第1話 猫又奇里子の深夜バイト

文字数 659文字

「ねぇ、奇里子。神保町に猫の本棚っていうシェア型書店があるの知ってる~?」
 ふと同じ大学に通う友人が学食の席でそんな話題を唐突に持ち出した。
「初耳~。思えば私、上京してから神保町にはまだ1度しか行ったことないや」
「え、もったいなーい! 奇里子が好きそうな街なのに~!」
 瞬間、体内の奥底で長らく眠り続けていたものが目覚めるような衝動があった。
 帰りの電車の中で私は、神保町の街についてとことん携帯で検索をした。
 猫の本棚という書店はすぐさまヒット。
 お店の公式Xは頻繁に更新されており、個性豊かな棚主さんの本棚が写真と
共に紹介されていた。
 夢中でツイートをさかのぼって読んでいると、アルバイト募集中の文字が目にとまった。
「これだ!」
 すぐさま私はアルバイト希望のメールを送信していた。
 数時間で返信があった。
 何やら店は不定期営業らしく、次の営業日は三日後の木曜日らしい。
 しかも面接うんぬんより1日お店体験をしてもらってから採用の有無を決めたいとのこと。
それなのに私は、直前でそのメールをメールボックスの中からなぜか見つけられなかった。誤って削除でもしてしまったのかと思ったが、ゴミ箱を探しても見当たらなかった。
 しかたなく初日の出勤時間を公式Xでもういちど確認。
 『明日の営業時間は深夜0時から早朝4時半までです。店主の都合によりいつもとは異なるのでご注意ください』
 思わず目を疑った。
 え、深夜!?
 けれどその時の私には、「不定期営業」という言葉に「深夜営業」が含まれている
気がしてそれ以上の疑問は抱かなかった。
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