第1話

文字数 973文字

 先日、私の飲酒歴上、最強の飲み方で酒を呑んだ。
 場所は山形県庄内町のとあるスナック。そこには飲み友達に誘われて数回行ったことがあった。歳の頃 50過ぎ?の気風(きっぷ)のいいママさんが一人で切り盛りしている。
 ある晩、ふと店に入った。カウンターの端っこに常連客が一人座っていた。私は一つ席を空けて隣に座った。客は私と常連客の二人とママさんだった。他愛のない話が弾んだ。
 翌週、何故か思い出したかのようにまたそのスナックに入った。前回と同じように常連客がカウンターの隅の定位置に座っていた。私も一つ席を空けて隣に座った。
 不思議なことに先週と同じような配置になった。
 あ~でもない、こ~でもない、んだの~、んだんだ。
 取り留めもない話題に大いに盛り上がった。ちょうど金太郎飴を切って1週間後にまたくっつけたような妙な親近感と連帯感が生まれた。
 「もう、今晩は客は来ねえの。看板だな。」
 「んだんだ。」
 「そうだぁ、思い出した。梅酒をもらったから飲もうか?」
 「賛成!!」
 事態は展開した。その梅酒が凄かった。それはウオッカに梅を漬けた梅酒だった。令和3年7月に作られた。
 「そんな強い梅酒を呑むのは初めてだ。」
 「俺もだ。」
 ママさんが注いでくれたグラスの梅酒を口に含む。強烈な青梅の香りと氷砂糖が入れてあるのか、甘酸っぱい味がした。ウオッカのアルコールの味はしなかったが、喉越しは爽やかどころか焼けるように重かった。
 「ふ~、くるねぇ~。水飲も。」
 思わず手にした飲みかけの氷の入ったグラスをごくごくごと飲んだ。ほのかな苦味を感じたが、軽いすっきりとした飲みごたえだった。
 「アッ、先生、それ『(さわやか)*』 (*地元産の甲類の焼酎。アルコール度 25度)の水割りだよ。」
 「おっ! そうだったか。でもこれ、行けるよ。」

 かくして「ウオッカに漬けた梅酒を、地元産の焼酎『爽』の水割りをチェイサー(追い水)にして飲む」最強の酒の飲み方で酒を呑んだ。(写真↓)

 「締めはやっぱしお米だよ。新米があるよ。」
 「それはいい考えだの。」
 「よし、皆の前で炊こう。」
 カウンターで、雪若丸の新米を携帯コンロの土鍋で炊いた。(写真↓)

 強火で湯気がぶくぶく噴き上げたらとろ火にして、皆、黙って土鍋と炎に見入っていた。
 いい酒宴だった。❨終わり❩

 んだの~。
(2023年11月)


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