第1話

文字数 1,268文字

 去る(2023年)12月7日の朝礼で、職員の永年勤続表彰があった。
 当院には約400名の職員がいる。毎年この頃に、永年勤続表彰を行う。今年は勤続10年が14名、20年が8名、30年が5名の計27名が表彰された。当院は開院して33年経つので、勤続30年はほぼオープニング・スタッフに近い。まさに病院の歴史の生き字引、語り部だ。
 厚生労働省のデータによると、2019年における新入社員の3年以内の離職率は約3割である。新入社員の10人に3人が3年以内に職場を辞めて行く。また職種別では看護職に限ってみれば、2019年の全国の看護師の離職率は 11.5%、2022年の新卒看護職員の離職率は 10.3%であった*。(*日本看護協会 広報部 :2023年3月31日による)
 それに比べると当院の離職率は低い。職員全体の離職率は 6.4%、看護職では 3.9%である。
 離職の理由としては、雇用条件(給料や待遇、仕事内容など)への不満、対人関係のストレス、企業風土に馴染めない、スキル・アップ、将来のためなど様々(さまざま)である。
 自分ひとりでやる個人商店ならともかく、生まれ、育ちも違う複数の人たちが集まって一緒に仕事をする職場では、全てに満足できる職場環境は滅多にない。職場の良い所の最大公約数を取って良しとするのがいいと思う。

 そして、当院で職員と一緒に仕事をして感じることがある。彼らは(あわ)てることも急ぐことも焦ることもなく、コツコツと汗水たらしてよく働く。ホント、頭が下がる。
 ある時、ふと思った。これは庄内の米作りの地域柄が大きく影響しているのではないか?と。先祖代々の土地を耕し、年月をかけて豊穣な土地ができる。米も品種改良に改良を重ね、歳月をかけてブランド米を作る。田植えを急いでも決して米は作れない。相手は自然だ。雨、風、台風にじ~っと耐え、やっと収穫に至るのだ。
 写真1は 2018年9月29日、鳥海山を背景に、重く実った穂をたれて黄金色の絨毯となった収穫直前の田んぼを走る羽越本線上り特急「いなほ」である。

 そして写真2↓は 2023年11月3日に撮影した山居(さんきょ)倉庫の(けやき)並木である。

 山居(さんきょ)倉庫は 1893(明治26)年に米の積出港として賑わった酒田港に建てられた米保管倉庫である。白壁、土蔵づくり9棟からなる倉庫の米の収容能力は 10,800トン(18万俵)で、夏の高温防止のために背後に(けやき)並木を配し(写真2↑)、内部の湿気防止には二重屋根にするなど、自然を利用した先人の知恵が生かされた低温倉庫だった。2022(令和4)年9月までの 129年間、現役の米倉庫として活躍した**。❨**山居倉庫 公式ホームページを参考にした❩
 樹齢 150年以上の 35本の(けやき)の連なる(けやき)並木は、JR の観光ポスターにもなった。

 「永年にわたって当院で勤める職員は当院の宝です。彼らには、経験とそこから得た知恵があります。それらはお金には換算できません。そこに価値があるのです。…。」
 話を聴く職員は皆、いい顔をしていた。

 んだんだ。
(2023年12月)
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