第14話 冴渡という名の変態刑事
文字数 1,689文字
Mr.ichimotsu(ミスターイチモツ)が撮影した動画には、ロッカールームで死んだほのかの死体の横でオナニーを始めるジン子の姿が映っていた。警視庁捜査一課の捜査員たちは、その動画を食い入るように見つめていた。さすがM探偵の艶技。しかし、残念な事にそこには冴渡の姿はなかった。
その少し前に取調室でMr.ichimotsuこと岡本直哉の取り調べが行われ、彼が直接の首謀者では無いということは分かっていた。
捜査一課の面々はあの日以来警察に顔を出さない冴渡のことを悪く言う者も現れていた。
「知らねーってほんとに! オレはただ、69(FC69のこと)から依頼されて盗撮してただけだよ!」
「依頼? じゃ向こうから金を受け取ってたのか?」
憮然とした態度で岡本はうなづいた。
「あの日もあそこで盗撮しろと?」
「そうだよ……ほのかっていうAV女優の着替えを撮れって依頼が来て……向こうからこの時間にここに隠れてろって。で、時間通りに行って隠れてたら確かにAV女優が入ってきた。でも、すぐにぶっ倒れたんだ。物凄い音がして……あれは……水の音だ」
「水の音?」
「……悲鳴が聞こえて、ゆっくり見に出たら、そのAV女優が死んでて……んで、知らない女が来て……逃げそびれたらオナニーし始めたんで……そりゃ興奮して撮影するだろ?!」
「刑事に同意を求めるなっ!」
取り調べで分かった事はすぐに捜査本部に上げられFC69が何らかの事情を知っているのではないか?という結論になった。
「令状とれ。すぐに踏み込むぞ。FC69に」
「しかし、FC69は特に令状を取れるような事をしていないですよ」
「無修正でもなんでもあるだろ!?」
「それが……怪しげな動画はすべて削除されているんです。まるでクリーンなサイトにして、こっちに来させないようにしてるみたいです」
「じゃ任意で事情聴くしかないか」
「いや、あそこは暴力団がらみで組対に協力要請しないといけないんですが、今、河内組の内部抗争で忙しいからなぁ……」
「よし。とりあえず保留だ。引き続きサイト内の監視はしておこう」
結論が早い。彼らは事件を解決するより、今日何時に帰るかの方が重要だったのかも知れない。
「しかし冴渡さんはどこに行ったんだ?」
「知るか。あいつ、病院でM探偵の処女膜を調べろとほざきまわったらしい。頭おかしいんじゃないか?」
冴渡のいない捜査一課は変態色が薄くなった代わりに、情熱も薄味になっているようだった。
彼はいったいどこに行ったのだろう。
高台にある住宅街の一角に不釣り合いなビルがあった。シャッターは閉ざされたままであったが、その上部には監視カメラが据え付けてある。
暴力団の事務所だと思われても仕方ない。しかし、ここがFC69の本社であった。
冴渡はDNNNの会長亀吉とすでにズブズブの関係にありながら(サイト内のAVを全て無料で視聴できるようにしてもらった)、今、その抗争相手であるFC69の本社前に立ち尽くしていた。
昨夜、DNNNの会長亀吉と密かに会った冴渡は、M探偵のAVデビューを少し遅らせてほしいと頼み込み、これからFC69に乗り込むつもりだと言った。
「それは危険です。冴渡さん。あそこはバックに暴力団がいる組織だ。きちんとした令状なり捜査手順をとらないと、なにをされるかわかりません」
「わかってる」
冴渡はそう言うと警察手帳をテーブルに置いた。
「俺はひとりの人間としてFC69に話を聞きに行く」
「ダメだ! 危険すぎる!」
冴渡は苦笑した。
「会長……大げさだよ」
FC69の本社前に立つ冴渡は、湿気を含んだ生暖かい風を受けていた。
結果的に冴渡の言うようにジン子の処女膜が再生していたのは言うまでもない。ジン子は死の淵を彷徨い、そして帰ってきた。その代償として処女……というか羞恥体質のようなものを失ったのであった。
ジン子をそんな風にしてしまったのは自分の責任だ。
冴渡は今、深く深呼吸して、誰も寄せ付けようとしていない重い扉を開いた。
その少し前に取調室でMr.ichimotsuこと岡本直哉の取り調べが行われ、彼が直接の首謀者では無いということは分かっていた。
捜査一課の面々はあの日以来警察に顔を出さない冴渡のことを悪く言う者も現れていた。
「知らねーってほんとに! オレはただ、69(FC69のこと)から依頼されて盗撮してただけだよ!」
「依頼? じゃ向こうから金を受け取ってたのか?」
憮然とした態度で岡本はうなづいた。
「あの日もあそこで盗撮しろと?」
「そうだよ……ほのかっていうAV女優の着替えを撮れって依頼が来て……向こうからこの時間にここに隠れてろって。で、時間通りに行って隠れてたら確かにAV女優が入ってきた。でも、すぐにぶっ倒れたんだ。物凄い音がして……あれは……水の音だ」
「水の音?」
「……悲鳴が聞こえて、ゆっくり見に出たら、そのAV女優が死んでて……んで、知らない女が来て……逃げそびれたらオナニーし始めたんで……そりゃ興奮して撮影するだろ?!」
「刑事に同意を求めるなっ!」
取り調べで分かった事はすぐに捜査本部に上げられFC69が何らかの事情を知っているのではないか?という結論になった。
「令状とれ。すぐに踏み込むぞ。FC69に」
「しかし、FC69は特に令状を取れるような事をしていないですよ」
「無修正でもなんでもあるだろ!?」
「それが……怪しげな動画はすべて削除されているんです。まるでクリーンなサイトにして、こっちに来させないようにしてるみたいです」
「じゃ任意で事情聴くしかないか」
「いや、あそこは暴力団がらみで組対に協力要請しないといけないんですが、今、河内組の内部抗争で忙しいからなぁ……」
「よし。とりあえず保留だ。引き続きサイト内の監視はしておこう」
結論が早い。彼らは事件を解決するより、今日何時に帰るかの方が重要だったのかも知れない。
「しかし冴渡さんはどこに行ったんだ?」
「知るか。あいつ、病院でM探偵の処女膜を調べろとほざきまわったらしい。頭おかしいんじゃないか?」
冴渡のいない捜査一課は変態色が薄くなった代わりに、情熱も薄味になっているようだった。
彼はいったいどこに行ったのだろう。
高台にある住宅街の一角に不釣り合いなビルがあった。シャッターは閉ざされたままであったが、その上部には監視カメラが据え付けてある。
暴力団の事務所だと思われても仕方ない。しかし、ここがFC69の本社であった。
冴渡はDNNNの会長亀吉とすでにズブズブの関係にありながら(サイト内のAVを全て無料で視聴できるようにしてもらった)、今、その抗争相手であるFC69の本社前に立ち尽くしていた。
昨夜、DNNNの会長亀吉と密かに会った冴渡は、M探偵のAVデビューを少し遅らせてほしいと頼み込み、これからFC69に乗り込むつもりだと言った。
「それは危険です。冴渡さん。あそこはバックに暴力団がいる組織だ。きちんとした令状なり捜査手順をとらないと、なにをされるかわかりません」
「わかってる」
冴渡はそう言うと警察手帳をテーブルに置いた。
「俺はひとりの人間としてFC69に話を聞きに行く」
「ダメだ! 危険すぎる!」
冴渡は苦笑した。
「会長……大げさだよ」
FC69の本社前に立つ冴渡は、湿気を含んだ生暖かい風を受けていた。
結果的に冴渡の言うようにジン子の処女膜が再生していたのは言うまでもない。ジン子は死の淵を彷徨い、そして帰ってきた。その代償として処女……というか羞恥体質のようなものを失ったのであった。
ジン子をそんな風にしてしまったのは自分の責任だ。
冴渡は今、深く深呼吸して、誰も寄せ付けようとしていない重い扉を開いた。