんだろ」
「そうらしいけど、今回の話は研究室の修士課程の人が持ってきた話だから、下請け仕事の更に孫請け的な雰囲気ではないかな」
「違いない。それじゃ面白いサークルがあったら明日教えてやるよ」
 雅俊はそのまま立ち去る素振りだったが、足を止めると僕の顔をしげしげと見てからおもむろに話を切り出した。
「今度な、高崎の知り合いつながりで合コンをするんだけど、一緒に行かないか」
「合コン? 俺はそういうのは慣れてないから何を話したらいいかわからないな」
 雅俊はやれやれと言う表情で肩をすくめて見せる。
「それは新入生歓迎会の様子でよくわかっているよ。君は懇親会の席で女子学生相手にマニアックなゲームの話ばかりするかと思えば、いきなり柳田邦夫論を始める始末だったから俺も合コンの席を仕切ってほしいなどと期待しているわけではない」
 僕は自分が適切な話題を使っていなかった事をおぼろげながら自覚していたが、雅俊の指摘に打ちのめされた。
「それでは、僕は何のために合コンに行くというのだ」
 僕が憮然とした表情で尋ねると雅俊は僕の鼻先に人差し指を突き付ける。
「はっきり言ってお前はおとりだ。サラサラヘアのイケメンにほどほどの身長、それだけ恵まれた条件を活かすだけの社会的な素養がないのならば、むしろ黙って座っていてくれればいい」
「合コンに出席して黙って座っていることに何の意味があるんだよ」
 僕の抗議を雅俊はニヤリと笑って受け流した。
「おとりと言っただろう。男子側にイケメンが一人いるだけで女子グループの食いつきは劇的によくなる」
「そ、そんなもんなの?」
 雅俊の話を聞くうちに、新入生歓迎会等でいい雰囲気で接してくれていた女子学生たちが僕と話をするうちに次第に引いて離れていくような気がしたのは、気のせいではないことがはっきりした。
「話のネタは俺が振るから、おまえは適当に相槌を打っていればいいんだ」
 僕は少なからずムッとしたが、雅俊は僕のことを馬鹿にしているわけではなく、むしろ気遣っていることも理解できる。
 僕は手短に答えた。
「わかった、考えておくよ」
 雅俊は僕の返事を聞くと片手を上げてから去っていく。雅俊は鳥取県出身だと聞いていたが、東京での大学生活にすんなりと適応しようとしている。内気な性分の僕は強気に生きていける彼がうらやましかった。
 建物を出ると、キャンパスには同年代の学生があふれていた。キャンパスの並木には緑の芽が吹き、青い空に映えている。
 学生の多くは全国各地から集まってきているので見知った人間はほとんどいない。
 義務教育の学校のように、近所に住んでいるというだけでいつも同じメンバーが教室という箱に詰め込まれるのとちがい、自由な雰囲気で勉強できるので僕は大学が気に入っていた。
 僕は大学のキャンパスを出ると、最寄りの駅近くにあるカフェに向かった。
 先輩が指定した亀田コーヒー店の中は、コーヒーの美味しそうな香りが立ちこめていた。店内に先輩の姿を探していると背後から声が聞こえた。
「内村君、ここよ。ちゃんと来てくれたのね」
 僕を呼び出した文化人類学研究室の修士課程の西村さんはウエイティングスペースで僕を待っていた。
 ジーンズにスエット姿の僕に対して、彼女は就職活動用らしき黒のスーツを着こなして、大人の雰囲気を醸し出している。
 僕は席についてからメニューを見て、コーヒー一杯が六百円以上するのを見て、自分の財布の中身が心細くなってきた。
 コンビニでおいしいコーヒーが百円で飲めるのに、専門店価格は新入生に優しくない。
 僕がそんなことを考えている間に、西村さんはスタッフにあれこれオーダーしている。
「内村君飲み物はコーヒーでいいわよね」
「はい」
 僕は急に呼びかけられて返事をする声が裏返ってしまったが、先輩は何事もなかったように笑顔を崩さない。
 彼女は自分のバッグの中を探していたが、やがて、地図をプリントアウトした紙切れを取り出した。
「君にお願いしたいのはね、この地図に示したカフェでいざなぎ流の陰陽師が神事を行っているという噂の真偽を確かめてほしいの」
「陰陽師ですか」
「そう。君は確か新人歓迎会の時に柳田国男が好きだと言っていたでしょう。今回のミッションには適任と踏んだのよ」
 そういえば、自己紹介の時にネタがないのでそんなことを言った記憶がある。
 懇親会の時に彼女が声を掛けてくれたのは、その一件があったからに違いない
「そもそも、いざなぎ流とは何ですか」
「私もよく知らないけど、四国の山奥に残っている神道の一派でアミニズム的な要素を強く残しているらしいの。本当は陰陽師という名でカテゴライズするのは正確ではないのかもしれないけれど便宜上そう呼んでいるの」
 彼女は説明を追加しようとしたものの、それ以上の知識は彼女も持ち合わせていなかったらしく結局諦めた様子だ。
「本当は、私が栗田准教授から仰せつかっているのだけど、就活もあるからなかなか時間がとれない訳。」
 はからずも、僕が雅俊に言ったとおり彼女は准教授から頼まれた仕事を孫請けに出したらしい。
「僕は何をしたらいいのですか」
「そうね、不眠とか、体調不良とか適当な理由を訴えて問題の陰陽師にお祓いのたぐいをしてもらって。その上でどんな様式で祈祷を執り行ったかレポートにして報告して」
 その時、注文した品物が来たので西村さんは話を切った。彼女は飲み物だけでなくパンケーキにソフトクリームを乗っけたようなやつを僕の分も注文していた。
「調査にかかった経費はこちらで持つから、細大漏らさず領収書をとっておいて。そのうえで、報償費として一万円支払うわ」
 学生アルバイトの単価としては破格の報酬だ。しかし、内気な人間である僕は知らない場所に乗り込んでいくのは気が引けた。
「その祈祷はネット予約とかできるのでしょうか」
「それほど本格的に営業している訳ではないみたい。あくまで口コミで広まっている程度ね。その地図のカフェが依頼の窓口と思われるので現地に行って聞いてみるのが最速だと思うわ。これも社会勉強だと思ってトライしてほしいな」
 西村さんと面談して依頼の詳細まで聞いた後では断れる雰囲気ではなく、僕は引き受けることにした。
「やってみます。報告はいつまでに上げたらいいのですか」
「もともと、栗田准教授の趣味的な要素が強いからそんなに急がなくてもいいけど、五月末までには報告してね」
 いつの間にかパンケーキを平らげていた彼女は、支払いは済ましておくからゆっくりするようにと言い残して伝票を持って席を立った。
 就職を前にした人は本当に忙しいらしい。
 渡された地図には彼女の携帯番号やメールアドレスも書いてあり、僕は彼女の手下としての地位を得たことを知った。
 地図に示されているのはカフェの名前と所在地で、場所は下北沢界隈のようだ。
 僕は赤羽の自宅から大学に通っているので方向が違うが。新宿から小田急線に乗れば下北沢はそんなに遠くない。
 僕は実際に調査に乗り込むかは別にして、問題のカフェを下見に行くことにした。
 下北沢駅で電車を降りて、駅前の通りに出ると高層建築は少なく通りも狭いが、いろいろな店が建ち並んでいて物珍しかったので、僕は少し駅周辺を見物することにした。
 しかし、それが大きな間違いだったらしく、駅の周辺を散策するうちに僕はあっという間に道に迷っていた。
 道が細くて、似たような町並みが続いている上に、見通しもきかないから町全体が迷路を形作っているようだ。
 しばらく歩いた僕は露天でマッサージ屋をしているレゲエ風の髪型をした男性に気付いて愕然とした。
 その人は駅を出た直後に見た覚えがあり、道に迷ううちに駅の出入り口近くに戻ってしまっていたのだ。
 僕はしかたなくスマホに頼ることにした。
 スマホの地図アプリに目的地を入力して、アプリの画面を見ながら慎重に進み、画面上に東北沢駅が見え始めたころに僕はやっと目的のカフェを見つけた。
 そのカフェは、白を基調にしたエクステリアと出窓が目立つ建物だった。
 店の前は沢山の観葉植物の鉢植えが並び、その奥には小さな花壇もある。
 道路脇には中型の赤いバイクが置いてあった。
 僕は看板を見てカフェ青葉という店名を確認すると本日の偵察任務は終了として、家に帰ろうとした。
 しかし、後ろを向いて帰ろうとした僕は、目の前に品のいい老婦人が立っているのに気づいた。
 その女性はエプロンをかけているのでカフェ青葉のスタッフと思われ、箒を持っているところを見ると店の前の道路を掃除していたところに違いない。
 振り返りざま、しっかり目が合ってしまったので、僕は軽く会釈して通り過ぎようとしたが彼女は僕に話しかけた。
「まだ営業していますよ。コーヒーでも飲んで行きませんか」
 ちょっと押しつけがましい気がしたが、僕は彼女に勧められるままに店に入ることにした。
 関係者に顔が割れてしまったから、無理に帰ると今度来たときに悪目立ちすると思ったのだ。
 老婦人と一緒に店内に入った僕は、思ったより広い店内に驚いた。間口は狭いが奥行きは広い作りらしい。
「いらっしゃいませ」
 店の奥にあるカウンターの中からスタッフの女性が挨拶する。カウンターの手前にはテーブルもいくつか並んでおり、インテリアはシックな雰囲気でまとめられている。
「あの人がオーナーですか」
 僕が問いかけると、僕の横に立った老婦人は自分を指さした。
「オーナーは私」
 彼女は「私」を一音一音区切って発音する。
 僕は彼女が気を悪くしたのではないかと慌てたが、彼女は穏やかな笑顔を浮かべて言う。
「ごゆっくりどうぞ」
 そして、老婦人は箒を持ったまま店の奥のスタッフ用らしきドアを開けて中に入っていった。
 残された僕は改めて店内を見渡した。僕の性格は、お店のスタッフがカウンターに一人いるシチュエーションだと店の端の方のテーブルにこっそり座るタイプだ。
 しかし、今日は調査任務を帯びている訳で、お店のスタッフに聞き込みをしなければ話にならない。
 僕は勇気を出してカウンターの方に歩み寄った。
「何にいたしますか」
 スタッフの女性は、カウンターの内側で大きな機会をいじっていたので、バリスタと呼ばれる職種かもしれない。
 その女性はカウンター越しにメニューを渡してくれたが、長い髪をポニーテールにまとめ、黒のパンツに白いシャツ、その上に黒のカフェエプロンを付けたのがすごく様になっていた。
 僕は先程コーヒーを飲んだばかりなので、カフェラテを頼むことにした。
 スタッフの女性がカウンターの中でラテマシーンを操作している間に僕は陰陽師の手がかりを探そうとした。
 店内は趣味の良いインテリアでまとめてあり、陰陽師を連想させる雰囲気は見当たらない。
 調査に来たとはいえ、場違いな雰囲気の陰陽師の話は切り出しづらい。
 しかし、カウンターの上のメニューを何気なくめくった僕はスツールからずり落ちそうになった。
 飲み物や軽食を表示しているページに続いて見開きを全部使って「祈祷、呪詛返し等お気軽にお申し付け下さい。いざなぎ流陰陽師」と書いてあったからだ。
 文字の背景には先ほどのバリスタらしきスタッフの女性が巫女姿で、棒の先に紙のひらひらしたのを着けたものを持った写真が使われている。
 僕は祈祷はともかくとして、呪詛返しという文言が気になった。とてもカフェで気楽に依頼する字面ではない。
 その時、スタッフの女性がカフェラテのカップを僕の前に置いた。彼女はカウンター越しに渡さずにわざわざ回り込んで僕の横に立ってサーブしてくれたのだ。
 僕は開いたままのメニューの写真を指さして尋ねた。
「すいません。あなたがいざなぎ流の祈祷をされるのですか」
「そうですよ」
 彼女は何の躊躇もなく答えた。黒目がちな大きな目と整った鼻筋が印象的な美人だ。
「僕もお祓いしてもらいたいのですが」
 勇気を出して、僕は彼女に申し出た。
 頭の中では西村さんとの会話をリプレイして、お祓いしてもらう理由の部分を思い出そうと必死だ。
「ほう。何故お祓いが必要なのですか」
「最近、よく眠れないことが多いのでなんとかしたいと思いまして」
「基本料金で二万円いただきますがよろしいですか」
 何故、不眠でお祓いが必要なのか、自分でもよくわからない理由を告げてしまったが、彼女はあえて指摘することはしない。
 僕は慌ててうなずいた。
「はい。大丈夫です」
「それでは準備がありますから、私が呼ぶまでお待ちください」
 彼女はさりげなく告げると、僕の目をじっと見つめてから店舗の突き当りの壁のドアを開けて奥に入った。
 僕は彼女が妖の類で「呼びに来るまでは決してここを開けてはなりませぬ」と告げて奥に姿を消したような気分がぬぐえず、閉じたドアから目が離せなかった。
 その時、僕が見つめていたドアが開き、僕は思わず身を固くしたが、入れ替わりに入って来たのは、お店のオーナーの老婦人だった。
「不眠解消のためにお祓いを頼んだそうですね」
 老婦人はスタッフの女性とは違い遠慮なくつっこみを入れてくる。
「ええまあ」
 僕は言葉を濁しながら、カップに目を落とした。カップのカフェラテの表面にはカフェラテの泡の濃淡を使って葉っぱの絵が描いてあった。
 ラテアートというやつだ。
 芸が細かいことに葉っぱには虫食い穴まで描かれている。
 僕が飲むのが惜しいような気がしながらカフェラテのカップに口を付けていると、オーナーは聞かれもしないのにスタッフの女性の話しを始めた。
「最近あの娘の巫女姿が目当てで来る客が増えてね。繁盛するのはいいけど、少し趣旨が違うね」
「本来はどんな客に来てほしいのですか」
 その辺は准教授の依頼とも関連があるからぜひ聞いておきたいことだ。
「そうね、私たちの目的としては悩みを持っている人や、困っている人を彼女のいざなぎ流の術を使って助けたいと思っているので、興味本位ではなく自分の困ったことを解決したいと考えている人に来てもらいたいわね」
 メニューの続きに陰陽師の広告を掲載するくらいだから、オーナーも陰陽師の活動を承認するだけでなく後押ししている印象が強い。
「そもそも、カフェで陰陽師がお祓いするのはミスマッチな感じがするのですけど」
「あら、私は占いをして身を立てていたのよ。占いでコツコツと貯めたお金を使って念願だったカフェを始めたの」
 それでも、陰陽師がカフェに潜んでいる理由にはなっていない。僕がそれを指摘するとオーナーはフフッと笑って話を続けた。
「アルバイトで雇ったあの娘と話をするうちに彼女がいざなぎ流という神道の一派を伝える末裔だとわかったの。それは厳密には陰陽師でも神道でもない不思議な術を使う一派でもちろん占いとも違うけど、私の占いの時の顧客を押しつけてそのトラブルを解決してもらうことにしたのよ」
 オーナーの話は漠然としていて実態は調べてみないとはっきりしない。僕は、あまり想像したくないと思いながら彼女に尋ねた。
「あなたも巫女の格好をするのですか」
「私は六星占術だったので巫女のコスプレなんかしませんよ」
 オーナーは僕の見当違いな質問に怒りもせずにクスクスと笑う。
 その姿は街角で占いをしていたというより、退職した夫とカフェを始めた品のいい奥様といった雰囲気だ。
 その時、奥のドアが開いてスタッフの女性が顔を出した。
「準備ができました。どうぞ」
 僕はカフェラテを飲み干すと、オーナーに案内されてお店の奥にあるドアを開けた。
 スタッフオンリーの空間に足を踏み入れるのは、招かれた上でそうしていても何だかドキドキする。
 ドアの奥は通路になっており、左手が和室になっていた。
 部屋には白木で作ったテーブルがあり、丸い鏡と葉っぱが着いた木の枝が置いてあるがそれはむしろ作業テーブルのように見え、部屋の中央の畳の上に設置された蔓を編んだ土台の上に、竹と和紙の切り紙細工を積み上げた造形物が存在感を放っている。
 スタッフの女性は赤い袴と白い半着の巫女姿に着替えていた。バリスタの仕事をしていた時、ポニーテールにしていた髪は降ろし、ストレートのロングヘアが白衣に映える。
 僕は案内されて座布団に座ったが、彼女は僕の目の前で室内に置いてあった日本刀をさやから抜きはなった。長めの刀身がぎらりと光る。
 思わず身を引いた僕を尻目に、彼女は長い刀身を使って白木のテーブルの上で和紙を切り始めた。
 僕はこっそりスマホを出して写真を撮った。もちろんシャッター音は消音してある。
 しばらく刀を振り回していた彼女は、できあがった和紙の造形物を部屋の中央に置いた祭壇のようなものに納め、静かに詠唱を始めた。
 彼女が切った紙は立体感がある形状に仕上がっており、目に相当する形も識別できる。
 僕は詠唱を聞き分けようと目を閉じて聞いていたが、その声は唐突にやんだ。
 彼女が詠唱を途中で中断したと思って、僕は目を開けたが、目の前の光景に凝固した。
 いつの間にか、彼女は再び日本刀を抜き放ち、切っ先を僕の喉元に突きつけている。
「貴様、不眠症を直そうとしてここに来たわけではあるまい、何をしに来たか説明してもらおうか」
 彼女はあからさまに怒りの表情を浮かべるわけではなく、整った顔は無表情なまま、冷ややかに僕を見下ろしている。
 僕は身動きできない状態で、視線を日本刀の刃先に移し、これって十分やばいよなと自問していた。

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