ちょっとヨレてるのろけ話
文字数 2,000文字
っは、いかん……空腹のあまりに一瞬我を忘れたぞ……!
しかしいかんな、生来の化け物嫌い、人嫌い……。静かな
張り紙
『お手伝い求む。出来ればほどよく肉づきの良い、食べごろのぴちぴちの若い
あの……わたし、アロコスという今年十七の娘です……。
実は先年、父が
わたし、ここ以外にもう行く場所がないのです! どうかこのお屋敷においてくださらないでしょうか!?
はい、山菜を
季節が早春で幸いでした、このお屋敷のまわりには山菜がたくさんに生えております!
ご主人さま、ご貴族ですから山菜をお召しになったりはなさらないのですね? けれども大丈夫、おなかがお空きでしたらこの山の珍味、きっとごちそうに感じますわ!
幸いにしてこのアロコスも山の娘、ご貴族のごちそうは作れませんが、山菜の料理の仕方は心得ております!
今しばらくお待ちになってくださいね、このアロコス、ご主人さまにほっぺたが落ちるくらいに美味しいお料理をこさえますわ!
ははは、まあそう言うな! 何と言ってもアロコスは可愛いし優しいし気立てが良いし、妻としても言うことなしだ!
この頃は山菜ばかり食いすぎて、妖力も弱って寿命すら人並みになってきたのを感じるが……。
まあそれも良い、人間の妻と同じく寿命を迎えて、今度転生したら「化け物どうし」か「人間どうし」に生まれ変わって、当たり前に恋をして幸せに生きて死んでいこうと……そう約束をしとるのだ! ははは!!
山菜か? それは塩漬け、なけなしの妖力漬けという手があるさ。
はは、とにかくそんな目で見るな! においから察するにお前も化け物、人間に牙を抜かれた同族の姿は情けなくも映るだろうが、どうか笑って流してくれ! なんせ妻の山菜料理は、へたな人肉よりもっとずっと美味いのだからな!!……まったく、仲の良いご夫婦だったな……。
おかげで食事にありつけなかった。「化け物の魂を食う」特殊な生き物の自分だが、あんなおしどり夫婦の片割れの命を奪うなんて、とうてい出来るもんじゃない!
まったく、末永く爆発しろだよ!!