目覚め

文字数 751文字

「私」は目覚めた。

そこには人気などこれっぽっちもなかった。

意識がはっきりとしない。ここはどこだ。
自分が今頭の中に浮かべているこの「言葉」は…
う…!
頭が割れそうだ。痛覚が「私」を襲う。
ここはいったいどこで、「私」が何者であるかを把握する暇がなかった。

何分たっただろうか、ようやく痛みが引いてきたその時…
…います、旦那様。起床のお時間でございます。
…っは!?
ああ、ようやくお目覚めになられました!
旦那様がお目覚めになるまで、
1年と8ヶ月3時間46分ほど待ちこがれたかいがありました!
では、腕を振舞って私が朝食をお作りに…
いやっ…!ちょっと待ってくれ…!
色々説明を省いてもらっては困る!
ああ、失礼いたしました。
私は、旦那様専属の教育特化型女性アンドロイド
『LWA-001』でございます。以後お見知りおきを…
そういうことではなくて…いや、それも一つだけど!

ここは一体…なぜ私は崩壊したビルの中に?
他の奴らはどこに消えた?

しかもおはようと目が覚めたら目の前に君しかいない。
私は裸同然。アンドロイド?専属?何がどうなっているんだ。
かしこまりました、旦那様…ですが、その全てを話すには
ここを脱出してからにしておきましょう。
彼女の言う言葉の意味をわからせるように、
ビルのあちらこちらから崩れる音が聞こえている。
1年と8ヶ月もこんな危険地帯に放るほうが
おかしいと思うんだがな。
1年と8ヶ月3時間46分ほど、ですわ。
まあ私が再起動する前のことはわかりかねますが。

では旦那様、私の誘導する方へ。
幸いにも今は日の差す時間でございますから
足元を良く見て注意してください。
質問はまだ山ほど残っているが、
朽ち果てたビルは今にも崩れそうな感じだ。

今は君に命を預けるしかない、か…
どうにでもなるがいい。
生きて出たら色々聞かせてもらうぞ。
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登場人物紹介

地上最後の人類。崩壊したビルの中で目覚めた。
機械文明の中で生活をしつつ、自分が何者であるかを探る。

最も人間に近い知能をもつ教育特化型女性アンドロイド。
膨大な知識を保有する記憶チップを持つ一方で、未知の出来事にはうろたえてオーバーヒートしてしまう。

兎のような形をした友好的な宇宙人。ミミナガ星雲32番惑星出身。
本来は移住計画のための共存交渉人だったが、人類が滅んでいたのでちゃっかり移住した。

ヒト型の宇宙人。天馬銀河700番惑星出身。
「私」が何者かを知っているようなそぶりをみせる。

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